2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656342
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 和彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40361521)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | モバイル・ホスピタル / 病院船 / 病院列車 / 災害 / 過疎 |
Research Abstract |
2012年度はまず日本のモバイル・ホスピタルの実例である、瀬戸内海の島をめぐる診療船の実態を日本建築学会大会で報告した。停泊中も揺れを伴う船では診療行為に制限があること、積載スペースが少ないため薬剤投与ができないこと、患者のとりまとめは島の民生委員と協力体制をとっていること、船体から大型医療機器が出せず更新ができないこと、バリアフリーとなっていないこと等が指摘された。 続いて次世代のモバイル・ホスピタル実現に大きな武器となる医療の電子化について基礎的な調査を行った。具体的には近年普及が進んでいる電子カルテの導入が建築計画に及ぼす影響をアンケートとインタビューから探った。電子カルテの導入でカルテ庫やフィルム庫が減少するかをアンケートで尋ねたところ、フィルム庫は減るがカルテ庫はむしろ増えている病院が多かった。カルテをスキャンする費用がないという金銭的な事情よりも、スキャンしたカルテに真正性が保たれるかという不安や、手術同意書のように印鑑やサインの入った書類は原本を保管すべきといった電子化そのものに対する疑問が影響していた。また、周辺の医療福祉施設と電子カルテを連携している例も皆無であり、電子化にはまだ混乱が見られることが明らかとなった。 最後にモバイル・ホスピタルの先進事例としてインドの病院列車の運行と医療行為の実態を調べた。最も特徴的なのは、列車に積まれた病院機能が手術部と滅菌部しかない点である。診察室や入院ベッドはプロジェクトを行う駅周辺の病院やチャリティー施設に仮設で設置し、列車を身軽にするとともに、手術が必要な患者をスクリーニングして列車周辺の混乱を防いでいる。また、医療スタッフもすべてボランティアでまかない、列車の運転やエネルギー、水、食料、洗濯、ゴミといったロジスティクスも国鉄や町の業者に外注することで、専任スタッフは技術者を中心とした11名に絞り込まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画策定時には年間で2-3の海外モバイル・ホスピタル事例を収集する予定であったが、調査を進めるうちに事例数は想定していたより多いことが分かった。各国で同様のコンセプトが求められていることが分かったが、調査対象が広がるため現在までの達成度は計画当初より相対的に遅れることとなった。 また、病院列車の文献調査を行ったところその起源は戦争ではなく、米国の西部開拓時代の鉄道敷設工事にまで遡ることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
より多くの海外モバイル・ホスピタル事例を収集するとともに、足下の日本で小規模に行われている訪問診療にも目を向け、これからの日本に求められるモバイル・ホスピタル像を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)