2012 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンを材料とした新規超低消費電力デバイス制御機構の創出
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24656234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
相馬 聡文 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 多国籍 |
Research Abstract |
研究計画で言及している項目のうち、1.歪みを印加したグラフェンの電気伝導特性については、新たなバンドギャップ誘起の方法として、グラフェンに面内歪みを印加する方法に注目した。グラフェンに対してzigzag 方向への引っ張り歪みやせん断歪みを印加した場合、現実的な歪みの範囲内でフェルミ面においてバンドギャップを誘起出来る事が既に指摘されていたが、本研究ではこのような歪み印加のもとでの電気伝導特性を非平衡グリーン関数法を用いて計算し、歪み率の増加とともに電流が増加する領域があり、その後急激に電流が減少する振る舞いが得られる事を見出した。 2.光照射下のグラフェンの電気伝導の研究については、円偏光をもった光を照射する事でグラフェンに擬似的なバンドギャップを誘起する事が可能である事を簡便な方法によってシミュレーション可能である事を示すとともに、任意の偏光の光をグラフェンに照射した時の動的バンド構造を調べ,それが偏光方向,光の強度などによってどのように異なるかを明らかにした。 3.グラフェンナノリボンにおける純粋スピン流生成に関する研究については、ジグザグ端グラフェンナノリボン(ZGNR)におけるエッジスピン偏極と量子ポンプ効果を利用する事でスピン偏極電流を得るという着想のもと、それを実現する新規素子の提案と理論計算を行った。具体的には、一般に位相の異なる二種類の振動電場を印加した場合に引き起こされる量子ポンプ効果に着目して、ZGNRに対して時間変化する電場を与えた場合の量子ポンプ効果に起因するスピン依存電気伝導特性を、スピン密度汎関数タイトバインディング法と非平衡グリーン関数法を用いる事により理論的に調べた。その結果、ZGNRの対向する端に位相の正負が逆の振動ゲート電圧を与える事により、電荷の流れを伴わないスピンの流れ(純粋スピン流)の生成が可能である事を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画のうち、1.歪み印加グラフェンにおけるバンド構造の解明については概ね計画通りに進んでいるが、分子動力学法を用いた歪み印加下の安定構造の解明については更に検討を続ける必要がある。その一方で、局所的な歪み印加下において重要となる擬似磁場効果の解明やそれを用いた電気伝導制御について、当初の想定以上にそのデバイス応用上の可能性が認識され、これについての予備研究を行った事で、今後の研究につながる布石とする事が出来た。 2.グラフェンにおける光照射の効果については、種々の偏光を持った光をグラフェンに照射した際の動的バンド構造を明らかにする事が出来、計画通りに研究が進んでいる。 3.グラフェンを用いた新規スピン流生成素子の創出に向けては、時間依存ゲート電圧印加の手法によりこれが可能となるとの着想を得、詳細な検討を続けているところであり、これについても概ね計画通り研究を進める事が出来たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の研究を概ね計画通りに進める事ができた事から、今後の研究についても、基本的には当初の計画通りに進めるが、歪みを利用した新しい電気伝導制御機構の探索については、当初の計画で具体的に記述していなかった「局所歪みによる擬似磁場効果を利用したデバイス制御の可能性」について、より注力して研究を行う。これは、当初の計画で言及していた「バルク歪みによるバンド構造変化」と物理的に異なる物理的機構ではあるが、現実的には両者の効果は複合された形で現れるため、これらを総合的に検討する必要がある。この研究の着眼点からは産業応用の意味で重要な成果が得られる可能性が特に高いため、特に注力して研究を行う。グラフェンへの光照射については、大まかな結果は得られているものの、その物理的解釈をめぐってはより詳細な検討が必要であり、Floquet散乱理論を用いた解析に注力する。グラフェンを用いた新規スピン流生成素子の創出に向けては、時間とともに振動するゲート電圧の振動数が高い場合にも適用出来るような理論、数値計算アルゴリズム開発のフェーズに入る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内、国外での研究成果発表を目的とした旅費として使用する他、ポスター講演のためのポスター印刷、数値シミュレーションを目的とするワークステーションの購入等に使用する。
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Research Products
(15 results)