2012 Fiscal Year Research-status Report
放電・材料相互作用統合モデリングによる革新的ナノコンポジット材料の創製
Project/Area Number |
24656193
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
永田 正義 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00192237)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 祐介 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00433326)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ナノコンポジット / 放射光分析 / 部分放電開始電圧 / インバータ駆動モータ / 耐サージ |
Research Abstract |
本研究は、実験および放電・材料階層統合計算機シミュレーションにより、ナノコンポジット材料と放電との相互作用の解明及び極限環境下での超耐インバータサージ絶縁特性をもつ次世代ナノコンポジットモータ巻線の創製を目的にしている。これにより今新エネルギーとして注目されている風力発電機や電気自動車等のインバータ駆動モータの高性能化が実現できる。本研究計画は大きく分けて「ナノコンポジット材料を用いた大気圧放電特性評価」、「革新的ナノコンポジット材料創製と精密構造分析」、「多階層シミュレーションによる高精度モデリング」の3つの研究項目から構成される。 本年度は、大気圧パルス放電実験において、インバータ駆動モータ巻線を模擬したエネメル線ツイストペアサンプル間にインバータサージ電圧を模擬したパルス高電圧を印加し、線空隙間に発生する部分放電現象を詳しく調べた。繰り返しインパルス電圧下の部分放電開始電圧とエナメル皮膜上の帯電の関係に注目した実験から、表面に蓄積する電荷が放電開始電圧の変動に大きく影響することが判明した。また、高湿度環境下では、空間電荷の蓄積が緩和されることを見出した。さらにまた、非熱平衡パルス部分放電発生時での電界加速電子と空気中の原子・分子との衝突過程と空隙間の絶対電界強度の関係を明らかにするため、放電発光スペクトルの分光測定の予備実験を行い、分光法による電界強度の評価法の有用性を確認することができた。 ナノ材料精密構造解析では、大型放射光施設Spring-8(兵庫県ビームライン)の小角散乱計測によるトライアル分析を実施した結果、20 nmの球形シリカのナノフイラーが良好な分散状態になっていることが示唆される結果が得られた。今後は、より詳細な定量分析を行い、ナノフイラーの充填量に対する分散状態について明らかにする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、1)ナノコンポジット材料を用いた大気圧放電特性評価、2)革新的ナノコンポジット材料創製と精密構造分析、3)多階層シミュレーションによる高精度モデリングの3つの研究項目で実施する計画である。1)の内容については、すでに有用な結果が出ており、その成果について2度の学会発表や研究会等で公表し、現在電気学会への論文を投稿している状況である。2)についてはSpring-8放射光を使っての構造分析であり、放射施設との日程調整や利用の打ち合わせ等に時間がかかり、現在ようやく着手できたところである。平成25年度にはSpring-8放射光利用分析を本格的に実施する。3)の計算機シミュレーションについては過去の実績を踏まえての実施計画の詳細をつめている段階であり、まだ着手できていないのが、遅れている理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
省エネで高効率制御が可能な次世代のインバータ駆動モータ用として開発されたナノコンポジットエナメル線の絶縁皮膜中のナノ粒子分散特性と高い絶縁性能との関係を明らかにすることで、インバータ駆動モータ巻線としての適応性を確立していくのが狙いである。その耐サージエナメル巻線のナノ粒子の分散状態を大型放射光Spring-8の小角散乱構造解析による分析を本格的に実施する。ナノ粒子充填率やナノ粒子サイズの変化に対するナノ粒子分散特性を調べ、課電寿命特性との関係を調査することによって、その優れた耐サージ特性の要因を明らかにする。また、ナノ粒子の分散状態は熱伝導特性や誘電率特性にも大きな影響を与えるためそれらとの関係についても探求を行う。計算機シミュレーションについては、静電流体近似モデルを平行平板電極系に適用し、ナノ誘電特性(比誘電率、2次電子放出係数)を境界条件としてモデル中に取り入れる。放電空間中の水分子の影響を原子・分子過程として考慮し、連続の式の粒子生成・消滅項に反映させる。これらのモデル計算結果と実験との比較を行っていく方策である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画として予定している放射光によるナノ粒子の構造分析として、平成24年度の残金を含め、予算の1部をSpring-8放射光施設の利用経費に充填する。大型計算機利用に必要な経費にも支出する。研究室内での実験では、部分放電空間における電界強度計測のための大気圧放電発光スペクトル観測用に光学部品を購入する。ナノコンポジット材料のインピーダンスアナライザ(比誘電率測定用)のレンタル代として支出する。また、国内外の学会における研究成果発表ならびに研究協力者との研究打ち合わせの旅費として使用する。
|
Research Products
(2 results)