2013 Fiscal Year Research-status Report
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24656195
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 栄一 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (10333650)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 薄膜トランジスタ / モデル |
Research Abstract |
本年度は、(1) 単層カーボンナノチューブ(CNT)ネットワークにより形成された薄膜トランジスタ(TFT)のモデル化を具体化するとともに、TFTを作製し、電流-電圧特性を測定することによりモデルを検証すること、(2) CNTネットワークの新たな展開として全く新しい情報処理形態を探索することを目的として研究を進めた。具体化したモデルの概要は以下の通りである。(a) CNTの状態密度とフェルミ分布関数によりキャリア密度を計算。(b) 三次元ポアソン方程式を数値計算し、ゲート電圧に対するCNT-CNT間の電位差の変化を表す近似式を求める。(c) 電荷中性条件によりCNTのポテンシャルを決定する。(d) (b)のCNT-CNT間の電位差を考慮したCNT-CNT間トンネル電流とCNT中の電流とが等しくなるようにフェルミ準位を決定する。モデル検証のため、SiO2/Si基板上に半導体率99%のCNT分散液をスピンコートしTFTを作製し、電流-電圧特性および低周波領域における電流雑音を測定した。その結果、電流-電圧特性の測定値と計算値は良く一致し、TFT特性向上のための指針が明確になった。また、低周波領域における電流雑音は1/f特性を示し、Hoogeの経験則に従っていることを明らかにするとともに、上記モデルを援用して雑音係数を求めた結果、Hoogeの経験値と良く一致した。以上のことから、提案したTFTモデルが妥当であり、TFT開発に有益であると結論付けた。目的(2)に関しては、ネットワークの性質がCNT-CNT接合で決まることがTFTモデルより明らかになったので、可逆的なネットワーク構造変化をもたらす手段について検討を進めた。上記目的以外の成果として、多層CNTを分散した抄紙の複素誘電率をVバンドにおいて測定し、これまでにテラヘルツスペクトロスコピーにより測定されてCNTのプラズマ周波数などの物性値とMaxwell-Garnettモデルを用いることにより実測値を説明できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案したモデルは、一部で極単純な数値計算を必要とするが、CNT TFTのドレイン電流実測値と良く一致するだけでなく、1/f雑音特性とも符合した。TFTの特性向上には、バンドギャップがそろったCNTを使用すること、CNTのバンド化を避けて孤立分散させること、金属CNTによる導電パスが形成されない範囲でゲート長を短縮してCNT-CNT接合数を減少させること、などの指針がこのモデルから得られ、極めて有意義なモデルを提案できた。CNTネットワークの新たな展開として全く新しい情報処理形態を探索する研究に関しては、基礎検討段階にある。当初目標に掲げた項目以外に、多層CNT分散抄紙のVバンドにおける複素誘電率を測定し、Maxwell-Garnettモデルにより説明できるという知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度: 可逆的なネットワーク構造変化をもたらす手段の導入による極めて小型のパケットスイッチ、ニューラル処理的な情報処理、熱雑音などによる伝導パスの確率的変化を利用した情報処理など全く新しい情報処理形態を引き続き探索する。また、CNTネットワークの有する特異な電磁物性を活用して電磁波吸収体などのEMC用新規材料設計法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
納品は年度内に完了しており、支払いが平成26年度にずれ込んだものである。 当初計画どおり、単層CNTネットワークによる全く新しい情報処理形態を探索するために必要な材料と評価のために必要な電子部品類を購入費、成果発表のための外国・国内旅費、英文添削および投稿料を計上する。(1) 消耗品 半導体98% CNT分散液(432千円)、電子部品類(3千円) (2) 旅費 国内成果発表(70千円×2回) 外国成果発表(250千円×1回) (3) その他 論文掲載料(50千円) 英文添削(25千円)
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Research Products
(6 results)