2013 Fiscal Year Annual Research Report
第5族遷移金属水素透過膜の高温使用をめざした新規な表面コーティング層の開発
Project/Area Number |
24656408
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉成 修 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10134040)
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Keywords | 水素透過 / 水素拡散 / 水素溶解 / 酸化タングステン / 5族金属 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
【タングステン酸化物(WO3)コーティングをした5族金属の水素透過】5族金属に種々の条件でWO3をコーティングして水素透過を行った。これにより、WO3のみのコーティングでは水素の透過が起こらず、Pdをさらにコーティングする必要があることが明らかになった。また、繰り返しの透過測定によりPdがはがれおちるので、WO3とPdの接合をより強力なものにする必要があり、これは今後の課題である。 【WO3の水素溶解度】市販のWO3粉末をメカニカルミリングした試料を用い、水素ガスとの反応の温度依存性を調べたところ、高温ほど水素を多量に吸蔵することがわかった。しかし、Pdを少量加えてミリングした試料では、低温ほど水素を多量に吸蔵することが明らかになった。このことから、Pdを添加しない試料では表面反応が水素吸蔵の律速になっていること、また、WO3本来の水素溶解反応は発熱型であることが明らかになった。 【WO3中の水素の拡散】第一原理計算によりWO3中の水素の安定位置およびジャンプの遷移状態における水素のポテンシャルを計算し、それを用いてシュレディンガー方程式を解くことにより、水素ジャンプの遷移状態におけるジャンプ頻度を求めた。この結果、水素は低温では1次元的な拡散をし、その活性化エネルギーは0.1eV程度であることが明らかになった。これは、欠陥のない本来のWO3中での水素の拡散はPd中よりも速く、室温付近でも試料中を移動できることを示している。このことから、欠陥の少ないWO3を作製することができれば、水素透過膜に限らずセンサーや光デバイスなどへの応用が広がることが期待できることがわかる。
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