2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 栄一 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (10333650)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
本研究課題の最初の年度として、ナノカーボンネットワークの電子物理を解明するために、カーボンナノチューブ(CNT)ネットワークのモデル化を行うことを目的に設定した。研究を推進し、以下の成果をあげた。(1) これまで種々CNT複合材料の導電率の温度依存性の測定結果から、CNTネットワークの電気伝導がCNT-CNT間接合の揺らぎ誘起トンネル現象(FIT)により決定されると推定している。この推定にもとづき、CNT-CNT間接合幅を縮小することにより低抵抗化を試みた。紫外線硬化樹脂を用いた簡単なプレス加工により単層CNT膜のシート抵抗が一桁低下すること、FITモデル計算からCNT-CNT間接合幅が減少していることを明らかにした。この結果は、FIT伝導という推定を支持するものであるとともに、ITOに替わる透明導電シートへの応用も視野にはいるものである。(2) 多層CNT Buckypaperの導電率の温度依存性を測定した結果、FIT伝導とグラファイト的な伝導を考慮することにより実験結果を説明できることを明らかにした。(3) これまでにテラヘルツスペクトロスコピーにより測定されてCNTのプラズマ周波数などの物性値を精査することにより、多層CNT分散紙のKバンドにおける誘電率の測定値はMaxwell-Garnettモデルにより説明できる。(4) カーボン繊維の前駆体にCNTを添加することにより、グラファイト化が促進され導電率が向上することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては、CNTネットワークのモデルとして、CNT-CNT間力を考慮して計算機上で仮想的にCNTネットワークを形成、このCNTネットワークについて揺らぎ誘起トンネル(FIT)モデルを用いてCNT-CNT接合抵抗を算出し、抵抗回路網からCNTネットワーク全体の導電率を、容量回路網からCNTネットワーク全体の誘電率を算出することを想定していた。しかしながら、このような大規模計算を行わなくても、多層CNT分散紙のKバンドにおける誘電率の測定値はMaxwell-Garnettモデルにより説明できることがわかった。さらに、文献で報告されている単層CNTネットワークにより形成された薄膜トランジスタ(TFT)の特性がバルク半導体(例えばシリコン)で形成されたMOSFETの特性と同様なのはなぜか、実効的な移動度はどのように決まるのかを考察した結果、比較的簡単なモデルにより説明できる見通しが得られた。これらの知見はCNTネットワークの物理を理解する上では当初計画のモンテカルロ解析より有効であり、かつ計算コストははるかに低く、極めて有意義なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度: 単層CNTネットワークにより形成された薄膜トランジスタのモデル化を具体化する。SiO2/Si基板上にCNT分散液をスピンコートしTFTを作製し、電流-電圧特性を測定することにより、モデルを検証する。さらに、CNTネットワークの新たな展開として、可逆的なネットワーク構造変化をもたらす手段の導入による極めて小型のパケットスイッチ、ニューラル処理的な情報処理、熱雑音などによる伝導パスの確率的変化を利用した情報処理など全く新しい情報処理形態を当初計画通り探索する。 平成26年度: CNTネットワークの有する特異な電磁物性と、表面プラズモンポラリトン(SPP)、フォトニック結晶、メタマテリアルなどの人工材料設計技術と融合して、新規材料設計法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に経費の節約によって生じた未使用額は、平成25年度請求額と合わせて下記計画に使用する。単層CNTネットワークにより形成された薄膜トランジスタを作製するために必要な材料と評価のために必要な電子部品類を購入する。大学院学生を短期支援員として雇用する。成果発表のための外国・国内旅費、英文添削および投稿料を計上する。 消耗品 半導体98% CNT分散液(432千円)、電子部品類(33千円)、金属材料(103千円) 旅費 国内成果発表(70千円×3回) 外国成果発表(250千円×1回) 謝金 研究補助(1000円/時×200時間) その他 論文掲載料(50千円) 英文添削(25千円)
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Research Products
(8 results)