2012 Fiscal Year Research-status Report
半導体コンタクトを用いたグラフェンチャネルトランジスタの電流制御
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24656204
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
徳光 永輔 北陸先端科学技術大学院大学, グリーンデバイス研究センター, 教授 (10197882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グラフェン / トランジスタ / 単極性動作 / SiC / 半導体コンタクト |
Research Abstract |
グラフェンは高い移動度をもつことから次世代の電子デバイス応用に期待が高まっているが、バンドギャップが0であるため、これをトランジスタのチャネルに用いると両極性動作を示し、ドレイン電流のオン/オフ比が小さいという問題がある。本研究では、半導体コンタクトを用いることにより、グラフェンチャネルトランジスタのオン/オフ比を改善して、論理素子への応用を可能ことを目的としている。初年度は、当初の計画通り基礎的なことから研究を開始し、まず4H-SiCオフ基板上へのグラフェンの形成条件を吟味し、真空中および減圧アルゴン雰囲気下での高温アニールによる多層グラフェンの形成を透過型電子顕微鏡観察により確認した。さらにアニール条件によるグラフェンの形成状態の違いを調べた。次に、ソース・ドレインのドーピング濃度を変えてグラフェン/SiCコンタクトを作製してそのコンタクト特性を調べるとともに、トランジスタ特性への影響を調べた。ソース・ドレインのドーピング濃度によって、トランジスタの伝達特性が大きくことなるという結果が得られ、ソース・ドレインのドーピング濃度を1立方cmあたり18乗程度にすることで、単極性の電流―電圧特性が得られた。しかし現在のところオン/オフ比は1桁以下であった。これはSiCオフ基板上に高温アニールにより形成されたグラフェンの層数が厚いことが一因と考えられる。従って次に、オフ基板ではなくグラフェンの成長速度の遅い(0001)ジャスト面のSiC基板を用いてグラフェンを形成し、さらに水素アニールを行ったところ、2層グラフェンが形成されていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初の計画通り基礎的なことから研究を開始し、まず4H-SiCオフ基板上へのグラフェンの形成を透過型電子顕微鏡観察により確認し、ソース・ドレインのドーピング濃度を変えたグラフェンチャネルトランジスタの試作まで進めることができた。さらに、ソース・ドレインのドーピング濃度によってトランジスタの電気的特性が異なるという新たな知見が得られた。この結果を基にして、ソース・ドレインのドーピング濃度をやや抑えることによって、ドレイン電流のオン/オフ比は1桁以下ながら単極性動作を示すトランジスタの伝達特性が観測された。これは本研究で提案した原理が機能していることの根拠となるデータであり、初年度の大きな成果といえる。さらに、グラフェン・SiCコンタクトをモデル化して理論的な考察も進め、SiCオフ基板上に高温アニールにより形成されたグラフェンの層数が厚いことが小さなオンオフ比の原因と考えられることを示した。従って次に、オフ基板ではなくグラフェンの成長速度の遅い(0001)ジャスト面のSiC基板を用いてグラフェンを形成し、さらに水素アニールを行ったところ、2層グラフェンが形成されていることを確認した。 半導体コンタクトによって単極性動作を得ることは、当初考えていたよりも困難であったが、グラフェンの層数やキャリア濃度の低減によって、目的を達成することができた。またオンオフ比を改善するための道筋を初年度に得ることができた。従ってオンオフ比は小さいものの、単極性の電流ー電圧特性が得られたことは大きな成果であり、ほぼ予定通りの進捗である。さらに良質のグラフェン形成にも成功したので、来年度に期待の持てる成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、当初の計画通り基礎的なことからソース・ドレインのドーピング濃度を変えたグラフェンチャネルトランジスタの試作まで進め、ドーピング濃度をやや抑えることによって、オン/オフ比は1桁以下ながら単極性動作が観測された。さらに、オフ基板ではなくグラフェンの成長速度の遅い(0001)ジャスト面のSiC基板を用いてグラフェンを形成し、さらに水素アニールを併用することによって2層グラフェンが形成されていることを確認した。 今後は昨年度の知見に基づき、デバイス試作を進める。昨年度の研究で、ソース・ドレインのドーピング濃度およびグラフェンの層数が、トランジスタの電気的特性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなったので、(0001)ジャスト面のSiC基板上への高温アニールによるグラフェンの形成条件、グラフェン形成後の水素アニール条件を最適化することによって、グラフェンの精密な層数制御を実現する。このようにして精密に層数制御されたグラフェンを用いて、n型SiCをソース・ドレインコンタクトにもつグラフェンチャネルトランジスタを試作し、その特性を評価する。最終的にはトランジスタの単極性動作と、大きなオンオフ比(3桁以上)を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はグラフェンの形成条件の最適化とともに、デバイス試作とその特性評価を中心に研究を進める。グラフェンの作製装置、デバイスの作製環境、評価装置等は現有設備を利用するので、次年度の研究経費は主としてSiC基板、ゲート絶縁膜形成のための原料、電極原料、熱電対や試料ホルダーなどの装置メンテナンス用品等の消耗品、透過型電子顕微鏡やX線光電子分光等の分析を外注により実施する費用、さらに、成果発表のための学会参加費とその旅費に研究経費を使用する。
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Research Products
(2 results)