2012 Fiscal Year Research-status Report
鋼板を用いたエンボス型サンドイッチパネルの実用化に関する研究
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24656329
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新谷 眞人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30434319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / サンドイッチパネル |
Research Abstract |
本研究の目的は、力学性能や加工性に優れた新しいサンドイッチパネルを提案し、力学性能を把握することである。また、環境負荷低減や加工性をもったパネルへの発展という考え方から、アルミ材の適用を行うものである。 [鋼板を代替するアルミニウム合金による構造システム] 本構造システムは、アルミ合金の環境性と加工性に着目したものであり、①鉛直支持要素である柱、②水平抵抗要素である壁パネル、③空間を構成する床パネル、それを柱へ伝達する梁材から構成される。上記の①と④の提案と検証を行った。具体的には、再利用性に主眼を置いたアルミニウム合金による汎用性の高い部材断面の提案を行なっている。その中でも主架構となる、鉛直支持要素である柱材、柱へと荷重を伝達する梁材に対し、それぞれ長柱座屈実験、三点曲げ実験を行い、部材の性能を検証した。 [離散的なリブを持つ鋼板サンドイッチパネルの実用化] 提案するサンドイッチパネルは、大スパンオフィスビルのスラブ材として用いることを目的としている。穴の開いたリブ材を離散的に持つ2枚の板を合わせ、穴にピンを通すことで板を結合し構成する。はじめに実物大試作品の製作と静的載荷試験を行い、試験結果と既往研究において定式化された撓みの推定式との比較を行った。さらに、鉛直振動試験を行うことで、基本的な振動性状を得、居住性能の把握を行った。 [エンボス型コアを有する鋼板サンドイッチパネルの構造特性評価] 提案するサンドイッチパネルは、プレス成形によりエンボス加工された2枚の鋼板を溶接接合したものである。面外曲げせん断、面内圧縮、面内せん断の各種加力実験を行い、剛性と耐力に関して基本的な知見を得た。また、上記の構造システムの②、③への応用と、展性に富むアルミ材を適用することでより深いエンボスを加工できることから、エンボスの加工性と断面性能に関する検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、エンボスパネルの面外曲げ、面内圧縮、面内せん断の各種加力実験を行い、剛性と耐力に関して基本的な知見を得た。明らかになった力学性能を以下に列挙する。[面外曲げ性能]:実験結果から、有効断面係数と等価断面二次モーメントを求め、剛性評価においてその有用性を示した。また、耐力に関しては、最大耐力を決定する因子が面外せん断による材料降伏であることを示した。[面内圧縮性能]:実験結果から、軸剛性を評価する際の等価断面積を算出した。また、座屈耐力に関して、エンボスコア間の平板部で、局部座屈荷重を算出すれば、座屈耐力を評価できることを示した。[面内せん断性能]:剛性に関しては、実験結果と解析結果で不一致が見られた。耐力に関しては、有効長さを仮定することで評価できることを示した。[有効幅比の検討]:各種加力実験の結果として、以下の3つの有効幅比の実用性が確認できた。特に、αとβについてはエンボスの配置パターンと間隔から幾何学的に計算できる量である。エンボスパネルの各種の剛性と耐力はこれらの有効幅を用いることで簡便に評価が可能である。(α:面外・面内のせん断力の負担幅を表わしている。0.54という値が得られた。)(β:面内軸力の負担幅を表わしている。0.46という値が得られた。)(γ:エンボス加工のない平板部における面内軸力の負担幅を表わしている。0.60という値が得られた。) [今後の課題] 圧縮試験、せん断試験においては、耐力は数値解析とよく整合する傾向があるものの、変形については大きく異なる場合があった。これらの多くは実験に用いられた冶具の不備による可能性も大いに推察される。また、本研究のエンボスパネルの変形および耐力は前述のように鋼板の面外応力が大きな箇所で決定的であり、エンボスコアの配置の工夫等により、耐力や剛性を改善する事が可能と考えられ、検討の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、エンボス型コアをもつサンドイッチパネル構造をさらに発展させるための検討を行う。現在、発展系として次のようなことを考えている。 [1. アルミ材のパネルへの適用] パネルが面材として性能を発揮するためには、面外方向の剛性と耐力を持つことが重要である。鋼板の加工性を考えると、既往研究の板厚(3.2mm)とパネル間距離(67mm)を今以上に大きくすることは難しい。しかしながら、柔らかく加工性の良いアルミ材を適用することで、断面性能を大きくすることができると考えられる。 [2. エンボスコア形状の改良] 既往研究のパネルでは、楕円形状のエンボスコアを、上側のコアと下側のコアが直交するような配置で接合していた。これは、接地する面積を増やし、施工上の誤差を解消するための手段であった。しかしながら、楕円体のエンボスコアは、曲辺部に曲率の大きい部分ができるため、そこが成形限界となってしまっている。張り出し深さ(エンボスコア高さ)を大きくするために、この楕円形状のエンボスコアは改良の余地があると考えられる。 [3.曲面構造の可能性] これまでは、エンボスパネルは、平板パネルだけであったが、曲面の製作方法を考案し、構造性能を検証することによって、曲面構造の可能性を模索する。1枚の鋼板を曲面へ加工するためには、撓鉄(ぎょうてつ)加工という手法が一般的に用いられている。この手法は、ガストーチで鋼板を加熱して膨張させ、水を掛け急速に冷却することで鋼板を収縮させ曲面形状をつくるものであるが、その精度は職人の経験によって決まる。したがって、2枚の板が接合するエンボスコア部分の誤差をできるだけ小さくする製作方法の考案が必要となる。 以上の3つの発展形を研究の軸とし、製作方法に関してファブリケーターと共に検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究の推進方策に従い、提案するエンボスパネルの載荷試験を行う予定である。したがって、研究費用は、試験体の製作費用、材料費、試験実施費用が主となる。 特に、エンボスパネルの製作は、費用を含めて鋼板のファブリケーターと共に検討していく予定である。製作費・加工費は試験体2体を考えており、35万円×2=70万円としている。ファブリケーターは東北地方に拠点をおいているため、旅費を10万円、試験実施費用は20万円を予定している。加えて、非常勤研究員への研究補助の謝金として年間で50万円程度を想定している。
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