2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代電力システムの革新的運用・マネージメントに関する研究
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24656186
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大久保 仁 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90213660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花井 正広 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (00587446)
小島 寛樹 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (00377772)
早川 直樹 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (20228555)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電力工学 / スマートグリッド / 潮流制御 / アセットマネジメント / メンテナンス / アルゴリズム / シミュレーション |
Research Abstract |
電力システムは、その時々の新しい技術を取り入れた電力機器の積層構成となっており、多くの構成機器の信頼性を維持しつつ運用する必要がある。現在も、分散電源や貯蔵技術、直流技術などの新しい技術が導入されようとしている。これからの次世代グリッドにおいて高品質で安定した電力を供給するためには、各年代で導入されたさまざまな仕様の各機器の状態診断から現在性能と将来性能を考慮しつつ電力システム全体の信頼性を高めるシステムの運用・制御・マネージメントすることが不可欠である。 そこで、本研究は、次世代電力システムにおいて上記の最適化手法を見つける際に必要な大量の計算の時間を短縮し、現実的な時間で最適解を見つける方法を構築することを目的としている。このために、(1)流通網と変電流通コスト計算手法の確立、(2)機器寿命を超える長期間にわたるメンテナンス戦略の構築方法、(3)メンテナンス履歴を考慮した潮流計算の対処方法、の3つの区分に分けて研究を進めている。 平成24年度では、このうち、(1)流通網と変電流通コスト計算手法の確立、(2)機器寿命を超える長期間にわたるメンテナンス戦略の構築方法をほぼ終了した。 この結果、全ての組み合わせにおいて各機器の故障率と影響を考慮して行っているモンテカルロシミュレーションの時間短縮および遺伝的アルゴリズムの手法を用いることで現実的な時間内に最小値または最小値に近い最も合理的な値を求める手法を構築した。また、機器の長期に渡るメンテナンスを考える際に、常に数年先までのコストを評価する方法を構築し、合理的なメンテナンス計画が構築できることを見出した。 以上の研究結果により、機器のメンテナンスであるアセットマネジメントと、電力の潮流制御であるスマートグリッドの両方の概念を統合して電力システムの運用が可能であることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)流通網と変電流通コスト計算手法の確立: 流通網と変電流通コストの計算手法の基本原理は、電力システムに発生する様々な事象をコストに換算し、その総和Zを目的関数として数理計画法を用いて最小化することにある。コスト総和Zは、Z=(正常運転時の送電損失)+(過負荷運転時の電力損失)+(過負荷運転時の機器の寿命減損) +(保守費用)+(停電時の損害)+(故障時の機器修理費用)+(故障時の二次被害)で与えられ、その最低値を求める際に、全ての組み合わせにおいて各機器の故障率と影響を考慮してモンテカルロシミュレーションを用いて求めている。 この計算量が非常に多くなるため大きな系統網では現実的な時間で計算できない可能性がある。そのため、モンテカルロシミュレーションの時間短縮および遺伝的アルゴリズムの手法を用いることで現実的な時間内に最小値または最小値に近い最も合理的な値を求める手法を構築した。 (2)機器寿命を超える長期間にわたるメンテナンス戦略の構築方法: 機器の長期に渡るメンテナンスを考える際に、評価期間を設ける必要がある。しかし、評価期間を短く設けると、評価期間内はコストを最小にし、評価期間後に大きなコストが発生するように計算をおこなうことになり、適切なメンテナンスにならない。一方、例えば100年のような長い評価期間とするとメンテナンスの間隔などより合理的な値が出てくるが、100年を考えたメンテナンスを行うことが良い経営判断となるかは分からない。この評価期間をどのように考えるかは、今後のメンテナンス戦略を考える上で極めて重要な部分である。 そこで、評価期間として常に10年後までを考慮する方法を構築し、上記評価期間の問題を回避できることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
(3)メンテナンス履歴を考慮した潮流計算の対処方法: 単年度で区切って機器のメンテナンスを行う解析は、比較的容易に最適更新時期を求めることができる。この理由は、各機器のメンテナンスの履歴を考慮しておらず、経年がそのまま故障率の増加として加算されていくためである。しかし、ある機器のリプレースが行われることを考えると、その機器の信頼性だけでなく、潮流を変化させることでシステム全体としての信頼性が変化するため、解析するケースが大幅に増加する。 このメンテナンスの履歴を考慮したシステム全体の解析をおこなおう場合、非常に多くのパターンの解析をおこなう必要があり研究項目(1)と同様に解析時間の大幅な短縮が必要になる。このため遺伝的アルゴリズム以外のもう1つの手法も構築し、2つの手法が同じ最適値を示すなら用いることで、現実的な解析時間内で、最小値または最小値に近い最も合理的な値を求める手法を構築・評価する。 さらに、流通網と変電流通コスト計算手法、メンテナンス履歴を考慮した潮流計算手法、並びに長期間にわたるメンテナンス戦略の構築方法について、得られた結果を取りまとめて、成果の発表をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析用パソコンの導入および得られた結果を取りまとめて、国内外の学会に成果の発表をおこなう。
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Research Products
(5 results)