2012 Fiscal Year Research-status Report
広禁制帯幅半導体と電極材の界面歪制御による界面機能化
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24656444
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 将克 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (00263327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 康夫 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (80144434)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / オーミック電極 / 成膜残留歪 / ショットキー障壁 / コンタクト通電特性 |
Research Abstract |
n型GaNに対するTi基電極のオーム性発現には,電極成膜および熱処理過程でのGaNとTiの界面反応に伴って生じたN空孔がドナー元素と同様にふるまうことで電極直下のGaNに高キャリア濃度域が形成されることが支配的に寄与する.この電極成膜および熱処理過程では界面近傍においてGaNおよびコンタクト材が歪む.GaN結晶の歪はGaNの禁制帯幅を変化させることが知られており,これによってコンタクト界面でのショットキー障壁高が変化すると予測されるが,この歪を適切に制御してコンタクト特性向上まで検討された報告は見られない.本研究では,GaN上にTiを高周波マグネトロンスパッタ法により成膜し,成膜後の基板の変形量から界面直下のGaNの歪を算出し,それと電気伝導特性の相関を求めた. GaN基板上にTiを成膜すると,基板は膜面に対して凹状に変形し,電極膜直下のGaN基板には圧縮歪が生じる.この歪はGaN基板が厚いほど大きくなる.一方,同じ厚さのTi電極を異なる厚さのGaN基板に形成して電気伝導特性を計測したところ,基板が厚いほど電流が流れにくくなることがわかった.基板が厚いほど成膜によってGaNのコンタクト界面近傍に大きな圧縮歪が生じ,禁制帯幅が広がる.これがコンタクト界面でのショットキー障壁高を増加させて,コンタクト抵抗の増加をもたらしていると考えられる. 次に,773 Kでの熱処理によりGaN基板のコンタクト界面近傍に熱残留応力・歪を誘起し,その電気伝導特性への影響を調べた.その結果,熱処理によって電流が流れにくくなることがわかった.この熱処理条件は,成膜したままの状態における基板の変形量から求まる成膜中の基板温度(約700 K)よりも高い値であり,より大きな圧縮歪をコンタクト界面近傍のGaNに導入できる.すなわち,GaN/電極界面でのショットキー障壁高増加がコンタクト抵抗増加をもたらす.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,熱残留応力のみを利用して受動的に界面歪状態を変化させて,それに伴う界面電気伝導特性の変化を調べることを目的に研究を推進した.その結果,同じ組織を有するGaN/電極界面でも,GaN基板厚さが異なることで,電極直下のGaN基板に導入される歪量が変化し,これに伴ってコンタクト抵抗が変化することが明らかとなった.高禁制帯幅半導体素子において,電極界面近傍の半導体基板の歪と電気伝導特性の相関を解明した報告は従前にはなく,本研究の主柱となる重要な成果である.この成果が得られたことにより,平成24年度の研究計画はほぼ達成されたといえる. ただ,平成25年度に使用する予定にしている四点曲げ外力印加装置の設計・製作に時間を要しており,これを急ぐ必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は四点曲げ試験法に準拠した方法で外力を印加して能動的に歪を導入してそれに伴う界面電気伝導特性変化を調べる.平成24年度の成果として,基板と電極膜の厚さを適切に制御することにより界面近傍のGaNの歪を制御できることが明らかになっているので,この知見に基づいて一定の界面歪状態にある試料を作製し,さらに界面に外力を印加して歪を導入する.この方法では,試料を逆方向に反らせる等,熱残留応力のみでは導入困難な歪を界面に付与することが可能となる.印加した外力を計測することにより,界面に導入された歪を算出する.算出には,重畳法に基づいて熱残留応力による歪と外力による歪の両者を考慮する.このように外力を印加したままの状態で界面電気伝導特性を前年度と同様の方法で評価する.以上の実験結果に基づいて,界面歪状態と界面機能の相関を検討する. さらに,平成25年度には,電極形成後長時間を経た試料についても界面電気伝導特性評価を実施し,界面機能の経時変化を調べる.これは,界面での残留応力が経時緩和されることが知られているためである. 以上の実験研究を通して,次世代広禁制帯幅半導体とコンタクト材料の界面の歪状態と界面機能の相関を解明し,その知見に基づいて機能発現機構に関する基礎理論構築に取り組む.具体的には,従来用いられてきたショットキー=モットモデルに基づいたポテンシャル障壁形成機構にバルク状態でのバンド構造ではなく,界面近傍での歪に起因して変化したバンド構造を適用することで,従来の機構では説明できていなかった実際のショットキー障壁高と理論から求まる障壁高の差異を定量的に実用可能な水準まで縮めることが可能になると考えている.その成果を積極的に随時発表し,成果報告書を作成して本研究を完了する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に使用する予定にしている四点曲げ外力印加装置を平成24年度中に完成させる計画であったが,電気接点と荷重支持を担う部品が繰り返し使用で測定結果が変化する問題が見つかり,完了していない.このため,17826円の研究費が未使用となった.現在,この部品を測定ごとに新品に交換するよう設計を改めて製作を急いでおり,平成25年度の研究実施計画に影響は出ない. 平成25年度はSiCおよびGaNの単結晶基板材料の購入に1155千円を充てる.これで本研究に必要な最小限の基板材料を確保できる.このほか,高純度ガス,試薬,ガスフィルター,研磨用品をはじめとする実験用消耗品,データ記録媒体等の物品購入費に合計372826円を計上している.これには,上述した四点曲げ外力印加装置の部品も含まれる.また,成果発表のための国内旅費に50千円,論文2報の投稿費用として140千円を計上している.
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