2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656430
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 恭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40507901)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケルチタン / ポーラス / 表面改質 / イオン溶出 / 擬似体液 / 溶融金属 / 傾斜機能 |
Research Abstract |
NiTi合金からのNiイオン溶出抑制を目的として、NiTi合金の溶融金属浴浸漬法により脱Niポーラス化処理を行った。本法は金属原子同士の親和性(混合熱ΔHmix)の差を利用したものであるが、浸漬浴としては、具体的にはNiとの親和性が高く、Tiとの親和性が低い元素の選択が必要である。これらの条件を満たす金属浴として、CeおよびMgに着目し、Ce、MgおよびCe-Mg浴を用い、浴組成、処理温度および処理時間が形成される脱Niポーラス化層のモロフォロジー(ポーラススケール、ポア率等)および厚さに及ぼす影響を調査した。Ce含有浴を用いた場合は、2層構造を有する脱Niポーラス層が形成され、基板側からTi2Ni相およびTi2Ni+α-Ti相から構成されていた。一方Mg浴においても脱Niポーラス層が形成されたが、浴中Mg割合の増加に伴い反応層厚さは減少した。Mg浴を用いて1123 Kの浸漬を行った場合においても脱Niポーラス表面を作製することができた。また、β-Ti形成温度以下である973 Kの処理においても、脱Niポーラス層を作製できた。この反応層はα-TiおよびTi2Ni相で構成されており、表面のNi濃度は2.0 at%程度であった。 JIS T0304に準拠し、作製した試料から1mass%乳酸中への金属イオン溶出量をICP-MSにより測定した。Ce含有浴を用いて処理した試料からは、未処理基板と比べ10倍以上高いNiおよびTi溶出が確認された。ただし、ポーラス化による表面積の増大を考慮すると、単位面積あたりのNiイオン溶出量は低減することができた。一方、Mg浴中にて973 K, 600 s処理した試料からのNiイオン溶出量は、未処理基板のそれとほぼ同量であった。Mg浴を用いることで、ポーラス構造を有し、未処理基板と同程度のNi イオン溶出量を示す脱Ni 表面を作製することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NiTi合金の溶融金属浴浸漬法に及ぼす浴成分、処理温度、時間の影響を明らかにすることができ、脱Niポーラス化層を作製すること、およびその形態を制御することも可能であった。また、ポーラス化による表面積の増大にも関わらず、1mass%乳酸中への金属イオン溶出量も未処理基板と同程度に抑制する条件を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
表層域ポーラス化NiTi合金の更なるNiイオン溶出抑制を目的として、ガス処理による表面酸化を行う。ガス処理は簡便、低コスト、複雑形状に対応した表面処理法であり、密着力の高い皮膜が得られるといった利点を有する。これまでの当グループでの研究により、COガスを用いることで工業用純チタン上にTiO1-xCx相を作製し、さらに大気中における酸化により、アナターゼ相が得られることを見出した。この方法を表層域ポーラス化NiTiへ適用し、1mass%乳酸溶液中へのNiイオン溶出低減を目指す。アナターゼ相は光触媒能を有することから、ポーラス体という大表面積へのコーティングは、触媒としての応用にも繋がる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、NiTi基板、金属浴原料、坩堝等を購入する。また、酸化実験に用いるガス類、耐火物、発熱体も購入する。 24年度に得られた成果は、ハワイで開催されるPRICM8にて発表予定であり、そのための旅費を計上する。また、25年度の成果と併せて、学術論文を投稿予定であり、外国語論文の校閲、研究成果投稿料をそれぞれ計上した。
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