2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
中垣 淳 北見工業大学, 工学部, 講師 (90250539)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雑音抑圧 / 音声強調 / 線スペクトル対 / サブバンド信号 |
Research Abstract |
本研究では、高騒音環境下においても円滑な音声対話を可能にすることを目的とし、周波数サブバンド間の相互推定を用いた雑音抑圧法の開発・評価を行っている。平成24年度は、周波数サブバンド間の相互推定に用いる特徴パラメータとして線形予測分析に基づく特徴パラメータの一つである線スペクトル対(LSP)についての検討を行った。相互推定に用いる特徴パラメータは、それを利用した雑音抑圧が実現可能である必要である。そこで、LSPに基づいた変換行列を用いた雑音抑圧法を開発し、その雑音抑圧性能を評価した。この変換行列は線形予測係数をLSPで偏微分することにより得られるヤコビ行列で、観測信号の相関行列を対角化するという雑音抑圧のための望ましい性質を有している。この変換行列を利用した雑音抑圧法を白色雑音を付加した音声信号の雑音抑圧に適用した。その結果、ephraim等によって提案された信号部分空間法とほぼ同程度の雑音抑圧性能を得ることができた。実験では、低SNRになる高周波数域においても、雑音が付加された音声信号から推定したLSPを用いて雑音抑圧を行っている。そのため、高SNRである低域サブバンド信号から、より高精度なLSPを相互推定することができれば、より高性能な雑音抑圧手法が実現できるものと期待できる。また、雑音抑圧を想定したLSP分析の分析次数についての検討も行った。その結果、白色雑音を付加した音声信号に対しては、サンプリング周波数が8kHzの場合で40次程度の分析次数が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の研究計画では、前半に雑音抑圧のためのLSP分析について検討し、後半にサブバンド間で特徴パラメータを相互推定するための写像方式を開発する予定であった。しかし、考案したサブバンド間写像方式では、まだ写像のための適切な表現行列が得られていない。この原因は、LSPの適切な分析次数が予想よりも高く、学習する表現行列のサイズが大きいため、学習がうまく収束しなかったためと思われる。この問題の解決のために、LSPの分析次数を下げるための方法を現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度前半は、現時点でうまくいっていないサブバンド間写像方式について再検討する。サブバンド間写像をうまく学習するためには、特徴パラメータであるLSP分析の分析次数を下げる必要がある。そこで、音声信号を周波数領域でスペクトル包絡とスペクトル微細構造に分解し、LSPはスペクトル包絡の記述にのみ用いることにする。これにより分析次数を10から15程度まで下げることができる。スペクトル微細構造について別の特徴パラメータを用いて表す必要があるので、その検討もあわせて行う。 平成25年度後半は、当初予定のLSPのサブバンド間写像を組み込んだ雑音抑圧システムの基本バージョンを開発する。開発する雑音抑圧システムの処理の流れは次のとおりである。入力音声は低域サブバンドと高域サブバンドに分割され、低域信号は従来法により雑音抑圧を行う。更に雑音抑圧された低域信号をLSP分析し、スペクトル包絡をLSPで記述する。前半に開発した写像変換方式により高域LSPを推定する。推定された高域LSPにより設計されたフィルタに、スペクトル微細構造から合成した音源信号を通すことで高域サブバンド信号を生成する。低域サブバンドと高域サブバンドで雑音抑圧された音声成分は再合成される。システムの評価は、ITU-T P.862勧告で定義されているPESQによる客観的評価法で行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の本研究の進捗がやや遅れたため、当初予定の研究成果発表のための国内旅費および実験補助のための人件費を使用する機会がなかった。次年度は、繰越金を含めて研究費を、ソフトウェア開発のための統合開発環境(IDE)の購入の、研究成果発表(電子情報通信学会信号処理シンポジウム(山口)、電子情報通信学会総合大会(新潟)を予定)のための国内旅費、プログラム開発・実験補助者のための人件費に使用する。
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