2012 Fiscal Year Research-status Report
キャリア密度を制御したバイモーダルな結晶粒径分布を持つ高性能熱電変換材料の創製
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24656445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝山 茂 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00224478)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 熱電変換 / 複合焼結体 / 電気伝導率 / 熱伝導率 / 酸化亜鉛 |
Research Abstract |
本研究は、キャリア密度を制御した大小2つの結晶粒から成る複合焼結体(バイモーダルな結晶粒径分布を持つ焼結体)を作製し、その熱電特性を評価することを目的とする。平成24年度は主に酸化亜鉛ZnO系熱電変換材料について検討を行った。ZnOの電気伝導率は絶縁体に近いほど小さいが、Znの一部(~2%)をAlで置換することにより適度な電気伝導率を示すようになる。 (Zn0.99Al0.01)Oの組成を持つ酸化亜鉛粉末を錯体重合法により作製した。錯体重合法は金属―クエン酸錯体の形成と、その後のクエン酸とエチレングリコール間の脱水エステル化重合反応を基本とする溶液化学プロセスの一種である。得られた粉末をホットプレスにより1373Kで80MPaの加圧下10時間熱処理して焼結体とし、メノウ乳鉢で粉砕して粒径2~5μmの粉末を得た。一方、錯体重合法により粒径~1μmの(Zn0.898Mg0.1Al0.002)Oの粉末を作製した。ここで、Alの添加量を変えることにより試料のキャリア密度を制御することが可能であり、またMg添加は格子歪みの導入による熱伝導率低減の効果が期待される。実際、(Zn0.99Al0.01)O粉末から作製した焼結体の1073Kにおける電気伝導率σは1.1×10-7Sm-1、熱伝導率κは7.5Wm-1K-1であり、(Zn0.898Mg0.1Al0.002)O粉末から作製した焼結体のσは2.8×10-8Sm-1、κは5.4Wm-1K-1であった。これら2つの粉末から作製した複合焼結体のσおよびκは、(Zn0.99Al0.01)O粉末の体積分率が増加するにつれて単調に増加する傾向が見られた。一方、無次元性能指数ZTは、(Zn0.99Al0.01)O粉末の体積分率が約30%の試料において最も高くなる傾向が見られ、1073Kにおいて最大0.13の値が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高電気伝導率(σ)および高熱伝導率(κ)を有する結晶粒と、低σおよび低κを有する結晶粒から成る複合焼結体では、前者の体積分率が小さい時はそのσは小さな値に保たれるが、約30%に達したところで急激に増加する現象がしばしば観測される。このような現象はパーコレーション現象として知られている。一方、κには一般にパーコレーション現象は観測されない。パーコレーション現象を記述するBruggemanによる理論式に従えば、高σ、κの成分の体積分率が約50%の組成においてσ/κの値が上昇することが予測される。σ/κは熱電変換材料の性能を示す無次元性能指数ZT(=S2・σ・T/κ、Sはゼーベック係数、Tは温度)に比例することから、σ/κの値の上昇は熱電変換材料の性能向上につながる可能性がある。 平成24年度に作製した(Zn0.99Al0.01)Oと(Zn0.898Mg0.1Al0.002)O粉末の複合焼結体では、そのσおよびκの振る舞いはBruggemanによる理論式と比較的良い一致を示したものの、σ/κの値は(Zn0.99Al0.01)O粉末の体積分率の増加に伴い単調に増加し、パーコレーションによるσ/κの値の上昇は観測されなかった。これは作製した(Zn0.99Al0.01)O粉末と(Zn0.898Mg0.1Al0.002)O粉末のσおよびκの値の差が小さかったことによると考えられる。今後、σおよびκの値の差が大きい粉末試料の作製を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
パーコレーション現象を記述するBruggemanの理論式によれば、高電気伝導率(σ)および高熱伝導率(κ)の成分と、低σおよび低κの成分から成る複合体のσ/κの値は、両成分のσおよびκの差が大きいほど大きくなる。たとえば、両成分のσおよびκの比がともに1:0.1である場合は、複合体のσ/κの値はそれぞれの成分単独の場合に比べて最大1.2倍程度であるが、1:0.01である場合は4倍以上になる。平成24年度に作製した(Zn0.99Al0.01)Oと(Zn0.898Mg0.1Al0.002)Oでは、σの比は1:0.26、κの比は1:0.7程度であり、かなり小さかった。従って、複合体化によりσ/κの値を上昇させるには成分のσおよびκの差をもっと大きくすることが必要である。そこで、25年度ではたとえば(Zn0.898Mg0.1Al0.002)O粉末のメカニカルミリングによる結晶粒微細化によるσおよびκの減少、(Zn0.99Al0.01)O粉末の高温長時間熱処理による結晶粒成長によるσおよびκの増大などの手法により必要な特性を有した粉末の調整を行い、これら粉末より複合焼結体を作製してパーコレーション現象によりσ/κおよび無次元性能指数ZTの向上が達成できるかを検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も24年度同様、粉末試料の合成および複合焼結体の作製、その熱電特性評価の実験を継続して行っていく予定である。試料作製用として高純度試薬、石英反応管、ホットプレス焼結用カーボンダイス、パンチ棒等の購入が必要である。また、熱電特性測定用として高純度ガス、白金線などの購入を予定している。成果報告および情報収集のための出張旅費、特に25年度は熱電変換に関する国際会議ICT2013が神戸市にて開催されるため、その参加登録費および出張旅費が必要である。
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Research Products
(5 results)