2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 喜峰 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60380573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 勇治 九州大学, 学内共同利用施設等, その他 (80613281)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 太陽電池 / ペースト / Si / ミリング / ナノ結晶粒子 / pn接合 |
Research Abstract |
Siなどの太陽電池の製造コストを劇的に下げるためには、高価な真空装置などを用いずに、従来のCdS/CdTe太陽電池などに代表されるように原料のペーストを塗布して太陽電池を製造する方法がある。本研究では安価なSiナノ結晶粒子ペーストを製作、塗布して太陽電池を製造するための基礎プロセスの検討を行った。高純度Si原料をミリングなどによりナノサイズ化し、ペースト状にした後、安価な金属基板などにp型、n型Siペーストをそれぞれ塗布することにより、太陽電池に必要なpn接合を製作することを試みる。 [遊星型ビーズミル法・超遠心分離法を用いたSiナノ結晶粒子の調製] 遊星型ビーズミル法を用いた湿式粉砕によるSiナノ結晶粒子の調製について検討した。遊星型ビーズミル法とは粉砕物をビーズ状の小径のミル材を用いる湿式粉砕に、粉砕エネルギーの大きな遊星型ミルを用いる方法である。本研究では、この手法をSiの粉砕に適用し、ナノ結晶粒子の調製を試みた。 高純度Si原料をミリングなどによりナノサイズに粉砕しペースト状にするには、ミリング中のSiの酸化を防ぐ必要がある。そのため様々な還元性溶媒中でのミリングを試みたり、さらに、界面活性剤などを用いることで、Siナノ結晶粒子が水分等から保護される形になり、酸化されにくくなる原理から、酸化をある程度防止できた。 ナノSiのX線回折データより、Siのミリング後、アモルファス状態の部分も存在し、またナノSi結晶にも多数の欠陥が入っていることが分かった。Siナノ結晶粒子のペーストをSi基板に塗布後、アニーリングにより、結晶性や欠陥の回復を試みた。この際、酸化されないように水素などを用いた還元雰囲気中で熱処理を行なった。最後に電気伝導性やpnダイオード特性の評価を行い、その結果、整流性の良いダイオードが得られ、わずかながら光起電力も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高純度Si原料を遊星型ビーズミル法によりナノサイズ化しペースト状にした後、p型またはn型Si基板上にn型またはp型Siペーストをそれぞれ塗布し、水素雰囲気中で1200℃アニール後、pn接合を製作することに成功した。±2Vにおいて整流比を約500程度得ることができた。また、光起電力もわずかではあるが、発生したことが確認された。 Siの酸化防止のために還元性溶媒と界面活性剤中でのミリングを試みた、溶媒にエタノール、またはアセトニトリルを用い、それぞれに保護基として、ポリビニルピロリドン(PVP)、アセチルアセトン(acac)を混ぜてミリングを行った。 さらに、アニーリングにより、結晶性や欠陥を回復させることを試みた。Siナノ結晶粒子のペーストをSi基板に塗布後、酸化を最小限に抑えるために水素中でアニーリングした。X線回折の結果、アモルファス成分が減少し結晶性が回復し、また、電気伝導特性が改善されたことが確認できた。 各溶媒と保護基により電気特性が異なり、アセトニトリル+acacの組み合わせは他の溶液に比べ、Siの酸化が抑えられ(FTIR、ラマン等で確認)、最も電流が流れやすく、エタノール+PVPの組合わせでは一番電流が流れにくかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は安価な金属基板などにナノサイズ化したp型、n型Siペーストをそれぞれ塗布することにより、太陽電池に必要なpn接合を製作することを試みる。 (ア) Siの酸化を防ぐため、真空用グローブボックス等を用いて不活性ガス中でのミリングや各プロセスを行う。また、これまで試みた以外の還元性溶媒と界面活性剤や水素イオンを溶かし込んだ水素水なども試みる。 (イ) 金属基板(純鉄やコーティングした金属板など)にSiナノ結晶粒子のペーストを塗布し、超音波処理とアニールなどを施した後の基板との密着性や電気特性を調べる。密着性においてはスコッチテープ法ではがれないこと、電気特性ついてはオーミック特性(接触抵抗1Ωcm2以下)にするための最適プロセス法を見出す。 (ウ) n-Siナノ結晶粒子ペーストとp-Siナノ結晶粒子ペーストをそれぞれ金属基板に塗布し、水素などを用いたアニール還元処理を施した後、整流特性・太陽電池特性などを計測し、結晶性回復に必要な温度や還元処理法、太陽電池製造方法の最適化条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・昨年度の予算を繰り越して、遊星型ビーズミル装置を購入予定である。(ミリング装置+ジルコニア容器(1個)=約150万円) ・中古の真空用グローブボックスを借りる予定であるが、現在、中が有害物質で非常に汚れているため、洗浄と気密性を保つために、オーバーホールが必要である。それに予算を充てる予定である。
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