2012 Fiscal Year Research-status Report
磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく高速論理演算・記憶方式の開発研究
Project/Area Number |
24656221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 康治 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60125622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 茂雄 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (10282013)
小野美 武 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70312676)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 単一磁束量子 |
Research Abstract |
本提案方式の利点として1)パルス論理でないためクロックキングが容易。2)入出力はステップ状の電流信号であるため、確立している半導体システムの方式を移植できる。という点をシミュレーションにより検証するため、初めに磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅による信号伝送方法の回路構成を検討した。多くの回路についての試験的数値解析の結果、本提案課題の基本的構想をrf-SQUIDラダー回路として確立した。本回路の基本構成ユニットはrf-SQUIDでユニット同士はインダクタンスを共有して結合されラダー回路を構成する。ユニットのジョセフソン接合にはバイアス電流が供給され、これに加えて入力信号により単一磁束量子SFQがrf-SQUID内に取り込まれる。これがトリガーとなって後段のrf-SQUIDに順次SFQが取り込まれて信号として伝送される。一般的SFQ伝送線路では信号の伝送方向と磁束の方向は直交しているが、本課題の線路においては信号の伝送方向と磁束の方向が平行である点が基本的に異なる。これを信号の伝送方向に直交する方向から見ると各rf-SQUIDには磁束量子と反磁束量子の対が生まれることになる。これをリセットする方式としてバイアス電流切断とrf-SQUIDのヒステリシスによるラッチング方式はマージンが大きくとれるが、入力信号の消去とヒステリシスによるノンラッチング方式は可能であるがマージンが狭くこの点の改良が課題である。このため数値解析と合わせて線形近似による動作マージン解析を続けている。合わせてrf-SQUIDヒステリシス動作の実験的解析のため集積化rf-SQUIDをファンドリにより試作し測定を行った。並行して比較のために従来方式ではあるが改良された並列乗算器のCAD設計も進行中である。今後SFQ回路との比較による本提案方式の利点を順次検証し、試作集積回路で実証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく信号伝送方法についての基本構想の確立を主要課題として捉えており、この点が満足された。この場合のパラメータマージンはノンラッチング方式では狭いことは予想の範囲であり、この点を確認するとともその拡大を検討中である。線形近似解析が順調に進むことにより改善に繋がると考えている。試作についてもラダー回路は今後であるが基本要素については測定を行い、基本動作とパラメータ依存性を観測済みである。磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく基本論理演算機能のシミュレーションはNOT動作などの基本については検討を進めシミュレーションも始めている。今後最適回路構成を確立するとともに動作マージンと動作速度を評価し、集積回路試作により検証する予定である。比較のために単一磁束量子方式で開発した並列乗算器の改良設計も進めており、乗算、加算、減算の各ブロックを磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく方式に置き換えてその性能をシミュレーションと集積回路試作により評価する方向の準備も進行中である。磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく記憶回路についての構成法の検討と、上記回路との結合によるシステム化はこれからの課題であるが、磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく高速論理演算・記憶方式の基本システム構成の低消費電力・超高速動作は研究課題進展とともに明らかになると考えている。しかし、本課題開始前に予想した、信号伝送は導波路形式のマイクロストリップラインが使用できる、という点については基本構想の確立により現在否定的予測に至っており今後詳細に検討する。また量子対の生成を基本とするため磁束が微小領域に局在し、漏えいによる影響がない、という点については今後の実験的検証を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
予想の範囲であるがノンラッチング方式のパラメータマージンは狭いため、その拡大を行う。そのため進行中の線形近似解析を進め、マージン拡大のためのパラメータ依存性の概要を把握する。それに基づいて数値解析、JSIMにより動作を検証する。合わせてラダー回路のCAD設計を進めファンドリサービスにより試作を行う。これを順次測定し、基本動作とパラメータ依存性を集積回路により観測する。その後磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく基本論理演算機能のシミュレーションをAND、OR、NOT動作などの基本演算機能について順次検討する。さらに最適回路構成を確立するとともに動作マージンと動作速度を評価し、集積回路試作により検証する。比較のために単一磁束量子方式で開発した並列乗算器の試作も進め、乗算、加算、減算の各ブロックを磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく方式に置き換えてその性能をシミュレーションと集積回路試作により評価する。磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく記憶回路についての構成法の検討と、上記回路との結合によるシステム化はその後の課題であるが、磁束量子・反磁束量子対の生成・消滅に基づく高速論理演算・記憶方式の基本システム構成の低消費電力・超高速動作は研究課題進展とともに明らかになると考えられる。量子対の生成を基本とするため磁束が微小領域に局在し、漏えいによる影響がない、という点についても実験的検証を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請課題は超伝導集積回路の設計と試作並びにその測定が中心であり、具体性実証のためのファンドリーサービスを利用したチップ製作を含めており備品は計上していない。2年度は初年度と同様であるが、集積回路製作や測定データ解析と成果発表に重点を移し、データ解析用ソフトウェア関連に200,000円とファンドリサービスを利用した集積回路製作に600,000円、ならびに計算機関連トナーその他に200,000円と、研究成果発表並びに他研究者との研究に関する議論のための旅費として、国際会議用300,000円、九州大学、機械振興会館、名古屋大学などでの研究会を対象に200,000円、データ解析補助のための謝金に200,000円、論文投稿料に100,000円の直接経費合計1,800,000円を計上した。本課題は数値解析ならびにファンドリを利用した集積回路製作による具体性の確認を組み合わせた研究規模、研究体制である。
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