2012 Fiscal Year Research-status Report
高温高圧水中での水素連続チャージ技術の開発と水素誘起加速酸化機構の解明
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24656418
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
駒崎 慎一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (70315646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 吉隆 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (90370311)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低炭素オーステナイト系ステンレス鋼 / 酸化 / 水素 / 水素誘起加速酸化 / 高温高圧水中 / 酸化皮膜 / 空孔濃度 |
Research Abstract |
本研究課題では,軽水炉模擬環境中での低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の水素誘起加速酸化(HAO)のメカニズムを明らかにすることを目的として,高温高圧水中での酸化特性に及ぼす水素フラックス,暴露時間,環境因子,試験片表面性状などの影響を系統的に調査し,HAOに関する実験データを蓄積する.加えて,最新鋭の高性能分析装置を用いて金属/酸化物反応拡散界面をナノレベルで詳細に解析するとともに,皮膜のインピーダンスや接触抵抗も測定し,HAOメカニズムの解明に資する. 平成24年度は,引き続き低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の水素誘起加速酸化データを蓄積するとともに,高温高圧水中において水素添加量増加に伴い酸化速度定数が増加し,内層酸化皮膜中のCr濃度が減少することを改めて確認した.さらに,HAOのメカニズムについて検討するため,電気化学インピーダンス測定を実施し,水素添加に伴う空孔濃度の変化について調査した.その結果,水素添加によって内層酸化皮膜中の空孔濃度が増加することを実験的に明らかにするとともに,内層皮膜中の空孔濃度とCr濃度に基づき酸化速度定数を算出する式を新たに提案した.このような空孔濃度増加とCr濃度低下によって内層皮膜中の金属イオン透過量が増すのが、HAOの原因であると結論づけた.なお,もう一つの研究目的である「高温高圧水中にあるミニチュアチューブ試験片へ水素を連続的に陰極チャージできる試験技術の開発」に関しては,予算の関係で未だ完了していないため平成25年度に引き続き検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「高温高圧水中にあるミニチュアチューブ試験片へ水素を連続的に陰極チャージできる試験技術の開発」に関しては未だ完了していないが,空孔濃度増加とCr濃度低下によって内層皮膜中の金属イオン透過量が増すのが、低炭素オーステナイト系ステンレス鋼の水素誘起加速酸化の原因であることを突き止めたため
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き,「高温高圧水中にあるミニチュアチューブ試験片へ水素を連続的に陰極チャージできる試験技術の開発」を目指すとともに,高性能分析装置を用いて水素誘起加速酸化材の金属/酸化物反応拡散界面をナノレベルで詳細に解析し,さらには皮膜のインピーダンスや接触抵抗も測定しHAOメカニズムの解明に資する.加えて,極低温からの水素昇温脱離分析を試み,低炭素オーステナイト系ステンレス鋼中および酸化皮膜中の水素の存在状態について詳細に調査するとともに,SCC初期き裂発生に及ぼすHAOの影響を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「高温高圧水中にあるミニチュアチューブ試験片へ水素を連続的に陰極チャージできる試験技術の開発」が完了しなかったため,次年度使用研究費が生じた.平成25年度は,当該研究費を用いて,極低温から水素昇温脱離分析が可能な試験装置の整備等を行っていく予定である.本試験装置の使用により鋼中および酸化皮膜中の水素の存在状態が明らかになれば,HAOのメカニズムがより一層明確になるものと期待される.
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