2012 Fiscal Year Research-status Report
高層鋼構造建物のPCa外壁を地震時倒壊限界まで脱落防止する技術への挑戦
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24656322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吹田 啓一郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70206374)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カーテンウォール / 耐震 / 変形追従 / プレキャストコンクリート |
Research Abstract |
強震動予測技術の進歩により現行の耐震基準を上回る極大地震の発生が予測されており,特に長周期成分が卓越する地震動では高層建物の応答が大きくなる.特に上町断層帯地震のようにパルス性の強い直下型地震では主体構造の重大な損傷や倒壊の危険性が指摘されている.最近の予測地震動を用いた高層建物の地震応答解析に関する研究を照査分析した結果,最大層間変形角が1/25程度以上の大きさとなることを確認した.また一方でPCaカーテンウォールの変形追従性能について,これを確認した既往の実証実験を照査分析したところ層間変形角1/40まで脱落せずに追従することを確認した事例があるが,それ以上の変形角に対する性能は確認されておらず,脱落の限界が明らかにされていないことを確認した. 現行の高層建物に使用されるPCaカーテンウォールの変形追従機構について,PCaパネル製造メーカーから情報を収集して広く普及している典型的な取付工法を把握し,また複数の工事現場にて実工事の取付状況について情報収集を行った.この結果に基づき,ロッキング形式の変形追従機構を有するPCaカーテンウォールの構面方向の変形を対象に,変形追従性能の限界と限界後の損傷および脱落に至る過程を検証するための実験を行った.建物の倒壊限界とPCaパネルの脱落限界の関係を明らかにするため最大層間変形1/5までの鉄骨骨組の変形を再現する載荷フレームを用意し,これに横2枚×縦3層の計6枚のパネルを取り付けた試験体により損傷過程を調べた.その結果,変形追従限界の到達,ファスナーのパネル定着部の損傷,パネル同士の接触によるパネルの部分的な破壊と落下が発生し,各損傷の発生時期と層間変形角の関係を定量的に明らかにした.この結果から寸法の異なる様々なPCaパネルについて損傷発生を予測する手法を提示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では,対象とすべきPCaカーテンウォールの変形追従形式,性能を検証すべき変形の種類とその大きさ,実大実験による破壊現象と変形限界の把握を目的に掲げており,実大のPCaカーテンウォールの載荷実験を実施してこれらの点を明らかにした.本実験で検証した取付方法について,当初の目標に掲げた成果を得ることができた.また,本実験で対象とした2種類の取付ファスナーの配置は,上部に振れ止め,下部に荷重受けとしたが,実験結果の分析に基づくと,上下が逆の配置の場合にはファスナーが損傷を受けた後のパネルの挙動および脱落の限界が本実験とは異なることが予想される結果となった.このように実験対象に対する限界状態を明らかにすると共に,異なる損傷形式の可能性も同時に明らかにする成果を得ており,当初の計画以上に新たな知見を得ることに成功していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当初計画の目標を達成し,それ以上の成果も挙げることができたため研究経費には若干の余裕ができてこれを次年度使用額に計上した.今年度はパネルの構面方向変形に対する性能限界を対象に実験を実施したが,次年度は,構面外方向および構面方向と構面外方向の変形を同時に受ける場合を対象とする計画である.このような条件で損傷限界,脱落の可能性が高い条件を分析することにより実験で明らかにすべき内容を検討し,その結果から実験方法を決定する.その結果に基づいて,載荷装置ならびに試験体の詳細を設計し,実験実施を検討する予定である.これらの実験的な検証を必要とする条件の分析には文献資料の収集や高度な数値解析が必要であると予想される.特に今年度の結果から,ファスナー配置の条件により多様な損傷形態の可能性が明らかになったため,この分析に多くの資源が必要となる見込みである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究内容は,PCaカーテンウォールの構面外変形に関する資料の収集と分析,構面外変形および構面外と構面内の変形を同時に受ける場合の挙動予測のための理論的および解析的分析,損傷限界および脱落限界の予測,予測結果に基づく実験方法の検討を行う.様々な取付方法の違いにより損傷形態が異なることが今年度の実験と分析から新たに明らかになったため,これを次年度の検討項目に追加する必要があり,次年度研究費にこれを充てる予定である.それらの結果に基づいて試験体,載荷装置の設計を行い,載荷実験を実施する予定である.
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Research Products
(4 results)