2013 Fiscal Year Research-status Report
発現遺伝子の解析に基づく二段階水素発酵-メタン発酵システムの構築
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24656314
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西村 和之 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (00261595)
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Keywords | バイオガス化 / 微生物叢解析 / 機能遺伝子 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実内容:(1)ラボスケールの二段階水素発酵-メタン発酵プロセスの連続運転 平成24年度に引き続き、バイアル実験により、メタン発酵条件の決定と水素発酵条件の決定及び処理対象となる有機性廃棄物の前処理法を検討した。前処理方法としては、熱アルカリ処理と超音波破砕を比較し、超音波処理の有効性を明確にした。また、平成24年度末から開始した、仕込み容量10Lの連続発酵実験により、バイオガス収率は目標値に到達していないものの、安定してバイオガスを発生する処理系の確立が行えた。 セルロースを主とする難分解性の有機物である紙繊維を含む排水の生物処理から生じる余剰汚泥のバイオガス化プロセスにおいて、バイオガス化効率の向上の為に用いる前処理法は、下水処理から発生する余剰汚泥の前処理で有効であった超音波破砕の方が熱アルカリ処理よりも有効であることが確認された。 仕込み容量10Lの連続発酵処理系において、難分解性の紙繊維を含む生物処理から得られた余剰汚泥を混合して処理した場合、下水処理の余剰汚泥のみを処理する場合よりもバイオガス収率は落ちるものの、バイオガス化そのものは十分に行われることが認められた。また、紙繊維を含む余剰汚泥を混合する場合、前処理として超音波破砕処理を行うことでバイオガス収率は向上することが認められた。 (2)分子生物学的菌叢解析:後段のメタン発酵において、16SrDNA をターゲットとするシーケンス解析により優占微生物と判断されたMethanococcus属に由来するMethyl CoenzymeM reducte alpha subunit (mcrA gene)に着目してRealtime-PCR用のプライマーを設計した。バイアル試験によりMethanococcus属の活性をmcrA geneをターゲットとしてRealtime-PCRで評価した結果、メタンの発生に先立ちmcrA geneの発現量が増加する可能性が示唆された。このことから、mcrA geneの発現量により発酵過程を評価できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)H24年度末から開始した連続運転において、バイオガス化効率は目標に届かないものの、安定した処理プロセスを構築することができた。 2)後段のメタン発酵系ではあるが、mcrA geneの発現量によりバイオガス化の発酵過程を評価ことができると判断されたことから、水素発酵系においても同様のアプローチにより発酵過程を評価できる可能性が認められた。 3)ほぼ1年間の安定運転が継続できたことから、二段発酵により高効率なバイオガス化プロセスを構築できることが示唆できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ラボスケールの二段階水素発酵-メタン発酵プロセスの連続運転:メタン発酵装置は安定して運転を継続しており、バイオガス収率の向上を目指した運転条件の検討をバイアル試験を含めて行うこととする。 2)分子生物学的菌叢解析:メタン発酵同様に水素発酵に必須の酵素または補酵素に関与する遺伝子をターゲットとするRT-PCRによる評価系を構築すると共に、DGGE法によるメタゲノムの解析を実施する。 3)当初計画の通りに紙繊維等の難分解性の利用し難い未利用バイオマスの高効率なバイオガス回収システムの提案を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究はほぼ予定通りに進められたが、連続運転の安定稼働を優先した結果、前段の水素発酵のバイアル実験を次年度に持ち越した事から繰り越し金が発生した。 物品費:本研究の主目的である微生物群集解析と発酵槽の運転状態を把握する為に必要な遺伝子抽出キットや培地等の試薬類とプラスチック等の消耗品類として研究費の約90%を使用する。 旅費:成果発表のための旅費として研究費の約10%を使用する。これらにより、交付額の100%を使用する。
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