2014 Fiscal Year Annual Research Report
貯水池管理に向けたカビ臭生産藍藻類の代謝特性の解明とそれを用いた増殖制御法の開発
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24656292
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40134332)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 2-MIB / シアノバクテリア / 曝気循環 / カビ臭 / 遺伝子解析 / 加圧ストレス / 貯水池水質管理 / 植物プランクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当初の計画調書及び前年度に報告した今後の研究の推進方策に則って、曝気循環施設の運用について、シアノバクテリアに対する暗条件や圧力増加ストレスに伴う生理的影響について明らかにした。具体的には細いチューブを用いることで実験室内で0.6MPa程度の高い水圧を付加することの可能な装置を開発した。この装置内でシアノバクテリアの一種Pseudoanabaena galeataを培養し様々な明暗条件、加圧、無圧条件で実験を行った。この結果、次のような新しい知見を得た。まず、従来、曝気循環においてはシアノバクテリアが暗条件に置かれることで死亡、これが細胞数を減少させると考えられていた。しかし実際には明条件で加圧した場合にも細胞数が減少し、電子顕微鏡観察の結果、加圧によって気泡が縮小、浮力の低下によって沈降量が増加することが原因であることが確認された。この発見に基づき、明暗条件及び加圧条件の組み合わせを変化させた実験を行い、細胞数の指標となるOD730の測定を行うことで、暗条件に起因する細胞数減少量と加圧による細胞数減少量の分離を行った。また、この結果は顕微鏡で確認される細胞の沈降速度から見積もられる値とほぼ一致するものであった。次に、加圧速度を変化させることで、細胞の沈降速度は加圧速度の対数に比例して増加することを示した。このことは、急速な循環を起こす装置を用いる方がより効率的にシアノバクテリアの量を減少できることを示している。2-MIB濃度と2-MIB合成遺伝子の発現量との間にも高い相関がみられた。そのため、2-MIB合成遺伝子の発現頻度を調べることで、瞬間的な2-MIB発生能を見積もることができる。この性質を利用すると、遺伝子圧現頻度は、暗条件にして1週間程度たった時に最大値となり、その後は減少することが得られたことから、曝気循環の運用の仕方により2-MIBの産出を促す可能性が示され、注意を要することがわかった。
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