2012 Fiscal Year Research-status Report
離散事象システムの定量的スーパバイザ制御理論の創成とその工学的応用
Project/Area Number |
24656262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
潮 俊光 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30184998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スーパバイザ制御 / 離散事象システム / ゲームオートマトン |
Research Abstract |
定量的離散事象システムを重み付きオートマトンでモデル化し,平均利得が最大になるような2人ターンベースゲームオートマトンとして定量的スーパバイザの設計問題を定式化した.プレイヤー1はスーパバイザに対応し,その戦略は制御パターンの選択である.ぷりやー1は利得が最大になるような戦略をとる.プレイヤー2は離散事象システムに対応し,制御パターンによって指定された事象の中から利得が最少になるような事象を生起させる.このゲームにおけるナッシュ均衡のなかで,制御パターンの包含関係に関して極大となる戦略が最適なスーパバイザとなる.一般に,最大となる戦略がないため,最適なスーパバイザは極大なものになっている.この最適なスーパバイザを求めるアルゴリズムを導出した.重み付きオートマトンから2人ゲームオートマトンへの変換において状態数が事象の指数オーダで増加するが,ナッシュ均衡の計算はある程度効率的であることが予想できた.しかし,この点はまだ詳細な検討が必要である.また,従来の定性的なスーパバイザと定量的スーパバイザとの比較を行い,重みをうまくつけることで,定性的スーパバイザも求めることができた. 従来のスーパバイザ制御では,論理的な仕様のみを扱っていたために,定量的な情報に基づいた設計論が必要であった.本研究は,まず定量的な指標を重み付きオートマトンで記述することにより,その応用範囲がかなり広がった.最近,ソフトウェアの設計において定量的な情報に基づいた最適なソフトウェア設計が注目されるようになってきており,本研究成果の応用分野として期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の目的は,定量的な情報をどのようにスーパバイザ制御の枠組みの中で定式化するかということであった.この目的は十分に達し,最適な定量的スーパバイザを求めることができた. 当初は,最適スーパバイザが一意に決まると予想していたが,実際には,極大なものしか存在しないことが明らかになったため,今後は極大なものの中からどれを選ぶのかという問題も考える必要が出てきた.この点は次年度に検討していきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
常に最大なスーパバイザが存在するとは限らないことが明らかになったため,極大なスー パバイザについての性質を調べて,提案した最適スーパバイザの計算アルゴリズムの効率化を検討する. 次に,部分観測のもとでの定量的スーパバイザの設計法を提案する.部分観測の場合には,一部の事象の生起が観測されないために,現在の状態を正確に知ることができない. このような状況はゲーム理論的には不完全情報のもとでのゲームとみなすことができる.しかし,スーパバイザ制御においてはプレイヤー「スーパバイザ」の戦略,すなわち,どの制御パターンを指定したかを制御対象は知っているので,この情報は完全情報となる.その特徴を利用して定量的2人ターンベーストゲームとして定式化する.この定量的ゲームからスーパバイザを設計する方法を提案する.さらに,複数の設計仕様に対してスーパ バイザを構成し,それらの間の合意によって制御パターンを決定するモジュラー制御への拡張を行う.また,一つの制御仕様に対して,複数のスーパバイザによる協調的制御をおこなう分散制御への拡張についても検討する .いずれの制御においても,複数のスーパバイザに対しては同時に戦略を選ぶことになり,スーパバイザ間の提携と競合が共存する.このような状況は,一種のコンカレントゲームとみなすことができ,そのゲームにおける均衡解と最適なスーパバイザとの関係について検討する.完全観測のもとでの定量的スーパバイザの設計に関してまとめて,学術雑誌に投稿する.また,得られた研究成果は,逐次,研究会などで発表していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
定量的ゲームオートマトンの研究は,最近活発に研究されており,最新の研究動向を把握するために国際会議の論文集などを中心に図書の購入経費を計上したい. また,研究成果を発表するための旅費を計上する.海外での発表1件,国内での発表2件程度を計画している.
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