2013 Fiscal Year Research-status Report
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24656362
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
高橋 康夫 花園大学, 文学部, 教授 (60026284)
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Keywords | 琉球 / 建築史 / 都市史 |
Research Abstract |
1.「琉球建築史」の枠組: ①近年の琉球史研究、とくに国文学の時代区分論について、その構想、枠組、変化を把握する作業を実施し、②この作業と連動させて、建築史学・都市史学の視点から独自の時代区分の仮説を組み立て、充実する作業を継続した。 2.主要な建築類型および寺院・王城・集落・都市の空間構成の変遷過程: ①首里城正殿ほかの建築についてその様式、平面などを考察し、また沖縄本島のほか奄美大島や八重山も視野に入れて、グスクの変遷過程を追求した。②自然・歴史・文化のなかで住まいと集落の空間構成と変遷を捉える作業を継続し、また典型的な集落と首里・那覇の比較を行った。③仏教建築、神社本殿、道教の廟などについて、東アジアにおける建築文化の交流を視野に入れ、その様式と変遷を検討する作業を行った。④東苑・同楽苑・南苑(識名園)の空間構成とその変遷について、庭園史の成果を参照しつつ、検討した。 3.中国・朝鮮・日本との建築文化の交流: 琉球王国成立以降について、〈双対性〉の観点から、日本および中国との交流を検討した。前者では熊野信仰と神社建築、また住宅様式の伝来と実態、後者では道教の建築、華僑の住宅様式の伝来と実態の解明を試みた。 4.琉球建築の評価――固有性と普遍性の視点から: ①首里城正殿・南殿などの特異な平面形式や重層構造を生んだ要因を検討した。また琉球の建築の根底にある「グスク」(きわめて多義的なことば)について、国語学や考古学などの成果を踏まえ、建築史的な意義を再検討した。②東アジアさらに世界のなかで琉球建築を位置づけることを試み、琉球と日本、中国、韓国などの建築史との比較を通じて琉球建築の普遍的な特性を把握する作業を行った。比較の軸に11-12世紀の奥州藤原氏の「首都」平泉を加え、その特性の明確化を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果、とくに①前近代東アジア(日本・琉球・朝鮮・明・清)の建築・都市中心の歴史年表を作成したことによって、琉球建築史創成作業の全体的な見通しがよくなり、さらに②首里や那覇を描いた絵画史料を整理するなかで、首里・那覇のランドマークとなるような建築群の特徴が見えてきたことに加え、今年度の成果、とりわけ琉球王国の成立史の理解に関わって奥州藤原氏の「首都」平泉を比較の視軸に据えたことにより、さらに全体の見通しがよくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画(25年度以降の研究実施計画)に基づき着実に研究作業を進めるが、琉球建築史の創成を琉球国内のみならず、東アジア文化圏とも呼ぶべき地域に拡大して捉える必要があることをいつも念頭に置いて、研究の遂行にあたりたい。日本列島北方の「首都」平泉との比較は琉球にとって有益な成果をもたらすのではないかと期待される。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点などはない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じたのは、購入予定の図書が3月中に刊行されなかったことによる。 当該研究費は購入予定の図書の費用に充当し、26年度の研究実施計画、使用計画の変更はない。
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