2012 Fiscal Year Research-status Report
逆変態γ層の形成による高強度ステンレス鋼の水素脆化防止
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24656415
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高木 節雄 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90150490)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水素脆性 |
Research Abstract |
当研究では優れた耐水素脆性特性を有する高強度ステンレス鋼の創成という目的で実施している。その為には高強度を有するマルテンサイト組織を主体とした高強度ステンレス鋼の表面にのみfcc構造を有するオーステナイト組織を皮膜状に形成させるという組織制御法を提案した。H24年度においては市販のSUS304棒材に線引き加工を施し、様々なマルテンサイト量を有するサンプルの作製に成功した。また、その硬度は加工誘起マルテンサイト変態を殆ど生じないSUS316Lのそれと比べ大きく上昇したことから、SUS304材においては伸線加工に伴う加工誘起マルテンサイト変態により高強度化が達成されていると判断できる。さらにその後、高周波加熱による急速加熱・冷却を短時間で行うことにより、試料表面にのみオーステナイト皮膜を形成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標としては高強度かつ耐水素脆性特性に優れたステンレス鋼の創成であり、本年度では加工誘起マルテンサイト変態を利用した高強度化を達成した。またその後、表層近傍のみオーステナイト皮膜を形成することに成功し、これによって耐水素脆性特性も向上していると期待される。更に適用した鋼種はSUS304と一般的に広く普及しているステンレス鋼であることから、実用展開まで視野に入れた技術開発という面においても、当初の狙い通りの成果が得られていると考えられる。よって本年度の達成度は②おおむね順調に進展している とさせて頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、本年度は狙いの組織制御を達成したため、次年度ではその耐水素脆性特性評価に重きを置いて、オーステナイト皮膜の厚みの測定や水素脆化挙動の調査を行う。方法としては一定のオーステナイト皮膜厚みを有する試料に対し、種々の時間水素チャージを施す。その時の水素吸蔵量は定速加熱式の水素ガス分析装置を用いて温度と放出水素量との関係で測定し、その積分地で評価する。そして、水素吸収量とγ皮膜の厚さとの関係を求め、水素吸収を効果的に抑制するために必要なγ皮膜の臨界厚さを決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費用としては主として水素チャージに係る消耗品および水素吸蔵量測定の際の定速加熱式の水素ガス分析装置に係る諸経費が発生すると考えられる。また、研究成果については学会等で発表予定であり、そのための旅費が経費としてあげられる。
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Research Products
(2 results)