2012 Fiscal Year Research-status Report
高分子系ポーラス体を用いた衝撃変形応答の可視化によるエネルギー吸収能改善
Project/Area Number |
24656412
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向井 敏司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40254429)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / ポーラス材料 / 高速変形可視化 / 衝撃エネルギー吸収 |
Research Abstract |
空隙を複合化したポーラス体やセル構造体は衝撃エネルギー吸収能を有する構造材料として注目されている。本研究では、衝突時に物体へ負荷される応力が波として伝播する様子をサンプリング時間1μ秒の経時変化として捕捉するための可視化を試みた。平成24年度の実施内容を以下に記す。 (1) シャドーグラフ衝撃変形可視化システムの構築: ホプキンソン棒法試験機および高速度ビデオカメラを活用し、シャドーグラフ法を用いて、試験片の変形の様子を撮像するためのシステムを構築した。PMMA試験片について、ひずみ分布を観察するためのシステムを構築した。 (2) PMMAポーラス体の衝撃変形シミュレーション: 可視化実験に使用するものと同一形状を有する中実およびポーラス構造立方体を3次元でモデル化し、陽解法・有限要素シミュレーション:LS-DYNAを用いて、高速圧縮荷重が作用する場合の応力分布を描画した。なお、衝撃試験と条件を統一するため、剛体壁の移動速度は、ポーラス体試験片の高さ10mmに対して、公称ひずみ速度1000 1/sに設定した。今年度は中実立方体の変形シミュレーションを実施し、変形とともにひずみ分布の移動が描画され、応力波の伝播を示唆する結果を得た。 (3) PMMAポーラス体の衝撃試験と変形応答の可視化: 今年度は貫通孔のない中実試験片および貫通孔を1個設けたポーラスモデル試験片について、衝撃圧縮変形挙動のリアルタイム観察及び変形応答解析を実施した。中実試験片ならびに貫通孔有り試験片について、衝撃圧縮荷重を作用させたところ、ひずみが集中した箇所が影となって現れ、試料中を音速に近い速度で伝播することがわかった。また、孔有り試験片では、変形と共に孔部付近の影領域が拡大し、荷重作用方向に対して、約45度の角度でき裂の核が形成されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、衝突時に物体へ負荷される応力が波として伝播する様子をサンプリング時間1μ秒の経時変化として捕捉するための可視化に取り組む。平成24年度末における達成度と状況を以下に記す。 (1) シャドーグラフ衝撃変形可視化システムの構築(達成度:80%): 本研究課題の目的に対応するためには、衝撃変形可視化システムの構築が肝要である。高速度ビデオカメラを用いて、衝撃圧縮変形中のPMMA試験片を撮像した結果、塑性変形開始点では局所的にひずみが大きくなった箇所が影となって現れ、試験片中を伝播することを確認した。また、影の移動速度を計算したところ、PMMA中の弾性波伝播速度に近い値であったため、構築したシステムが当初の期待通りに作動しているものと考えられた。 (2) PMMAポーラス体の衝撃変形シミュレーション(達成度:30%): 変形中のひずみ分布を明確にするため、陽解法・有限要素シミュレーションを実施した。平成24年度は貫通孔を有していない中実材料の変形シュミレーションを実施し、変形とともにひずみ分布が移動し、応力波の伝播に対応する結果が得られた。貫通孔を有する試験体の変形シミュレーションについては、引き続き、次年度に実施する予定である。 (3) PMMAポーラス体の衝撃試験と変形応答の可視化(達成度:50%): 貫通孔のない中実試験片および貫通孔を1個設けたモデル試験片について、(1)で構築した試験システムを用いて、衝撃圧縮変形挙動のリアルタイム観察及び変形応答解析を実施した。その結果、変形ととともにひずみが集中した箇所が影となって伝播するため、変形初期には材料が不均一に変形することを明らかにした。貫通孔の数を増やした試験片について、引き続き同様の試験を実施し、ポーラスモデルの変形可視化を行う予定とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成25年度は今年度に引き続き、以下を実施する予定である。 (1) PMMAポーラス体の衝撃試験と変形応答の可視化: 前年度に引き続き、ポーラスモデル試験片の可視化実験を行う。平成25年度には、貫通孔の数を2個、4個、9個設けた試験片について、変形応答の可視化を実施する。 (2) PMMAポーラス体の衝撃変形シミュレーション: 上記(1)と同一の貫通孔を設けたポーラス体モデルについて、前年度と同じ要領で衝撃圧縮変形シミュレーションを実施する。 (3) 実験および解析結果の検証と最適ポーラス構造の整理: 2年間を通じて得られた結果から、ポーラス体中の応力波伝播挙動を整理し、実験により可視化されるひずみ分布の経時変化から、シミュレーションで導出された試験片内部における応力分布の妥当性を検証する。また、計算により算出される端面での反力と応力波解析から算出される試験片の両端面における応力の経時変化を比較し、シミュレーションの妥当性を確認するとともに、破壊に至るまでのエネルギー吸収能が高いポーラスモデルを特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度に引き続き、有限要素シミュレーションに用いるANSYS/LS-DYNAを一年間レンタルするための経費を計上する。また、光学系機器を追加購入し、シャドーグラフによる可視化実験を当初の予定数について実施する。また、衝撃試験を実施するための試験治具および試験片加工費を計上する。 なお、平成25年度は最終年度であることから、研究成果を国内の学会および国際会議にて発表するための経費を計上する。
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Research Products
(2 results)