2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子組み換え微生物によるコンクリート生化学的解体法の実現
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24656268
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
千々和 伸浩 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80546242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 学 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (70376606)
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Keywords | 機能性細菌 / 酸産生 / 硝酸 / 形質転換 / コンクリート化学的解体 |
Research Abstract |
これまでの研究から塩酸系と硝酸系の二つの酸生成系統が、生化学的解体法として実用できる可能性があることがわかってきた。本年度はそれぞれの系統での株の作成と、その酸産生能の確認を行った。昨年度は2通りの酸産生に必要な遺伝子配列の獲得あるいは人工合成、得られた塩基配列のベクタープラスミドへの組み込み、同プラスミドの抽出、およびタンパク発現機能を有す大腸菌へのプラスミドの導入により形質転換の実施、導入成功株の単離、最終的な形質発現の確認まで進んだ。しかしその後の今年度の活動では、定常的に酸を生成させるために必要なその他の遺伝子の組み込みにおいて問題が発生し、実験系の再設計し、再実験を行った。 昨年度の成果では、窒素固定に関与する2種の遺伝子を単離し、それを大腸菌に組み込むことで、有意に窒素量が上昇していることを確認し、導入した遺伝子により大腸菌に窒素固定という形質を獲得させることに成功した。今年度はこの菌をベースに、固定した窒素を硝酸として体外に排出するために必要な遺伝子の導入を行ったが、単離した菌にIPTGを添加したもののタンパクの発現は確認できなかった。この原因として多数の遺伝子組み込みによる菌体のストレスや、組み込んだ遺伝子同士間の相互作用が遺伝子発現を阻害している可能性が考えられることから、これらの点について現在実験系の再検討を進めているところである。もう一つの有力な酸生成系統である塩酸系においても、培地pHの低下がみられる現象が一度確認されたものの、その後の再試験では期待されたようなpHの低下が見られず、これについても条件の再整理と共に遺伝子群の見直しを行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では2か年計画のうち初年度で酸生成能を有する遺伝子組み換え菌を作成し、次年度においてコンクリートの溶解実験を行う予定であった。初年度における遺伝子組み換え菌の作成においては、ベースとなる遺伝子の組み込みには成功したものの、発現したタンパクから生成される物質を体外に速やかに排出し、恒常的な酸生成システムを構築するために必要な遺伝子の組み込みと発現が予定したように進まず、研究計画に大きな修正を余儀なくされた。 この壁を超えるための幾度もの検討の結果から、大量の遺伝子組み込みによる宿主への負荷と、組み込み遺伝子間の相互作用が主要因である可能性が高まり、実験系の再構築を図り、次年度への繰り越しを前提として実験を進めているところである。酸生成の後のコンクリート溶解実験の準備については、これまでの実験と並行して進めてきたところであり、目的とする株の単離後は速やかに次のプロセスに進み、実際のコンクリート解体に適した条件を探る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの実験結果から、コアとなる遺伝子以外の組み込み遺伝子の発現に問題があることが明らかとなった。その原因として多数の遺伝子組み込みによる菌体のストレスや、組み込んだ遺伝子同士間の相互作用が遺伝子発現を阻害している可能性もあることから、これらの点について目下再検討を進めているところである。再度の遺伝子組み込み操作とその発現確認をおよそ9月を目途に完了させ、その後のコンクリート溶解実験に進むことを計画している。コンクリートの溶解実験に関する器具の準備は完了しており、溶解実験では菌の添加量、培地濃度、温度などといったパラメータから生化学的解体において最適な条件を模索する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究より、必要な遺伝子配列の合成およびベクターへの挿入は成功した。しかし実際にIPTG添加によるタンパク発現を行った結果、一部の遺伝子がタンパクへの翻訳されていないことが分かった。これらのタンパク発現の確認および確認の上での酸産生を検討するために平成25年度の経費を繰り越し、次年度以降に実験を継続する必要が生じた。 平成26年度においては、タンパク発現ののち、今年度行う予定であった酸生成確認実験、コンクリート上での溶解実験と進む予定である。このため実験消耗品や薬品購入といった物品費やテクニシャンの人件費など、今年度当初の予算使途をそのまま引き継いで来年度の研究に使用する。
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