2012 Fiscal Year Research-status Report
CNT可飽和吸収体と光変調器を併用したハイブリッドモード同期レーザの開発
Project/Area Number |
24656222
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 真人 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10333890)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光デバイス・光回路 / 光源技術 / 高性能レーザ |
Research Abstract |
本年度は、これまでに実績のあるCNT材料を用いた可飽和吸収体の耐久性の向上を図った。まず、導電性ポリマー(P3HT)とCNTの複合体CNT/P3THを分散させた溶媒を光ファイバコネクタの端面に塗布し、自然乾燥させるといった簡便なプロセスにより、小型の可飽和吸収体を作製した。つぎに、ファイバ端面に塗布したCNT膜を、耐熱性に優れたシロキサンで覆うことにより、CNTが空気と直接触れないような工夫を施した。これにより、従来30 mW以下の入力光電力で損傷していたCNT可飽和吸収体の損傷閾値を50 mW以上に拡大することに成功した。そして本可飽和吸収体を用いた受動モード同期ファイバレーザを作製し、出力電力31 mW、パルス幅280 fs、繰り返し周波数22 MHzの高出力フェムト秒パルスを得ることに成功した。 また本年度は、可飽和吸収体を用いたハイブリッドモード同期ファイバレーザについて、そのパルス特性の数値解析を先行して行った。その結果、共振器内の平均分散値を制御することで、平均電力が100 mW以下の条件で繰り返し周波数が10 GHzのフェムト秒パルスを出力できることを明らかにした。またこの数値解析より、10 GHzの高繰り返しパルスに適した可飽和吸収体を実現するためには、本年度作製した可飽和吸収体の更なる損傷閾値の向上が必要であることを明らかにした。一方、ハイブリッドモード同期ファイバレーザのパルス発生実験に関しては、光位相変調器をモードロッカとした能動モード同期レーザ共振器を新たに構築し、本レーザより2 ps以下のピコ秒パルスが出力できることを確認した。以上のようにハイブリッドモード同期レーザの実験準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の1つである耐損傷性に優れた可飽和吸収体の作製については、CNTをシロキサンでカバーし、酸素に直接触れないよう工夫を施すことにより、これまでの耐損傷性を倍増することに成功している。酸化防止策による耐損傷性の拡大効果を検証する成果を得ている。 もう1つの課題である、ハイブリッドモード同期レーザによるフェムト秒パルス発生については、先行して数値解析を行い、来年度の目標とする100 mWの耐損傷性を有する可飽和吸収体を使用することにより、所望のパルス特性が得られることを明らかにしている。また、基盤となる能動モード同期ファイバレーザを新たに構築し、ピコ秒パルスが得られることを確認している。このようにハイブリッドモード同期レーザの実験準備を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
可飽和吸収体の作製中にCNTの周囲に酸素が混入しないよう、その作製プロセスを見直し、また、作製後においても酸素が侵入しないよう素子構造を改良する。これらにより10 GHzの高繰り返しパルスに適した高い損傷閾値(約100 mW)を有する可飽和吸収体を実現する。 また、ハイブリッドモード同期レーザの高出力化および共振器内の3次以上の高次分散に対するマネジメントを行い、フェムト秒パルスの発生に適したレーザ共振器を改良試作する。本レーザと上述した可飽和吸収体を組み合わせ、最終目標である10 GHz以上の高繰り返しフェムト秒パルスレーザを実現する。 さらに、CNT以外の材料としてグラフェンを用いた可飽和吸収体の作製ならびに評価を行ない、CNTと同様にハイブリッドモード同期レーザへの応用の可能性について検証する。またこれらカーボン材料の耐損傷性の向上が困難であった場合に備え、半導体可飽和吸収体を適用したハイブリッドモード同期レーザの実験も同時に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(2450円)の使途として、モード同期レーザの出力特性を評価する際に使用する、電気ケーブル接続用コネクタの購入費にあてる予定である。
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