2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656259
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松川 真美 同志社大学, 理工学部, 教授 (60288602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳谷 隆彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10450652)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光散乱 / 圧電 / 半導体 / 非接触 / 音速 |
Research Abstract |
導電性の圧電体では、内部電界が短絡してしまうため、その圧電性を評価することができない。しかし、超高周波数の弾性波を用いれば、内部電界の短絡を防ぐことができ、圧電性を評価できる可能性がある。そこで本課題では、ブリユアン光散乱法を用いた、GHz域の超高周波音速測定を応用し、導電性強誘電体の圧電性分布評価システムの確立を目指している。平成24年度はシステムの設計を目的に下記の研究を行った。 (試料の選択および試料の加工)まず、数種の材料中から、透明で抵抗の低い圧電体を実験対象として選定した。実際に導電性が低いGaN圧電バルク材料を準備することができた。光散乱実験に適した測定試料となるように、このバルク材料を薄片状に加工し、試料薄片の背部に光反射用のミラーを装着した。また、4端子法を用いて作成した試料の抵抗値を測定した。 (ブリユアン光散乱計測システムの改良)試料の温度を変化させながら、非接触で光散乱測定を行うため、薄片試料用の温度制御システムを構築した。液体窒素とヒータにより-100~200℃までの試料温度制御を実現できた。ブリユアン光散乱法では、散乱光の周波数シフトからGHz域の音速を測定する。微弱な散乱光測定の精度を改善し、音速の測定誤差を10m/s程度に低減できた。また、試料中の音速分布を計測するため、光散乱光学系を工夫し、Reflection Induced θ Angle 配置で試料を2次元的に移動させながら測定できるシステムを構築した。 (GaN試料の測定)上記の改良システムを用いて、GaN試料中の音速の温度依存性を測定し、音速の温度係数の測定に成功した。その成果を下記の国内学会で報告した。 市橋隼人, 杉本剛士, 柳谷隆彦, 高柳真司, 松川真美, Brillouin散乱法によるGaN単結晶の音波物性測定, 2013年第60回応用物理学会春季学術講演会 (2013.3)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の成果として、上述のように応用物理学会春季学術講演会で報告したほか、現在平成25年7月に行われるIEEE 超音波シンポジウムの口頭発表にも投稿・受理されており、近日中に国際学会でも発表する予定である。GaNの弾性的性質や温度依存性についてはこれまでも報告されておらず、貴重な成果である。 平成24年度はシステムの設計を中心に検討を行い、ブリユアン光散乱法が圧電体の評価に使用可能であることを確認した。ただし、今回使用したGaN試料は抵抗値が低く、光散乱測定のGHz帯では圧電による緩和現象が観測されなかった。この周波数帯ではまだ内部電界の短絡が生じているものと考えられる。今後は試料の抵抗値の温度依存性を十分に把握したのち、試料の圧電マトリクスを理論的に推定し、光散乱測定の周波数帯域に適しているかどうかの判断が重要となる。平成25年度には、研究計画で予定しているように、圧電材料の理論計算値も考慮した上で、試料の選定及び測定を行い、これまで得られなかった導電性圧電材料の圧電定数測定を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は前年度の成果をもとに引き続き圧電材料の非接触測定を進める。特に、圧電定数マトリックスを算出するのに必要な方位の音速を光散乱法により常温で測定し、他の手法による既報告と比較検討する。その結果を踏まえて、前年度と同様に、材料中の音速の温度依存性を検討する。また、4端子法で抵抗率の温度特性も測定し、圧電緩和現象の周波数-温度特性について理論検討も含めてより詳細な検討を進める。これらの研究では、入手可能であれば、抵抗率の異なるGaN材料やほかの圧電材料を対象とする。 なお、圧電材料中の不均一性の影響が、測定結果に及ぼす影響を把握するため、光散乱計測系に併設した顕微システムを利用し、圧電材料中の音速の二次分布測定をするとともに、画像化を試みる。またその結果から圧電特性の分布状況を検討する。 また、次世代技術として、圧電材料を利用したブリユアン光散乱法の応用技術開発を試みる。透明試料に成膜した圧電薄膜と、マイクロ波空洞共振器を用い、試料中にコヒーレントなGHz域の縦波と横波を同時に励振する。このフォノン増幅により、光散乱計測のSNを大幅に改善し、測定時間の短縮と高精度化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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