2012 Fiscal Year Research-status Report
高効率熱磁発電へ向けた異常ネルンスト効果の萌芽研究
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24656402
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桜庭 裕弥 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10451618)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 異常ネルンスト効果 / 熱電発電 |
Research Abstract |
異常ネルンスト効果を利用した熱電発電技術を試験するために、垂直磁化させた磁性薄膜に横方向の熱流を加える測定系と、面内磁化させた磁性薄膜に縦方向の熱流を加える測定系を作製した。垂直磁気異方性を持つことでしられる(001)配向FePtとMnGa薄膜の異常ネルンスト電圧を測定した結果、その異常ネルンスト係数の符号がそれぞれ正と負であり、絶対値はほぼ同等の大きさ(0.5-1μV/TK)をとることが分かった。これを利用し、FePtとMnGaの細線を交互に並列に直列接続した熱電対列構造を電子ビームリソグラフィーによって作製し、期待通り熱電対列の数に比例して電圧が増大することを確認した。またFePtのみを利用した熱電対列においても、基板温度を変えたFePt細線を交互に並べることによって隣接するFePtに保磁力差をつけることで反平行な磁化状態を実現し、直列電圧が増大できることを示した。従来のゼーベック効果を用いた熱電発電ではゼーベック係数の符号のみが熱流方向に対する電界の方向を決定するが、異常ネルンスト効果では磁化方向によって電界方向が制御できることが大きな利点であることを示した。また、(110)配向させた面内磁化させたFePt膜を作製し、Cr細線との組み合わせによって直列接続することによって、面直方向の熱流印加で同様に直列電圧を増大させられることを示した。この場合、FePt膜の膜厚を変化させてもFePt膜内の温度勾配が変化しないことから、得られる異常ネルンスト電圧は同じであった。このことは、発電素子とした場合に素子の内部抵抗を強磁性体の膜厚で制御できることを意味し、有用な特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FePtやMnGa等のL10型規則合金の薄膜の異常ネルンスト効果について系統的な実験を行い、これにより異常ネルンスト効果の起源に関する新たな知見を得ることができた。またFePtとMnGaの異常ネルンスト係数が逆符号になることから、これらの細線を並列に並べた熱電対列を作製し、期待した通りの直列電圧増大を観測することができた。熱電対列の作製については当初は次年度に予定しており、順調に研究を進めることができた。またより実用的な熱電発電素子に構造に近い面直方向に熱流を印加する測定系の作製、及びこれを利用した熱電対列の電圧測定を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験によって異常ネルンスト効果を利用した熱電対列が期待通りに機能することは実証された。より実用レベルの出力を実現するためには、温度勾配に対する発電出力を増大させるための材料やミクロン・ナノレベルでの積層構造やグラニュラー構造等を見つける必要がある。異常ネルンスト効果の起源は異常ホール効果の起源と関連があることから、従来の異常ホール効果の研究から、材料探索を行う。より高い実用性を求めるために最終的にはバルクでのプロセスへ応用可能なことやより安価で毒性のないユビキタス元素を利用した材料探索を集中的に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度から所属研究機関が変更になるためにこれまで利用してきた電磁石を利用できなくなる。従って、新たな所属機関の電磁石を利用した熱流印加の測定系を立ち上げる必要がある。そのためのプローブシステム等を購入する。また新たな磁性材料薄膜の異常ネルンスト効果について評価するために、Fe,Co,Ni等の磁性材料ターゲット、Bi,Irなどの重元素ターゲット、またグラニュラー系材料の作製のためにSiOなどのターゲットが必要である。これらのスパッタリングターゲット材料を研究の進捗に合わせて購入する。
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