2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656239
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
中垣 淳 北見工業大学, 工学部, 講師 (90250539)
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Keywords | 雑音抑圧 / 音声強調 / 線スペクトル対 / サブバンド信号 |
Research Abstract |
本研究では、高騒音環境下での円滑な音声対話の維持を目的とし、周波数サブバンド間の推定を用いた雑音抑圧法の開発を行っている。平成24年度の研究では、線スペクトル対(LSP)に基づいて雑音抑圧フィルタを設計した。この雑音抑圧法は,白色雑音に対して信号部分空間法と同程度の雑音抑圧性能をもつ。しかし、フィルタの設計には40次程度の高い次数のLSPが必要であった。そのためサブバンド間の写像を行う適切な変換行列を学習できなかった。これを踏まえて平成25年度は、LSPを用いたサブバンド間の写像方式について再検討した。LSPの次数を下げるために音声信号とスペクトル包絡とスペクトル微細構造に分離し、スペクトル包絡に対してLSP分析を行う方式に変更した。写像変換の学習では、クリーンな音声を用意し、音声信号の帯域を二分割し、それぞれにスペクトル包絡を近似できる程度の低い次数でLSP分析を行う。得られた低域LSPと高域LSPの組を用いて写像を表す変換行列を学習する。雑音抑圧では、雑音の混入した入力音声を学習時と同様に二分割し、SNRの高い低域サブバンド信号は従来法によって雑音抑圧をしてからLSPを推定し、更に低域LSPと変換行列を用いて高域LSPを写像する。写像された高域LSPに基づいて雑音抑圧フィルタを設計して高域サブバンド信号の雑音を抑圧する。低域および高域サブバンド信号をは再合成される。実音声+白色雑音による評価実験では、開発手法で雑音の抑圧ができることを確認した。しかし、期待していた程の雑音抑圧性能は得られなかった。この原因としては、現方式ではスペクトル包絡にのみ写像変換を適用し、スペクトル微細構造は未処理なこと、低域サブバンドから高域サブバンドへの写像には学習した過去の組合せのみを使用し、現在の情報を利用していないことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画では、前半に写像変換方式の再検討、後半に写像変換を組み込んだ雑音抑圧方式の基本バージョンを開発する予定であった。しかし、基本バージョンの雑音抑圧の効果は確認できたものの、期待していた程の性能が得られなかった。この原因としては、基本バージョンではスペクトルの微細構造に対して処理をしていないこと、過去のLSPの組合せのみを利用していることが挙げられる。そのため、スペクトルの微細構造に対する処理および現フレームから推定されたLSPの利用を現在検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度前半は、サブバンド間写像方式を改良し雑音抑圧性能の向上をめざす。まず、スペクトル微細構造に対する雑音抑圧処理を導入する。平成25年度に開発した初期バージョンはスペクトルの微細構造に対する処理をしていないため、設計された雑音抑圧フィルタは調波間に存在する雑音を抑圧できなかった。スペクトル微細構造に対する雑音抑圧処理では、調波構造の周期性を利用して低域サブバンドの微細構造を外挿することで高域サブバンドの微細構造を生成する。微細構造の外挿で用いる特徴パラメータの種類、外挿法が検討課題となる。次に、高域サブバンドを生成するために低域サブバンドからの写像に加えて、現フレームの推定値を利用することを検討する。サブバンド間の写像は過去のLSPの組合せの学習によるので、まったく新しい組合せには対応できない。そこで現フレームのLSPの推定値も考慮することで新しいLSPの組合せに対応することで雑音抑圧性能を向上をさせる。 平成26年度後半は、雑音抑圧システムの最終的な性能評価を行う。実験ではコンピュータで合成した白色雑音や有色雑音に加えて、実環境下で記録された騒音データを用いる。性能評価にはITU-T P.862勧告で定義されているPESQによる客観評価に加えて、被験者の聴取による主観的評価も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の進捗がやや遅れているため、当初予定の研究成果発表のための国内旅費および実験補助のための人件費を使用する機会がなかった。 次年度は、繰越金を含めて研究費を、研究成果発表のための研究会参加費および国内旅費、論文誌別刷り費、プログラム開発・実験補助のための人件費に使用する。
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