2013 Fiscal Year Research-status Report
博物館建築がポピュラー文化受容に果たす空間的機能の解明とその設計還元に向けた研究
Project/Area Number |
24656343
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 竜一 京都大学, 地域研究統合情報センター, 助教 (10396913)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 千恵 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (90397779)
伊藤 遊 京都精華大学, 付置研究所, 研究員 (70449552)
村田 麻里子 関西大学, 社会学部, 准教授 (50411294)
|
Keywords | マンガ / ミュージアム / 博物館建築 / ポピュラー文化 / 図書館 / まちづくり |
Research Abstract |
本年度においては、国内のマンガミュージアムに関する詳細なインタビューを行い、各ミュージアムの設置の経緯などを分析したと同時に、2013年11月30日には、石巻市石ノ森萬画館において「東北のマンガミュージアム」と題し、東北の主要な3館のマンガミュージアム関係者を集めシンポジウムを開催した。シンポジウムは全国のマンガミュージアム関係者も多く参加するなど、成功裡に終わり、地域とマンガミュージアムの関係における課題と可能性を、実務レベルで整理することができた。各館が抱える建築的な課題なども提示され、今後の研究に有効な知見を得ることができた。 また、2月には韓国・富川にある漫画映像振興院にてトラッキング調査を実施し、全部で50を上回るデータを得ることができた。こちらに関しては現在分析中である。 本課題の大きな成果と考えられるものは、国内外の約30館のマンガミュージアムに関する調査結果をまとめると同時に、ポピュラーカルチャーとメディア、マンガミュージアム建築などの分析視点を提示した新書『マンガミュージアムへ行こう』岩波書店(岩波ジュニア新書、全215頁)を、2014年3月に出版することができたことである。本課題で得た成果を十分に用いて作成したものであり、ジュニア新書という中高生向けの形態をとっているが、研究分析的な視点のもとでミュージアム批評を展開している。特に北九州市マンガミュージアムや水木しげるロード、赤塚不二夫会館やベルギーのマンガミュージアムに関する分析は、本研究課題で得た空間分析の視点や手法を用いた分析を一般に分かりやすい形で行っており、本課題の重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本各地のミュージアム建築を調査し、インタビューなどでは順調に成果を出している。それらの記録なども現在まとめ作業に入っており、着実な進捗をみている。さらにシンポジウムや研究会なども定期的に進めることができており、今年度は東北で非常に充実したシンポジウムを行うことができた。しかも、3月に出版した書籍『マンガミュージアムへ行こう』は本課題研究の研究成果であると同時に、その社会還元でもある。調査では、韓国における富川漫画映像振興院の来館者トラッキング調査を行ったが、計画通りに実施することができた。そこでは韓国側のミュージアムスタッフや研究者らと非常に密に議論を行うことができただけでなく、調査成果の今後の公開や利用に関しても、十分な話合いを持つことができた。ポピュラー文化独自の博物館空間の利用方法他も整理が進んでいる。 以上から、順調に進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度であり、前年の調査で収集したインタビューデータをまとめることに加え、韓国の漫画映像振興院を4月~5月にかけて深く分析し、日本のマンガミュージアムとの比較や、来館者たちの行動の傾向などを浮き彫りにしたいと考えている。特に日本国内のマンガミュージアムは地方自治体によって設置された事例が多いが、韓国は国家的な政策などと関連しながら設置されている。そうした背景や側面がどのように来館者行動と関係するのかを分析する。 夏以降は、マンガミュージアムという博物館建築を整備建設・運営していく上での知見などをまとめながら、成果物を作成したいと考えている。特に、マンガミュージアム独自の展示方法や建築空間の利用方法を、項目や要素単位で整理し、マンガミュージアムを設計するための方法集を作成することを計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査地及び調査期間に若干の変更が生じたため。 本年度、国内のインタビュー調査の補てんすると同時に、調査にもとづく成果発表の成果物作成に用いる。
|