2012 Fiscal Year Research-status Report
ハーフメタル性と高い相安定性を有する新規Мn基ホイスラー合金の探索
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24656366
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅津 理恵 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60422086)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Mn基ホイスラー合金 / ハーフメタル / 電子状態 / キュリー温度 / 結晶規則度 |
Research Abstract |
Mnをベースとしたホイスラー合金においてハーフメタル的電子状態を有し、スピントロニクスデバイス素子としての磁気特性も兼ね備え、さらに熱的安定性も高い強磁性材料の探索を目的として実験的研究を行っている。本年度は、理論的研究によってハーフメタル型電子状態を有することが予測されているMn2VAl合金の試料作製を行い、熱処理温度を変えることで結晶の規則度を制御し、それにより様々な磁気状態を示すことを明らかにした。 Mn2VAl合金はアーク溶解法により試料作製を行った。一般的に、より均一性の高い試料が得られる高周波溶解も試みたが、V(バナジウム)の融点が高すぎて坩堝と反応してしまうため、アーク溶解法を選択した。試料の組成は電子プローブマイクロアナライザーを用いて同定した。得られたインゴットを用いて示差走査熱量測定を行い、規則-不規則変態温度を調べたところ、L21相からB2相への規則-不規則変態温度は1076 K, B2相からA2相への規則-不規則変態温度は1098 Kであることが判明した。そこで、熱処理温度をそれぞれの相の存在領域となる1173, 1093 および673 K を選び、その温度より急冷して試料を得た。それぞれの試料において粉末X線回折測定を行ったところ、高い熱処理温度の順にA2, B2, L21相の規則度を有していることが分かった。それぞれの試料において5 Kにて磁化曲線の測定を行ったところ、A2相は反強磁性的様相を、B2相L21相は比較的飽和の早い強磁性的振る舞いを示すことが分かった。特に、L21相試料の飽和磁化の値は理論計算によって報告されている値とほぼ等しく、予測されているようなハーフメタル的電子状態を有していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、1年目である平成24年度に数種類のMn基ホイスラー合金の試料を作製し、それぞれについて試料の相状態を確認し、そして次年度に磁気的性質に関する実験研究を行うことを予定していた。しかしながら、Mn2VAl合金の組成制御がやや困難であったため、まずは理論研究の報告が存在しているMn-V-Al合金系に研究を集中することとした。組成制御の方法が確立してからは、化学両論組成を中心に幅広い組成範囲で試料を作製し、規則-不規則変態温度の組成依存性を調べ、Mn50V50-xAlxの大まかな状態図が得られた。この実験より得た規則-不規則変態温度の情報を基にA2, B2, L21相といった3種の規則度が異なる相を得ることが可能となった。磁化測定を行ったところ、磁気特性は規則度に対して非常に敏感であることが判明し、最も高い規則度を有するL21相において理論値とほぼ等しい飽和磁気モーメント1.9 μB/f.u.の値を持つことが分かった。 このように、規則度をうまく制御した場合、Mn2VAl合金は理論予測どおりハーフメタル的な電子状態を有していると示唆される。平成24年度に得た、以上の研究成果は7月に台湾にて開催される磁気に関する国際会議(ISAMMA-2013)にて発表を行うことが決定している。また、会議のプロシーディングスは査読付きの論文誌IEEE Trans. Magn.に掲載される予定である。このように成果も順調に出つつあり、2年の期間で最終的には研究の目的が予定通り達成される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はMn2VAlについてより詳細な磁気測定を引き続き行う。飽和磁気モーメントの測定結果より、ハーフメタル的な電子状態を有する可能性が期待されるため、電子状態を敏感に反映する磁気物性測定を中心に行うことを予定している。具体的には、飽和磁気モーメントの圧力依存性、スピン波分散係数の評価、強磁場磁化率等の測定である。これにより、Mn2VAlの電子状態に関して包括的な議論が可能となる。また、共同研究者に試料を提供することで、電子顕微鏡観察による組織観察を行い、磁化過程と組織との関連性を明らかにする。また、中性子回折測定の専門家とも共同研究を行い、各相における磁気配列を詳細に調べる予定である。そしてその後、平成24年度に遂行できなかったMn2VAl以外の合金系において同様な電子状態を有すると期待される合金の探索を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に執行したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。具体的には、試料の原料となる元素、坩堝、石英管、液体ヘリウム等の消耗品に400,000円、情報収集や成果発表のための国内旅費に400,000円、国際会議への発表参加に500,000円、論文投稿料、英文校正等その他として200,000円を計上し、合計で1,500,000円執行することを予定している。当初は実験補助としての謝金を400,000円計上していたが、実際の研究費が減額となったため、計上はしないこととした。平成24年度も謝金を執行しなかったが、ほぼ予定通りの進捗状況であったので、実験補助を計上しなくとも目的通り研究が遂行できるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)