2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656377
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶谷 剛 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80134039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 慶 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70360625)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 廃熱利用 / 電子・電気材料 / 焦電発電 / 強誘電体 / キュリー温度 / BTO |
Research Abstract |
本研究は強誘電体の自発分極Pの温度変化を利用した熱発電体の開発を行うものです。予め電場を加えて分極方向を揃えた強誘電体表面に温度変化によって電荷が溜まるという焦電現象を利用とするものです。この現象を利用した熱発電体に関する古い特許はありますが、失効しています。実用化を阻む主な問題点は次の通りだと思われます。 1.熱発電の熱源の温度(最高600℃最低100℃)を広くカバーできる高効率かつ安全で安価なものがないこと。 2.焦電効果は熱サイクル毎に弱くなる傾向があること。 3.結晶方位を揃えて、巨視的に現れる自発分極を材料本来の持つべき値にすることが容易ではないこと。 本年度の研究は焦電発電体の利用可能温度領域を拡大し、熱サイクルによる発電物質の劣化を少なくする材料開発でした。具体的には、キュリー温度135℃のBaTiO3を熱発電物質に考え、120℃以下の領域での廃熱回収を考えました。構成物質であるバリウム(Ba)の一部をイットリューム(Y)ないしはカルシューム(Ca)と置換してキュリー温度の変化を測定しました。研究の結果前者の置換でキュリー温度が凡そ2℃上昇し後者の置換でキュリー温度が1℃ほど低下しました。焦電性能に係わる自発分極は前者を1%置換した試料で最大値を示しました。後者の場合はキュリー温度は多少減少したものの、10%置換体では焦電性能は置換前の14倍になりましたので、材料開発はほぼ成功したものと思われます。なお、この研究成果は本年6月末の熱電物質国際会議(ICT2013)で発表予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は廃熱発電用物質として、従来研究してきた熱電半導体以外にも強誘電体が利用できる事に着目し、実用に至る道筋を見出そうとするものです。実用に至るためには、材料となる発電物質が高性能かつ無毒であり、安価であり、製造が容易で大量生産可能であることが必要です。従来の熱電発電物質は有毒なTeを含んでいたり、特定の国にしか産出しないものを含んでいたりしており、大量消費に向かないものでした。本研究で取り上げたBaTiO3は本来高性能かつ無毒で安価と言う特徴をもっており、さらに誘電分極が大きく、焦電発電に向いたものでした。しかし、実験を重ねた結果、この方法は熱サイクルを繰り返すと発電性能が著しく低下すると言う困った性質をもっている事が分かりました。その原因は、1. 強誘電体は誘電分極の向きが90度ないし、60度お互いに違う分域と呼ばれる領域に分かれており、一旦高い電界を加えて方向を揃えても、熱サイクルを加えると元に戻りやすいこと。2. 分域構造は結晶の大きさが小さい程細かくなること。3. 分域構造が元の不揃い状態の戻る早さは結晶が小さい程早いこと。4. 誘電分極を大きくするには試料の結晶方位を分極方向に一致させることが望ましいこと。 これらの特徴を本年度の研究によって突き止めることができました。得られた知見を次年度の研究に生かすことになります。さらに、取り上げたBaTiO3の材料開発も行って、カルシューム(Ca)をバリウム(Ba)に対して10%置換した試料では見かけ上誘電分極が14倍にもなり、実用に一歩近づきました。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、実用的な廃熱発電デバイスの製作実験を行います。前年度明らかになった、焦電発電の効率化を阻む要因を次の方法で取り除く計画です。本年度は材料開発を従とし、焦電デバイス開発を目指します。主な方策として、結晶粒の粗大化、誘電分極に沿った結晶方位の整列、非晶質材料から誘電材料の細い単結晶を成長させ誘電分極率の高いデバイスを開発することを目指します。具体的には次の通りです。 1. キュリー温度の高い強誘電材料を複合して120℃付近でもBaTiO3(BTO)の分域構造が失われないような電場を維持する構造を造る。 2. 一方向凝固法によりBTO結晶の結晶方位を揃えると同時にできるだけ大きくして分域を100ミクロン以上にする。 3. 前年度開発したカルシューム(Ca)を10%添加した材料を使った結晶方位制御したデバイスを作成する。 4. ガラス材料にBTOを混合して溶解し、BTOの結晶化温度付近で細いBTO結晶を成長させ細い結晶の焦電デバイス作成を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)