2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノミスト堆積法の開発と無機有機複合型ディスポーザブル光機能性シートの研究
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24656216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
菊池 昭彦 上智大学, 理工学部, 准教授 (90266073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体成膜 / 静電塗布 / ナノミスト / 発光ダイオード / 太陽電池 / 低分子 / 高分子 |
Research Abstract |
本研究は、有機半導体や無機半導体、金属ナノ粒子など様々な材料に適用可能な成膜法であるナノミスト堆積(Nano Mist Deposition: NMD)法の開発および、新しいカテゴリの光デバイスであるディスポーザブル光機能(発光/光発電)シートの試作検証を行い、社会への学術・産業的貢献を目指すものである。本年度は、新規NMD装置の開発・作製およびNMD法による有機薄膜の成膜特性の評価、および発光デバイスの試作を行った。 ①電極間距離制御、窒素雰囲気制御、基板温度制御などの機能を有する2連式のNMD装置を新規に製作し、各機能において十分な制御性を有することを確認した。 ②三次元電磁界解析を行い、従来の二電極型静電塗布法とNMD法の電界分布の違い、成膜面積の印加電圧依存性の解析、印加電圧とノズル先端電界強度の解析と実験の比較、安定な成膜条件の把握を行い、NMD法の基礎特性を把握した。 ③ITOやAZOをコートしたガラス基板上に高分子(F8BT)と低分子(NPB、Alq3、TPD)を製膜し、溶媒の種類や溶質濃度、添加材、供給速度、基板温度などの依存性を調べた。成膜後のモホロジーを評価し、成膜条件により、低分子と高分子のどちらにおいても表面粗さ(RMS)数nmの平坦に優れた成膜が可能であることを示した。 ④フレキシブルPET基板上へのF8BTの成膜を試み、AZO膜を直接蒸着したPET基板上ではF8BTの成膜によって多数のクラックが形成されるが、PET/AZO界面へのアクリル系コート剤の挿入がクラック低減に有効であることを見出した。ディスポーザブル発光デバイス作製の初期実験として、PET基板上にアクリル系コート剤を介してAZO/Ag/AZO透明導電層、F8BT(スピンコート法)、MoO3/Au電極の順に成膜したフレキシブルハイブリッドLEDを作製し、屈曲状態において電流注入発光を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最重要課題であった、ナノミスト堆積(NMD)装置の開発が順調に進展し所望の機能性を有する装置が初年度の研究開始初期段階で完成した。 この装置を用いて、ガラス基板上への有機薄膜の成膜条件の把握を行ったところ、成膜状態が溶液の供給速度や印加電圧、ノズル-基板間距離、基板の導電性やパターンの有無、基板温度など、非常に多くのパラメータに依存することが判明した。従来方式の二電極型静電塗布法では、相互のパラメータが関与し合って最適値が得られない可能性があるが、新規に開発したNMD装置は、中間電極の採用によって多くのパラメータが独立に制御可能であり、高い優位性を有することが確認され、平坦性の良好な有機分子の成膜が可能であることを実証するに至った。特に、2年目以降を予定していた基板加熱効果の検証を先行して進め、成膜状態に著しい改善効果があることを見出した。 無機酸化物や半導体ナノ粒子、金属ナノ粒子などの成膜を予定していたが、これらの成膜は比較的容易であると推察されたので、NMD法の基礎特性の理解と把握を優先すべきであると判断し、電磁界解析と有機薄膜の成膜実験を優先して実施した。 PET基板(フレキシブル基板)へのNMD法による有機分子成膜および、ディスポーザブル発光デバイスの試作も順調に進んだ。 NMD法による有機分子成膜特性の解析と評価、および発光素子の試作については、国内および国際学会にて成果発表を行った。 以上の実績をもって、計画は順調に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた情報をもとに、ナノミスト堆積装置の改良を行う。具体的には、効率的に実験を実施するために作業性の向上、再現性を高めるために基板温度制御性の向上、酸素や水分で劣化する材料にも対応するために雰囲気制御性の向上などを行う。さらに、多層構造の成膜用に複数のシリンジを装荷したマルチソース型NMD装置の製作にも着手する。 NMD法による成膜特性を評価するために、光学特性や発光特性を評価するとともに、従来方法では困難であった多層構造の成膜を試みてNMD法の特徴を明らかにする。また、無機材料や金属微粒子の成膜特性の評価を実施する。 紙系基板(CNT複合シート等)への、NMD法による有機薄膜の成膜特性の評価に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付予定額(1,100,000円)と繰越金(502,207円)の合計1,602,207円が次年度研究費予定額である。 設備備品として、申請時点では「ソーラシミュレータおよび標準太陽電池」を購入予定であったが、予算の制限により断念し、性能は不十分ながら代替装置を用いる。 消耗品として、NMD装置の改良および新規作製のための電気・機械部品類、成膜実験用に、基板(石英基板、ITOコートガラス、石英ガラス、n-GaNテンプレート、PETシート、ITOコートPETシート、CNT複合シートなど)、成膜原料(各種有機半導体原料、各種無機半導体原料、金属微粒子など)、各種有機溶媒、シリンジ等実験機材、雰囲気制御用窒素ガス等を購入する。前年度実績と次年度研究計画に基づいて約800,000円を予定。 旅費として、国内学会および国際会議への参加を目的として約600,000円を予定。 論文誌への投稿費用、資料印刷などの費用として、約200,000円を予定。
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