2012 Fiscal Year Research-status Report
逆拡散手法を用いたコンクリート中の塩化物イオン除去に関する研究
Project/Area Number |
24656266
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
睦好 宏史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60134334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50436333)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 塩害 |
Research Abstract |
近年コンクリート構造物の劣化による原因の一つとして、塩害があげられる。塩化物イオンがコンクリート構造物内部の鋼材に到達し、鋼材を腐食させることによってコンクリートにひび割れや剥離が生じ耐久性や安全性を著しく低下させる。本研究ではイオン交換樹脂を用いて、コンクリート構造物の塩害を抑制する手法を明らかにすることである。 先ず、イオン交換樹脂の混入量の変化による塩化物イオンの移動効果について検討するために、イオン交換樹脂を混入したモルタル供試体を用いた塩水浸漬試験により供試体内部の塩化物量の測定を行った。その結果、イオン交換樹脂の混入量が増加するに伴い、塩化物量も増加することが明らかとなった。これは、イオン交換樹脂が塩化物イオンを吸着することで、一時的に自由塩化物濃度が減少し、表面付近の自由塩化物濃度と内部の濃度に濃度勾配が発生し、塩化物イオンの拡散を促進するらである。 次に、予め塩分を混入したモルタルにイオン交換樹脂を混入したモルタルを打ち継した供試体を作製し、塩化物量の測定、EPMA(電子線マイクロアナライザ)画像による塩化物イオンの移動量を計測した。その結果、塩化物量による測定とEPMA画像においてともに塩化物イオンが、イオン交換樹脂モルタル側へ移動することが明らかとなった。 以上より、イオン交換樹脂をモルタルに混入し、塩害を受けたコンクリート構造物表面に補修材として用いることにより、ある程度の除塩ができることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イオン交換樹脂を用いたモルタル中の塩化物イオンの吸着量および移動量を世界で初めて定性的・定量的に明らかにした。すなわち、イオン交換樹脂を混入すればするほどより多くの塩化物イオンを外部から取り込むことが明らかとなった。また、その理由などについても拡散方程式によりある程度明らかにした。しかし、これだけでは実際のコンクリート構造物への適用は出来ないが、逆転の発想で、イオン交換樹脂を混入したモルタルを塩害を受けた鉄筋コンクリート構造物の表面に、補修材として打ち継いだ場合、内部の塩化物イオンを表面に移動できるのではないかという発想にたどりついた。そこで、これを明らかにするために、予め塩分を混入したモルタルにイオン交換樹脂を混入したモルタルを打ち継ぎした供試体を作製し、塩化物量の測定を行った。その結果、想定通り塩化物イオンはイオン交換樹脂側に移動するという画期的な現象を明らかにした。この現象はEPMA(電子線マイクロアナライザ)画像によっても明らかにされた。 以上より、イオン交換樹脂をモルタルに混入し、塩害を受けたコンクリート構造物表面に補修材として用いることにより、除塩が期待できるできることが明らかとなった。これらは当初の目的・計画以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下を計画している。 1)今年度は昨年度からの継続実験で、時間の経過に伴う塩化物イオンの移動を定量的に明らかにするとともに、Fickの拡散方程式に基づいて、解析的にもこの現象を明らかにする。 2)昨年度の研究では、イオン交換樹脂の混入量は5%が最大で、これより多い場合は、強度の低減、ひび割れの発生、練混ぜの困難さが明らかにされている。今年度は、混和剤メーカーの協力を得て、より多くのイオン交換樹脂が混入でき、近い将来は製品化を目指した開発を行う。 3)研究分担者(真田)はNEXCO中日本の既設コンクリート構造物の維持・管理を担当している。海岸近傍のコンクリート構造物には塩害で損傷しているものが多々有り、早急に補修する必要がある。ここでは、陰イオン交換樹脂混入モルタルに脱塩を兼ねた補修モルタルとして適用することを検討し、試験施工を行う。すなわち、塩害による鉄筋腐食のため、コンクリートかぶり部分を除去し、そこに陰イオン交換樹脂混入モルタルを打設して表面被覆し、補修と脱塩効果を期待するものである。脱塩効果は、1、2、3、6ヶ月、1年経過後、ボーリングによりモルタルおよび既設コンクリートを採取し、塩化物濃度を測定することによってその効果を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)