2012 Fiscal Year Research-status Report
第5族遷移金属水素透過膜の高温使用をめざした新規な表面コーティング層の開発
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24656408
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉成 修 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10134040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水素透過 / 水素拡散 / 水素溶解 / 酸化タングステン / 5族金属 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
【WO3コーティングの作製条件の探索】電気めっき法によるV金属表面へのWO3コーティングにおいて、WO3の粒子サイズが電流密度に依存することが明らかになった。透過膜に適する0.1μm程度の粒径は電流密度1.0mA/cm2のときに得られた。 【コーティング膜の構造や熱安定性の評価】WO3めっき膜は成膜直後にはアモルファス構造であるが、500℃、1時間の熱処理により水素透過に適した単斜晶結晶に変わることが明らかとなった。また、WO3成膜後、表面にPdコーティングを行った試料について500℃、4時間の焼鈍をした試料のオージェ電子分光深さ解析を行い、その結果、WO3相がVとPdの相互拡散を抑制していることが確認された。 【水素透過装置の改良と水素透過の測定】大気圧付近の水素圧力での透過試験を行えるように、水素透過側に微小流量計を増設した。現在、流量計の校正等の作業を行っている。 【第一原理計算によるWO3の水素の存在状態の解明】第一原理計算により、WO3中の水素の存在状態および溶解エネルギーを計算した。水素は酸素八面体を構成している酸素の1つとO-H結合を作っておりその安定度は酸素八面体の傾斜の分布に大きく依存していることが明らかになった。また、水素の拡散移動は酸素八面体の変位(首振り運動)と密接に関連しており水素の移動とともに酸素八面体が水素の方向に全体的に傾斜するようすが明らかになった。金属中の水素の場合には、拡散のサドルポイントにおける水素の感じるポテンシャルは拡散元と拡散先の位置がミニマムとなるようなダブルポテンシャルであるのに対し、WO3の場合は水素位置がミニマムとなるようなポテンシャルとなっている。これは、水素の拡散機構が金属中の場合とは大きくことなることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WO3コーティングの作製条件の探索において、相互拡散防止のためのコーティングの最適条件がほぼ得られた。 また、実用透過試験温度(500℃程度)で安定してコーティング層を維持できる見通しがつくとともに、実用に近い条件で水素透過測定を行うことができる見通しがついた。 さらに、第一原理計算によるWO3の水素の存在状態および水素の拡散現象に関して新しいい知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
【実用水素圧力下でのコーティングの耐久試験】実用水素透過圧力(たとえば透過膜上流側2気圧、下流側1気圧)のもとで水素透過を繰り返し行い、透過量のサイクル依存性の測定、表面コーティング層の組織変化等の観察などを行うことで、コーティングの耐久性を評価する。また、実用化が期待されている5族合金膜(V-Ni合金、Nb-W合金など)にコーティングを施し、このコーティングの有効性を確認する。 【第一原理計算によるWO3相中の水素拡散および表面での水素反応の評価】24年度に引き続き、WO3相中の水素拡散に関する計算を引き続き行うとともに、表面での水素解離反応、Pdの触媒効果の計算も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、以下のように2種類に分けられる。 【実用水素圧力下でのコーティングの耐久試験】研究費は、試料である合金の原料購入、透過試験のための水素ガス、真空配管等の消耗品として使用する。 【第一原理計算によるWO3相中の水素拡散および表面での水素反応の評価】表面に関する計算は、計算時間が大きいので、コンピュータを増設のために研究費を使用する。
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