2013 Fiscal Year Research-status Report
流体力学的アプローチによるECCの繊維配向性の評価
Project/Area Number |
24656319
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金久保 利之 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90261784)
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Keywords | 繊維補強セメント複合材料 / 配向性 / 架橋性能 / 引張試験 / 流動解析 / 可視化 |
Research Abstract |
本研究では、引張応力場においてひび割れ発生以降疑似歪硬化性状を示す繊維補強セメント複合材料であるECC(Engineered Cementitious Composite)に焦点をあて、ECCのフレッシュ時の性状を、流体力学的アプローチによる実験的および解析的な流れ場の把握を通して、打ち込み時における繊維の配向性を評価することを目的としている。 平成25年度は、マトリックスのフレッシュ時の流動性を模擬した透明な液体(珪酸ナトリウム水溶液:以下、水ガラス)を用い施工時の繊維の流動挙動の可視化を行うとともに、自由表面の流体解析が可能なFDMによる流体解析を行った。あわせて、同一条件下で打設を行ったECCの引張試験体、曲げ試験体の加力試験を行った。 引張試験では試験体打設時の流動方向の違い(横打ち、縦打ち)が繊維の架橋性能に影響を与えたが、曲げ試験体では大きな差異は見られなかった。試験体破断面の繊維を観察した結果、繊維の配向性が架橋性能に大きな影響を与えていることが確認された。可視化実験では、画像処理を容易に行えるように黒色のナイロン繊維を混入し、流動方向、型枠の種類と大きさを因子として繊維配向を確認した。楕円分布近似による配向強度で評価した結果、曲げ試験体では試験体寸法が大きい場合の方がより試験体軸方向への配向が強まること、引張試験体では繊維混入率が増加すると配向強度は顕著に減少すること、曲げ試験体よりも引張試験体の方が流動方向の違いによる影響を受けることが確認された。FDMによる流体解析では、可視化実験で用いた型枠における流動シミュレーションを行い、前述の配向強度を用いて検討を行った。その結果、各試験体において横打ちの方が縦打ちに比べてより流動方向に対して強く配向すること、横打ちの場合引張試験体は曲げ試験体に比べ配向強度の違いが顕著であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、(1)実試験体での繊維配向性評価、(2)実供試体での引張性能の確認の2つが当初の計画であった。平成24年度で、可視化実験の簡素化、流動シミュレーション解析の足掛かりを得たため、平成25年度ではさらに推し進めた研究を行うことができた。具体的には、(1)実供試体での引張性能の確認、(2)同一の流動条件における水ガラスによる可視化、(3)流動シミュレーションの3件を、引張試験体、寸法を変えた曲げ試験体に対して同時に実施することができた。また、繊維の配向性を定量的に扱えるようにするため、楕円分布近似による配向強度と呼ぶ指標を導入した。繊維配向角分布の各階級の相対度数に対して、配向角を偏角とする平面座標に変換し、最小二乗法によって近似した楕円の径と、径と座標軸のなす角を得る。すなわち、配向性が強いと潰れた楕円となり、ランダム配向に近いと真円に近づく。この楕円の2つの径の比を配向強度と定義した。前記(2)および(3)の実験結果は配向強度で検討し、配向性の評価を容易に行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
配向強度という指標を導入することによって、配向性の評価を定量的に行えるようになった。しかしながら、定量的な評価が可能になったが故に、水ガラス流動の可視化実験によって得た配向強度と、流動シミュレーションで得た配向強度とは異なる結果となっている。各試験体において横打ちの方が縦打ちに比べてより流動方向に対して強く繊維が配向すること、横打ちの場合引張試験体は曲げ試験体に比べ配向強度の違いが顕著であること、等の結果は定性的には合致しているが、最終的に架橋性能を定量的に評価するためには、両者の差異を明確にする必要があると考えられる。特に可視化実験においては実験毎のばらつきが大きいが、現状の流動シミュレーションではばらつきを再現することはできない。 今後、型枠形状や大きさをパラメータとした実験を引き続き行う必要があるとともに、当初の研究目的である、流し込み角度や流し込み位置の違いを主体とした、繊維配向性と引張性能確認のパラメトリックスタディを実施する。
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Research Products
(4 results)