2012 Fiscal Year Research-status Report
物理気相成長法による超高濃度ボロンドープナノダイヤモンド膜の創製と超伝導特性
Project/Area Number |
24656389
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉武 剛 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40284541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 亜希 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50590551)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノダイヤモンド / 薄膜 / 超伝導 / ボロン / アルミニウム / ドーピング / レーザーアブレーション法 / 同軸型アークプラズマ堆積法 |
Research Abstract |
レーザーアブーレーション(PLD)法および同軸型アークプラズマ堆積(CAPD)法によりボロンおよびアルミニウムをドープしたナノ微結晶ダイヤモンド膜の作製を行った.両方法ともに,ドーピングを施したグラファイトターゲットを用い膜成長を行うことで,ドープ膜を形成した. PLD法では,0~20 at.%までのボロンドープターゲットを用いて膜成長を行った.膜中のボロンの化学量論比はX線光電子分光法により見積もった.膜中の量論比はターゲットに比べて約30%小さい値となり,20 at.%のターゲットを用いた場合で約14at.%であった.膜中のダイヤモンド結晶の有無および粒径は放射光を用いたX線回折により評価した.ボロンのドープにより,ダイヤモンドの結晶粒径は5から23 nmと増加し,またダイヤモンドの格子定数は粒径が大きくなるほどバルク値に近づくことが明らかになった.PLD法の膜の場合,ボロンはダイヤモンド格子内には存在せず,粒界に主に偏在している可能性が高い. CAPD法では,7.4 at.%までのボロンドープを行った.ダイヤモンド結晶の粒径は,アンドープの2 nmから82 nmへと大幅に増大することが分かった.また,PLD法の場合と異なり,ボロンドープにではダイヤモンド結晶の格子は約1.5%膨張し,価電子半径がカーボンより大きなボロンが格子中に存在していることが示唆された.アルミニウムに関しても,ドープを行い23 nmまで粒径が増大すること,およびダイヤモンド格子の膨張が観測され,ボロンの場合と同様に,ダイヤモンド格子中にアルミニウム原子が存在することが示唆された. 超伝導量子干渉素子(SQUID)による磁化率測定により,超伝導現象の発現を調べている.サンプルの体積が測定にとって十分ではなく,ノイジーな結果しか得られていない.現在体積を増やしての測定に取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製に関しては,ボロン及びアルミニウムのドーピングにより,多彩な試料が得られた.PLD法ではナノダイヤモンド結晶の主に粒界にボロンの偏在した試料が,CAPD法ではダイヤモンド格子が膨張することからダイヤモンド格子中にドーピングされた試料が得られると考えられる.幸運にも同じドープ量でも異なるドープ状態の膜を作製可能となった.超伝導発現の起源を考える際に極めて有効である.ダイヤモンド格子へのドーピングのみならず粒界へのドーピングも物理的に大変興味深い.ヘビードープを達成する目標に関しても,14 at.%までのドープ量でナノダイヤモンド膜の成長を実現できた.超伝導特性を調べるに値する特徴を持った試料を作製するための基盤技術と知見を得ることが出来た. SQUIDによる極低温での磁化率測定に早々に取りかかることが出来た.測定における技術的問題点を洗い出すことが出来た.年度後半は,液体ヘリウム不足の問題により,測定が頻繁に出来なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は14 at.%近くまでドープしてナノダイヤモンド薄膜が成長することを確認したので,H25年度は更なるヘビードープにチャレンジする. CAPD法で作製したドープ膜では,X線回折測定で消滅則に反した複数のピークが観測された.その結果からリュードベリ解析を行うことによりサイト位置を本格的に解析する.ナノダイヤモンド膜は微結晶の集合体であるので,ドーパントがどこに存在しているかが極めて重要である.今年度は,透過型電子顕微鏡(TEM)により膜の微細構造を,付属するエネルギー分散型X線分光法(EDX)で膜中でのボロンの空間分布を,更には付属する電子エネルギー損失分光法(EELS)により結合状態を明らかにする. 予定より早くSQUIDによる超伝導特性の評価に着手できたが,測定には今まで薄膜として作製していた体積では不十分で,一桁大きな量は必要そうである.今年度は厚い膜を作製するか,あるいは厚くなれば基板から剥離するので数枚の膜を作製後に基板から剥いで粉末化して測定を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費,旅費,共同利用施設の装置使用料に使用する. 具体的には,消耗品ではヘビードープを行うためのターゲット,エキシマレーザー用のネオン,ヘリウム,アルゴンガス,また同軸型アークガン用の消耗品である碍子が挙げられる. 旅費として,国内学会への旅費を挙げる.国際学会へは他の予算,例えば公的助成金等に申し込み獲得を目指す. 共同利用施設の装置使用料では,学内のTEM,走査型電子顕微鏡(TEM),九州工業大学のSQUID,九州シンクロトロン光研究センターのBL12と15の使用料が挙げられる.九州シンクロトロン光研究センターの使用に関しては,文部科学省先端研究施設共用促進事業に申し込む予定であり,採択されれば一日約1万円で使用できる.
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