2013 Fiscal Year Research-status Report
大気水収支法にGPS可降水量を適用した蒸発散量推定手法の確立
Project/Area Number |
24656295
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萬 和明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90554212)
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Keywords | 可降水量 / 移流モデル |
Research Abstract |
地球温暖化は水循環にも影響を与え,我々はより深刻な水問題に直面する可能性がある.現在および将来の水問題の解決に資するためには,地球規模での水循環の理解を深めることが必要不可欠と言える.水循環は大きく分けて降水,蒸発散,流出に分類される.降水と流出に関しては日本国内を詳細に覆う観測網が整備されているが,蒸発散の観測値は少なく,蒸発散の時空間分析やモデル検証の障壁となっている.本研究課題では,モデル検証にも耐えうる時空間間隔を持った蒸発散推定値を出来うる限り観測値をベースに作成することを目的とし,大気水収支法を GPS 可降水量に適用する.平成25年度では GPS 可降水量に対して移流モデルを適用し,発達・衰弱項としての蒸発散量の推定可能性を検討した. まず,国土地理院の電子基準点データ提供サービスから対流圏遅延量を取得し,AMeDAS の気象観測値から,空間方向約 20km 間隔,時間方向3時間間隔の可降水量を推定した.次に,可降水量の時間変化を位置座標の 1 次式で近似した移流ベクトルと乱れの項で表現し,1 次式中の係数は時々刻々と得られる可降水量分布から推定した.移流モデルでは,格子を超える物理量の移動は表現できない.そこで本研究では空間間隔を 100km に設定し移流モデルを適用した. 移流モデルによって推定される3時間単位の可降水量の水平移流は,実測値と比較して誤差が大きく単純な移流モデルの適用は困難であることが示唆される.本研究課題では,移流モデルにおける乱れの項が蒸発散を表すことになるため,移流モデルの適用方法の改善といった対策が必要である.しかし,移流モデルから推定された蒸発散量は明確な日周変化を有しており,移流モデルを用いた蒸発散量の推定可能性を示すものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,モデル検証にも耐えうる時空間間隔の蒸発散推定値を出来うる限り観測値をベースに作成することを目的とし,大気水収支法を GPS 可降水量に適用し,数日かつ 20km 間隔の蒸発散量の推定手法を確立することである. 平成25年度はその目的の達成に向けて,可降水量の水平移流量に対して移流モデルを適用し,蒸発散量を推定できるか,その適用可能性を検討することである. そこで,可降水量の時間変化を位置座標の 1 次式で近似した移流ベクトルと乱れの項で表現する移流モデルを適用し,1 次式中の係数は時々刻々と得られる可降水量分布から推定した.ここで,移流モデルにおける乱れの項が蒸発散を表すことになる.移流モデルによって推定される3時間単位の可降水量の水平移流は,実測値と比較して誤差が大きく,移流モデルの適用は困難であることが示唆された.これは研究計画時から想定していたことであり,本研究課題では,移流モデル自体の改良やの適切な適用方法の模索といった対策が必要であり,現在も取り組みを続けている.移流モデルから推定された蒸発散量は明確な日周変化を有しており,移流モデルを用いた蒸発散量の推定可能性を示すものと考えられる.以上のことから,平成25年度の研究目的は達成されたと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
移流モデルによって可降水量の水平移流量を推定する初歩的な手法は概ね確立できたと考えられる.移流モデルによる GPS 可降水量の水平移流量の推定可能性について,移流モデル自体の改良やの適切な適用方法の検討などの研究課題に引き続き取り組む.また,本手法による蒸発散量の推定値の検証方法について検討を開始する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度当初の計画にしたがって旅費や物品費として執行したが若干の残額が発生した.不要不急の目的で交付内定額を全額執行するよりは次年度に繰り越して執行することが有益であると判断した. 取得した気象観測データや,解析結果を保存するためのハードディスクを購入する.また,積極的に国内外の関連学会・会議で発表し,多数の研究者との研究討議を行うための旅費を計上している.
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