2012 Fiscal Year Research-status Report
無機・有機の融合によるナノバブル分散強化(BDS)合金の創製と強化機構の解明
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24656425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鵜飼 重治 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00421529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 直子 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40512489)
阿部 陽介 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学部門, 研究員 (50400403)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノプロセス |
Research Abstract |
従来の金属材料は母相中に硬い第2相を分散して強化しているのに対して、ガス気泡(バブル)をナノスケールで分散させて強化することを狙った研究である。ナノスケールのガスバブルの作製には、有機高分子(PMMA)の熱分解ガスを利用する新規試みである。 今年度はFe金属粉末とPMMA粉末のメカニカルミリング処理と放電プラズマ焼結を利用して、Fe金属中に平均直径16nmのナノバブルを作製し、同様の方法で作製したPMMAを含まないFe金属の硬さ測定値との比較から、ナノバブルによる降伏応力の増加分を見積った。この値は透過電子顕微鏡(TEM)で求めたナノバブルの分散間隔と体積率から算出した分散強化応力と概ね合致することを確認した。 新たにCu金属を対象として、PMMAの添加量、放電プラズマ焼結温度と加圧力をパラメータにナノバブルの作製を試みた。Cuの融点は1085℃とFeに比べて低いことから、比較的低い温度での粉末焼結が可能である。今回は700℃、45MPa、2時間の条件で放電プラズマ焼結を行い、平均直径14nmで体積率1.3 vol%のナノバブルをCu金属中に作製することに成功した。αFeの結晶構造は体心立方であるのに対し、面心立方構造であるCuにおいても、硬さ測定から求めた降伏応力はTEM観察で求めたナノバブルの分散間隔と体積率から算出した分散強化応力と良い整合性を示すことを確認した。 分子動力学(MD)を利用したシミュレーション解析に関しては、αFeを対象にPMMAの熱分解ガスを高圧ヘリウムガスで模擬することにより、ナノバブルと転位の相互作用を解析可能なシステム整備を行った。これを用いてαFe中でのナノバブルと刃状転位の相互作用を解析した。ナノバブルの直径を5nmとし、0K、100K、300K、500Kでの解析を行い、運動転位がナノバブルを通過するときの転位の張り出し角度や臨界応力を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である今年度は、先行研究結果に基づきFe中にナノバブルを分散させた試料を作製し、ナノバブルよる分散強化応力は従来から知られている硬質相による強化応力と同等であることを見出したことは重要な成果である。ナノバブルによる分散強化は硬質分散相と同様の手法で評価できることを実験的に検証したものとして評価される。 有機ポリマーの熱分解ガスを利用したバブル分散強化(BDS)金属の作製がFe基のみならずCu基にも適用できることを示し、その適用範囲を拡張した。BDS金属の作製条件は、その物性(融点など)に対応して最適条件を選定する必要がある。Cu基において最適な放電プラズマ焼結条件を見出し、通常の硬質相による分散強化応力と同等の強化機能を発揮するCu基BDSを実現することができた。 ナノバブルによる分散強化の発現機構を解明するための分子動力学シミュレーション解析については、転位の張り出し角度や臨界応力を実験結果と対比して評価できるレベルにまで解析システムを整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
BDS合金の作製に関しては、Cu基BDSを対象にPMMA添加量をこれまでの5vol%を中心に1vol%、10vol%、20vol%とバブル体積率を変化させた試料を作製する。それらの試料のX線小角散乱と中性子小角散乱、及びTEM観察を行い、ナノバブルのサイズ分布を正確に解析して、サイズ分布とPMMA添加量、焼結条件の関係を定量化する。 Fe基BDSとCu基BDSのTEM内引張試験を行い、体心立方構造であるFe基BDSの場合は完全転位とバブルの相互作用、面心立方構造であるCu基BDSの場合は部分転位とバブルの相互作用を解析し、ナノバブルからこれらの転位が離脱する際の張り出し角度を実測して、分散強化応力のより正確な評価に反映する。 MDシミュレーション解析では、整備した解析システムを活用して、転位の張り出し角度、臨界応力などを解析し上記実験結果との対比から、転位がナノバブルを乗り越えるプロセスとその機構を定量的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度未使用額の発生は、当初予定していた学会参加を見送ったことによる旅費の削減と消耗品購入の合理化による。上記未使用額は、H25年度において、試料作製や実験解析のための消耗品、実験や学会発表のための出張旅費に使用する。
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