2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノカーボンを用いた高性能微生物燃料電池電極の開発
Project/Area Number |
24656437
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大竹 尚登 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40213756)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / カーボンナノチューブ / 電極 / 表面修飾 / 変換効率 |
Research Abstract |
本研究は,微生物燃料電池の電極表面に長尺のカーボンナノチューブを合成し,さらに表面官能基修飾を適用することにより,白金触媒を用いない高性能な微生物燃料電池電極を実現することを目的とするものである. まず長尺のCNTの合成を行った.大気圧下でトルエンとフェロセンを原料に用いることを特徴とする熱CVD装置を作製しこれにより直径20nm,長さ約0.8mmのCNTを合成することが出来た.当初はナノパルスプラズマを援用する予定でったが,援用なしで目標をほぼ達成した. 次に,このCNTを用いて微生物燃料電池の陰極を作製した.本研究で用いた微生物燃料電池は,酵母菌(ドライイースト),ショ糖,メディエーターとしてメチレンブルーを用いた系とした.正極槽側には,酸化剤としてフェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)を用いた.CNT をドータイトによって表面に修飾した電極は,ドータイトのみや未処理と比べて出力が大きく向上した(0.1uW/cm2が0.6uW/cm2)。これにより,CNT が微生物燃料電池電極の高性能化に大きく寄与することが明らかになった. さらに,CNTを陰極溶液内に分散させることを試みた.その結果,修飾なし,アミノ基修飾,カルボキシル基修飾したCNTはともに酵母菌の存在下で水溶液に分散することを見出した.そして,CNTを分散させたアノード溶液を用いて発電実験を行った結果,実に11uW/cm2の高出力の得られることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,微生物燃料電池の電極表面に長尺のCNTを合成し,さらに表面官能基修飾を適用することにより,白金触媒を用いない高性能な微生物燃料電池電極を実現するもので,研究計画は以下の4ステップから成る。①パルス放電技術を駆使して炭化水素プラズマを制御し,大気圧下でグラファイト上に,長さ約1mmの長尺CNTを垂直配向合成する。②NH3を用いたナノパルスプラズマ法による,CNTへの表面官能基修飾法を確立する。③高機能化CNTを用いた白金触媒を用いない微生物燃料電池電極を開発する。開発電極を用いて酵母菌を原料とした微生物燃料電池システムを構築することとしていた. これに対して,カーボンナノチューブの合成は予定通りに進め,表面官能基修飾も行って燃料電池の電極に適用した.まず陰極表面にCNTを分散を固定することにより変換効率が6倍に向上することが明らかになった.ここまでが当初の目的であった. ところがその後の研究の進展において,酵母の存在下でアノード溶液中にCNTが分散することを見出し,これを電極として用いることを発想して,再度微生物燃料電池を試作した.その結果,電極にCNTを固着させた状態と比較して実に20倍に近い実に11uW/cm2の高出力の得られることがわかった.この結果は当初の研究計画を大きく上回る成果であり,明らかに当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,微生物燃料電池の電極表面に長尺のCNTを合成し,さらに表面官能基修飾を適用することにより,白金触媒を用いない高性能な微生物燃料電池電極を実現するものであり,以上のように,本年度の成果として,修飾なし,アミノ基修飾,カルボキシル基修飾したCNTはともに酵母菌の存在下で水溶液に分散することを見出した.そして,CNTを分散させたアノード溶液を用いて実際に微生物燃料電池の発電実験を行った結果,実に11uW/cm2の高出力の得られることを明らかにしたので,今後は,まず何故酵母の存在下でCNTが分散するのかを学術的に検討する.そして,修飾なし,アミノ基修飾,カルボキシル基修飾したCNTが,通常不活性と言われている酵母とどのような相互作用をしているのかを特殊SEM観察等で明らかにする.その上で,現在より大型の,CNTをアノードに分散させた微生物燃料電池を試作して,これまでの報告を凌駕する最高発電効率を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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