2012 Fiscal Year Research-status Report
貯水池管理に向けたカビ臭生産藍藻類の代謝特性の解明とそれを用いた増殖制御法の開発
Project/Area Number |
24656292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40134332)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 2MIB / カビ臭 / 藍藻類 / カビ臭代謝酵素遺伝子 / フォルミディウム / ニセアカシア / 遺伝学的同定 / 貯水池管理 |
Research Abstract |
水道水の異臭味が近年、大きな問題となっている。中でもカビ臭は多大の不快感を与え、おいしい水供給の観点のみならず、環境保全の観点からも解決を迫られている。カビ臭原因物質として知られる2-メチルイソボルネオール(2MIB)は、ある種の藍藻類によって産生される。これまで、貯水池の干し上げがカビ臭防止に有効なことが経験的に見出され、国土交通省等水資源管理に携わる機関においても更なる研究・開発の重要性が指摘されている。しかし、そのカビ臭防止の機構は不明であり、より効果的な方策への発展は不可能な状態にある。本研究では、貯水池管理におけるカビ臭防除を最終的な目標として、カビ臭産生種を特異的にモニタリングするための手法の開発、カビ臭産生代謝系の同定と効果的な防除法の開発を目的としている。平成24年度には、こうした背景の下、干し上げがPseudoanabaena galeataの2-MIB産生能に与える影響を解析し、2-MIB抑制対策として干し上げの効果について評価した。 国立環境研究所のP.galeataに、1-7日間、14日間、21日間、28日間の乾燥ストレスを与え、その株からRNAを抽出し、cDNAを合成、カビ臭関連遺伝子GPPMT及びMIBSの内部配列プライマーにより、これらの遺伝子の発現量を定量した。この結果より、P. galeataのカビ臭関連遺伝子GPPMT、MIBSの発現量と干し上げを行わないものを比較した。干し上げ5日間目から14日間目においては、サンプルの発現量は経時的に減少し、特に干し上げ14日間目の株ではGPPMT、MIBSともに25%以下にまで低下した。このことから、貯水池内における干し上げが、P.galeataのカビ臭関連遺伝子の発現量低下に効果的であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、24年度の主たる計画では、実際の湖沼からの藍藻類の単種無菌培養系を確立するとともに、16S rRNAのPCR(polymerase chain reaction)法による増幅、増幅断片のクローニングと塩基配列決定により、カビ臭産生菌の同定を遺伝学的レベルで行い、さらに、ガスクロマトグラフィー質量分析計による2MIB、ジオスミンの産生量の計測により、湖沼の水質管理の為にモニタリングが必要となるカビ臭産生菌の選定を行うことを予定していた。 他方、平成25年度以降の計画として、カビ臭産生藍藻類よりMIB産生代謝酵素遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)法によって単離し、大腸菌においてリコンビナントタンパク質を発現、精製し、MIB代謝酵素の生化学的性質を明かにすること、本酵素の反応至適温度、基質特異性、基質との親和性を明らかにすることにより、2MIB産生量を低下させるための生理的生育条件の確定、反応阻害物質の検討をおこなうことを予定していた。ところが、カビ臭発現遺伝子として、GPPMTとMIBSが解明され、この過程を経ずに進めることが可能になった。そのため、これ以降に計画していた、カビ臭防除対策へと進展させることができた。当初平成24年度に計画されていて、達成できなかったものと、平成25年度に計画されていて達成されたものを比較すると、当初の計画より、より大きな進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降に計画されていた重要な点として、以下のことがある。これまでに全ゲノム塩基配列情報が決定された単細胞性藍藻類には、放線菌で同定された2MIB産生に関与する遺伝子の相同因子が見当たらないことから、本遺伝子は2MIBを産生する性質を持つ糸状性藍藻類のみが持っている可能性が高い。平成24年度の成果として、2MIB産生に関与する遺伝子が同定され、本遺伝子に特異的なオリゴDNAプライマーを合成し、多様な湖沼水サンプルから2MIB産生遺伝子を持つ生物種のみを検出することが可能になった。これを用い、湖沼水サンプルより全DNAを抽出し、2MIB産生遺伝子特異的なプライマーでPCRを行い、通常のゲル電気泳動によって増幅産物を検出することにより、そのサンプル中に2MIB産生遺伝子を有する生物がどれくらい存在するかを検定することができる。これを実現することが必要である。また、これに伴い、実際に干し上げ等、様々な対策からもたらされる遺伝子への影響把握も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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