2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子組み換え微生物によるコンクリート生化学的解体法の実現
Project/Area Number |
24656268
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
千々和 伸浩 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80546242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 学 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (70376606)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コンクリート / 解体工法 / 機能性細菌 / 形質転換 / 酸産生 |
Research Abstract |
平成24年度は、酸産生に必要な遺伝子配列の人口合成、発現ベクタープラスミドへの組み込み、同プラスミドの抽出、およびタンパク発現機能を有す大腸菌へのプラスミドの導入により形質転換の実施、導入成功株の単離を行った。 研究の遂行中で、まず、窒素固定に関与する2種の遺伝子の単離が必要であったが、各宿主より単離をおこない両遺伝子とも単離に成功した。また、この2種類の遺伝子を組み込んだ遺伝子発現ベクターを作成し、タンパク発現大腸菌にて導入遺伝子を発現させた結果、有意に窒素量が上昇していることが確認され、導入した遺伝子により大腸菌に窒素固定という形質を獲得させることに成功した。 他の4種類の必要な遺伝子配列は単離が困難であったため、DNA人工合成法を採用した。その結果、4種類すべての遺伝子配列を取得することが可能となった。次に、発現ベクターに組み込むにあたり、耐性抗生物質の組み合わせが困難であったため、一度に2種類の遺伝子を発現できるSD配列を遺伝子間に組み込むことにより6種類の遺伝子すべてを導入できるように研究系の改善を行い、1種類の発現ベクターに4種類すべての遺伝子を組み込むことができた。 すべての発現ベクター構築後、タンパク発現機能を有す大腸菌を用いて2回の発現ベクター導入による形質転換作業を行った。 一連の研究の結果、硝酸産生に必要な遺伝子を導入できた株を12種類単離することができた。 現在、これらの単離株を用いてIPTG投与による導入遺伝子のタンパク発現および酸産生能の検討を行うべく、大腸菌培養の条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、”①微生物への遺伝子組み込み・酸生成試験”、”②極限環境微生物からの耐性付与塩基配列の抽出” を予定していた。 ①は、各宿主生命体からの遺伝子配列の取得が困難だったため、人工DNA合成法を用いることにより、すべての遺伝子配列を取得することができた。この遺伝子を用いて、発現ベクターを構築し、大量作成および精製を行った。これらの発現ベクターをタンパク発現機能大腸菌に導入をおこなった。2種類の発現ベクターに6種類の遺伝子配列を組み込んだため、2度の発現ベクター導入を行った。1度目の導入は順調であったが、2度目は塩基配列の長い発現ベクターの導入のために、形質転換後に発現した大腸菌のコロニー数が極端に少なく、また、単離した大腸菌を用いて遺伝子導入の是非を確認した結果、きちんと導入したものが少なかった。そのため、2回目の導入を何度かやり直すことにより12種類の単離クローンを取得することができた。 ②は、上述のように遺伝子導入した大腸菌を用いて酸産生の培養条件を検討しており、強酸中でも生存する単離株が獲得したのちに、その遺伝子配列等をDNAシークセンサーで確認する予定であり、その過程を進捗中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、酸産生機能的大腸菌の単離株を用いて、研究計画に示した③コンクリート小片上での侵食確認および ④発生するスラッジの特性分析について研究を進める予定である。 現在、効率よく酸を産生できる培養条件およびIPTG添加により実際に導入した遺伝子よりタンパク発現しているかを検討している。実際に、すべてが順調にいっていることを確認後、pHを測定することで酸産生を確認し、効率よく酸を産生する単離株を用いてコンクリート小片上で培養を行うことにより、その浸食状況の検討を行う。 さらに、良好な浸食が認められた株を用いて、コンクリート片を混在させた大量培養を行い、経時的なコンクリート片の状態を観察することで分解能を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究活動では、クローン導入における困難が予測されたため、キットや試薬の割り当てを大きくとっていたが、実際には当初想定よりも早く単離が完了した。25年度の研究費においても、生物特性への依存が強く実験回数が明確に予測できない個所があるため、24年度の実験予算の残りをこれらに転用する。 平成25年度は、上述の研究を遂行するために大腸菌培養およびDNA抽出やタンパクタンパク解析等の分子生物学的解析に使用する試薬が必要になる。また、スラッジの特性解析において大腸菌の大量培養を行うが、その過程で同実験に必要なWaterbathやフラスコ、恒温装置などが必要となる。さらに、国内外での研究成果の発表および学術雑誌への研究成果の論文投稿に関する経費が必要となると考えられる。
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