2013 Fiscal Year Research-status Report
物理気相成長法による超高濃度ボロンドープナノダイヤモンド膜の創製と超伝導特性
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24656389
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉武 剛 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40284541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 亜希 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50590551)
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Keywords | ナノダイヤモンド / 薄膜 / 超伝導 / ボロン / アルミニウム / ドーピング / レーザーアブレーション法 / 同軸型アークプラズマ堆積法 |
Research Abstract |
レーザーアブーレーション(PLD)法および同軸型アークプラズマ堆積(CAPD)法を用いて,ボロンのドープ量を変化させたナノ微結晶ダイヤモンド膜の作製を行った.両方法ともに,ドーピングはボロンを予めグラファイトターゲットに含有させておくことにより実現した. PLD法では最大約14at.%までドープしたが,ダイヤモンドの格子定数はほぼバルク値であり,また吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)測定からボロン原子はナノダイヤモンド結晶の粒界を終端する水素原子と置き換わっている可能性が高いことが分かった.超伝導量子干渉素子(SQUID)による磁化率測定により,超伝導現象の発現を調べた.以前はサンプルの体積が測定にとって十分ではないためか,ノイジーな結果しか得られていない.今回,体積を増やして測定を試みたが超伝導状態の明確な出現は観測できなかった. CAPD法では,7昨年度の研究で7.4 at.%までボロンドープを行うことによりダイヤモンド結晶の粒径がアンドープの2 nmから82 nmへと大幅に増大することが分かっている.また,PLD法の場合と異なり,ボロンドープにではダイヤモンド結晶の格子は約1.5%膨張し,価電子半径がカーボンより大きなボロンが格子中に存在していることが示唆されている.今回,サンプルの体積を増やして測定を行っているが明確な超伝導状態は観測できていない.測定用の試料の体積をさらに増やす必要と,ナノダイヤモンド膜の構造のコントロールを並行して行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製に関しては,本年度は詳細なボロンドーピングにより,多彩な試料が得られた.PLD法ではナノダイヤモンド結晶の主に粒界にボロンの偏在した試料が,CAPD法ではダイヤモンド格子が膨張することからダイヤモンド格子中にドーピングされた試料が得られると考えられる.幸運にも同じドープ量でも異なるドープ状態の膜を作製可能となった.超伝導発現の起源を考える際に極めて有効である.ダイヤモンド格子へのドーピングのみならず粒界へのドーピングも物理的に大変興味深い.ヘビードープを達成する目標に関しても,14 at.%までのドープ量でナノダイヤモンド膜の成長を実現できた.超伝導特性を調べるに値する特徴を持った試料を作製するための基盤技術と知見を得ることが出来た. SQUIDによる極低温での磁化率測定では,試料の体積不足のためデータがノイジーで,信頼性のある結果がまだ得られていない.今後,薄膜の膜厚を大幅に増やして,測定精度を上げていく..一方で,薄膜成長条件を変えて,ドーパントの侵入あるいは置換位置,あわよくば格子内のサイトをコントロールできないかを探索する.
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究で評価の値するヘビードープの膜は得られているので,SQUIDでうまく磁化測定できるように,サンプルの体積を増やす等の努力を行う.厚くなれば基板から剥離するので数枚の膜を作製後に基板から剥いで粉末化して測定を行う. CAPD法で作製したボロンドープ膜では,作製条件によりナノダイヤもインドの結晶構造および化学結合構造が大きく変化することが分かっている.透過型電子顕微鏡(TEM)により膜の微細構造を,付属するエネルギー分散型X線分光法(EDX)で膜中でのボロンの空間分布を,更には付属する電子エネルギー損失分光法(EELS)により結合状態を明らかにする.
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