2014 Fiscal Year Research-status Report
マグノン系ボーズ凝縮を用いたマイクロ波デバイスの開発
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24656236
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
味野 道信 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30222326)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン波 / マイクロ波放射 / ボーズ凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性体であるイットリウム・鉄・ガーネット(YIG)を大電力マイクロ波でパラメトリック励起した系で,マグノン系の非線形緩和とバンドの底への凝縮過程のメカニズムについて,異なる形状の試料により研究を進めた。その結果、以下のことを実験的に確認した。 薄膜と球状の試料では,形状によって放射マイクロ波の周波数分布が異なる。これは,放射に関与する長波長の静磁モードに違いがあるためと考えられる。 薄膜,球状試料ともにマグノンの最低振動数モードの2倍の周波数を持つマイクロ波放射が強く観測される。このことから,マイクロ波で直接励起されるモードや,緩和過程で散乱対象となる静磁モードの分布状態が異なっていても,最終的には最低振動数モードのマグノン数が増加する。これは,パラメトリック励起の手法として今まで実施していた平行励起方法に加えて,スール一次スピン波不安定化を用いた垂直励起の実験でも確認できた。 マイクロ波により直接パラメトリック励起されたマグノンモードの放射強度は励起電力の増加で単調に増大するが,最低振動数マグノンモードの2倍の周波数を持つ放射には閾値が存在する。これは,最低周波数モードへの緩和が非線形な過程であることを意味する。また,パルス励起後の放射強度時系列データから,マイクロ波により直接励起されているモードからのマイクロ波放射の緩和時間には励起電力変化が見られないにのに対して,最低振動数モードからの放射は,励起電力が増加すると緩和時間が長くなる傾向にあることが観測された。この緩和時間の変化と,ボーズ凝縮との関連を今後は明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マグノン系において,最低振動数モードへの緩和機構についは幾つかの情報が得られているが,デバイスに必要な放射強度に関する研究が計画に比べて遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
試料の形状変化を詳しく調べるために、膜厚の異なる試料についても実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
計画では平成26年度に,YIG以外の化合物についても研究を進める予定であり,試料など関連した物品の購入を計画していた。しかし,試料の形状効果が重要であることが明らかになったため新しい試料の購入を中止し,未使用額が生じたため次年度利用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試料の形状を加工するための治具等の購入,および研究成果の発表に関わる費用として使用予定である。
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