2013 Fiscal Year Annual Research Report
逆変態γ層の形成による高強度ステンレス鋼の水素脆化防止
Project/Area Number |
24656415
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高木 節雄 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90150490)
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Keywords | 水素脆性 |
Research Abstract |
当研究では優れた耐水素脆性特性を有する高強度ステンレス鋼の創成という目的で実施している。前年度においては市販のSUS304棒材に線引き加工を施し、加工誘起マルテンサイト変態を生じさせることにより、高強度化を達成した。またその後、高周波加熱による急速加熱・冷却を短時間で行うことにより、試料表面にのみオーステナイト皮膜を形成することに成功した。このオーステナイト皮膜はfcc構造を有しており、水素脆化の原因となる外部からの鋼中への水素侵入を抑制することが期待できる。そこで当該年度では、創成した高強度ステンレス鋼に対し、水素チャージを施した後、定速加熱式の水素ガス式分析装置により鋼中の水素吸蔵量を測定した。その結果、表面にオーステナイト皮膜を形成していないステンレス鋼は多量の水素が鋼中に侵入しているのに対し、同様の条件で水素チャージを施したオーステナイト皮膜を有するステンレス鋼は、ほとんど水素が侵入していないことが判明した。 この結果から、表面にオーステナイト皮膜を形成する事により、水素吸蔵を著しく抑制させ、優れた耐水素脆化特性を有する高強度ステンレス鋼の創成が実現されたと考えられる。 また、本研究で行った水素チャージ条件において、水素はマルテンサイト中を約3cmも試料内部に拡散するのに対して、オーステナイト皮膜中では約45μmしか拡散できないことが拡散シミュレーションにより算出した。このことは、本研究の条件においてオーステナイト皮膜は数十μm程度であっても、鋼中内部への水素の侵入を抑制し、水素脆化を防止することを示している。本研究成果は、使用する水素環境における条件に合わせて、適切な厚みのオーステナイト皮膜を形成することで、強度を低下させることなく、耐水素脆化特性を有するステンレス鋼の実用化に繋がるものである。
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