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2012 Fiscal Year Research-status Report

高速・超高感度XRDとSi-NMRによるセメントのごく初期水和解析の高度化

Research Project

Project/Area Number 24656317
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

名和 豊春  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30292056)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 胡桃沢 清文  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374574)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords高速・超高感度XRD / リートベルト法 / NMR / ごく初期水和反応 / C3A / 非晶質C-A-H / C3S / C-A-S-H
Research Abstract

本研究の目的は、産業廃棄物の建設材料への資源化を促進するために、廃棄物の利用により増大するセメント中のC3Aのごく初期水和解析の高度化を図り、それがコンクリートの流動性へ及ぼす影響から廃棄物の許容最大混和量を明らかにすることである。平成24年度に得られた成果は以下に列挙される。
(1)高速・超高感度XRD法とNMR法を融合したセメントのごく初期水和の定量化
高速・高感度XRD検出器の導入により、従来に比べ測定時間を1/12に短縮することに成功し、水和速度の速いC3Aの水和をリアルタイムで観察することが可能となった。また、非晶質生成物の析出も探知したため、27Al-NMR法を用いて非晶質を含めたごく初期でのC3Aの水和解析の高度化を図り成功した。その成果は大きく、表面科学的な要因がC3Aの水和反応に及ぼすことを世界で初めて明らかにすることができた。C3Sの水和も29Si-NMR測定についても実施を行い、高炉スラグなどのアルミニウム含有量が多い廃棄物を添加するとC-S-Hの構造が変化することを確認した。
(2)水和生成物の表面科学的性状に基づくC3Aが流動性に及ぼす影響の解明
C3Aから溶出したAlの影響を受けるC3Sの水和生成物であるC-A-S-Hを合成して、その表面電位を測定し、C3Aがセメント粒子の表面科学的性状に及ぼす影響の解明を図った。得られた結果から、C-A-S-HはAlを含まないC-S-Hに比べ負の表面電位を示し、CaやNaイオンなどの陽イオンの吸着量が増大し、その結果Clイオンなどの陰イオンの吸着量も増大することが判明した。これは、C-A-S-Hが化学混和剤を多く吸着することを示唆し、混和剤添加セメントペースの流動性を回転粘度計で測定した結果と符合し、コンクリートの流動性に及ぼすC3A量の影響、言い換えると廃棄物の許容最大混和量に関する有用な情報を得ることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

平成24年度は、高速・高感度XRDにモノクロメータを導入したため、測定手順や最適条件を設定するまでに時間が掛かったが、最終的には10分間で高精度のXRD測定が可能なシステムを構築することができた。これにより、セメントのごく初期水和反応の測定が可能となった結果、当初予期していなかった非晶質C3A水和物の存在を明らかにすることができ、さらに27Al-NMRによって非晶質成分の定量化にも成功した。また、非晶質C-A-H水和物も含めたC3Aの水和反応は、最新の熱力学に立脚した水和モデルでも説明できなく、粉体表面へのイオンの吸着も考慮した水和反応を考える必要があることを丹念な実験および理論的解析によって実証することに成功しており、期待以上の成果を上げている。
C-S-H中のSiとAlの置換についても、C-A-S-H水和物を合成して検討し、表面性状が異なることを界面電気性状やイオンの吸着性状から明らかにしている。この成果は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を添加したC3A量の異なる各種セメントの流動性の比較でも実証され、C3A量の影響が表面性状の相違で説明されることを確認している。なお、このような表面性状の異なる粉体間に作用する相互作用力とコンクリートのようなたサスペンジョンの流動性の関係についても数理モデルの構築に成功しており、期待以上の成果を上げている。
以上、平成24年度ではコンクリートの流動性へ及ぼす影響から廃棄物の許容最大混和量を示す基本要素である水和モデルと流動性モデルを構成する要素はほぼ開発され、平成25年度に様々な系での実証に用いるツールの準備が整ったといえる。

Strategy for Future Research Activity

平成25年では、平成24年で確立した測定方法を用いて廃棄物がコンクリートの流動性に及ぼす影響を定量化できるモデルを構築し、実用上問題ないセメント組成物を得るために廃棄物の組成と量に関する材料設計法を提案することを目指す。具体的には、3点について研究を行う。
1)高速・超高感度XRD法とNMR法を融合したセメントのごく初期水和反応の解明:廃棄物中の微量成分である可溶性の無機塩や有機物がC3Aの水和反応に及ぼす影響を検討する。
2)水和生成物の表面科学的性状に及ぼす廃棄物からの溶出成分の影響:合成したC-A-H水和物やC-A-S-H水和物に各種の無機塩や有機物を添加したときの表面電位を測定し、各水和物の表面電位に及ぼす無機塩および有機物の影響を定量化する。次に、無機塩および有機物を添加したセメントペースト及びモルタルの流動性を、それぞれ回転粘度計およびフローで測定し、水和反応物の種類及び量と表面電位が流動性に及ぼす影響を、多変量解析を用いて整理し、流動性に及ぼすC3AやC3Sの影響の数理モデルの一般化を行う。
3)流動性の面からの廃棄物の使用の最大許容値の推定:廃棄物を添加したセメント中のセメント鉱物組成および微量成分の生成に関するに関する既往の研究成果に、本研究で得られたC3A、C3Sおよび微量成分量と流動性との関係を示す数理モデルを適用することにより、流動性の面からの廃棄物の使用の最大許容値を求める。また、この結果に基づき、従来のポルトランドセメントよりも廃棄物を多く使用しCO2 排出量の低減を可能でき、かつ実用的な流動性を具備するセメント組成物を得るために廃棄物の組成と量を予測できる材料設計手法を提案する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成24年度未使用額については平成24年度内で執行済みであり、平成25年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。
(消耗品)研究用の混合材無混入の4種類のポルトランドセメントとC3Aの水和を制御するための試薬類を購入する。
(旅費) XRD検出器の改良の件で装置メーカとの打合せを行うため、東京―札幌間の旅費が必要となる。また、平成25年度は得られた成果の発表のための旅費も計上する。
(その他:装置レンタル料など)水和解析に用いるXRD装置本体に取り付ける高速・超高感度の検出器をリースする。なお、モノクロメータも昨年度からリースしているが、申請者の運営交付金で負担する。29Si‐NMRついては学内の共通試験装置をリースし平成25年度は1年の使用期間で60万円をリース料として計上した。27Al-NMRについてはが外部委託とし、運営交付金で負担する。

  • Research Products

    (15 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (7 results) (of which Peer Reviewed: 6 results) Presentation (8 results)

  • [Journal Article] レオロジーモデルに基づく濃厚凝集サスペンジョンのフラクタル次元の推定2012

    • Author(s)
      後藤卓、名和豊春
    • Journal Title

      日本レオロジー学会誌

      Volume: 40 Pages: 157-164

    • DOI

      10.1678/rheology.40.157

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] レオロジーモデルに基づくセメントペーストの凝集構造の推定2012

    • Author(s)
      後藤卓、名和豊春
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 66 Pages: 669-676

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] HMの新しい定量方法を用いたC3S,C2Sの水和解析2012

    • Author(s)
      粟村友貴、黒澤利仁、名和豊春、湊大輔
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 66 Pages: 47-54

  • [Journal Article] C-S-H構造形成における水和シリケートモノマーの役割-29Si MAS NMRと2H NMRによる考察2012

    • Author(s)
      黒澤利仁、湊大輔、名和豊春、服部廉太
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 40 Pages: 63-70

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 高炉スラグペーストの電気伝導性による塩分浸透と微細構造評価2012

    • Author(s)
      胡桃澤清文、名和豊春
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 66 Pages: 127-134

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 非晶質物質の生成を考慮したアルミネート相の水和反応解析2012

    • Author(s)
      畠山葵、山本準紀、名和豊春、金橋康二
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 66 Pages: 230-236

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 高炉スラグ添加セメント硬化体における塩化物イオンの拡散モデル2012

    • Author(s)
      合田義、岩浅瑛大、名和豊春
    • Journal Title

      セメント・コンクリート論文集

      Volume: 40 Pages: 390-397

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] CaCl2の添加がCaSiO5の水和反応に及ぼす影響2013

    • Author(s)
      粟村友貴、黒澤利仁、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] アルミネート相の水和反応解析-熱力学的平衡論による検証2013

    • Author(s)
      畠山葵、黒澤利仁、粟村友貴、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] 湿度養生下における白色セメントペースト内の水和反応2013

    • Author(s)
      黒澤利仁、名和豊春、粟村友貴、畠山葵
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] C-S-H及びC-A-S-Hへの各種イオンの表面吸着反応2013

    • Author(s)
      合田義、上仲壮、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] セメント硬化体中の塩化物イオンの拡散におけるアルカリイオン濃度の影響2013

    • Author(s)
      上仲壮、合田義、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] X線光電子分光法によるセメント硬化体の分析2013

    • Author(s)
      胡桃澤清文、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] 凝集系レオロジーモデルによる一次粒子径の影響評価2013

    • Author(s)
      後藤卓、名和豊春
    • Organizer
      第67回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン
    • Year and Date
      20130513-20130515
  • [Presentation] レオロジーモデルに基づく濃厚系凝集サスペンジョンのフラクタル次元の推定

    • Author(s)
      後藤卓、名和豊春
    • Organizer
      第66回セメント技術大会
    • Place of Presentation
      東京都 池袋 ホテルメトロポリタン

URL: 

Published: 2014-07-24  

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