2012 Fiscal Year Research-status Report
X線照射による励起・電離現象を利用したMg-O緻密構造膜の創製とMgの表面改質
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24656446
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 勝義 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (50345138)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線照射 / 電子励起場 / ラジカル種 / 酸化皮膜 / 表面電位 / 塩水浸漬試験 |
Research Abstract |
マグネシウム(Mg)試料表面に対して電子線/X線を照射して電子励起場を形成し、より貴なる準位へと表面電位を制御することで、ガルバニック腐食現象の起源となる接触界面での電位差を低減でき、その結果、Mgの耐腐食性が向上することを明らかにした。併せて、大気環境下でのX線照射による励起反応を利用したMg試料の表面改質プロセスを確立した。これは、大気中に含まれる水分(水蒸気)にX線を照射した場合、水分子(H2O)の電離現象が生じて、ヒドロキシルラジカル(OH・)や水素ラジカル(H・)などの反応性の高い不安定なラジカル種が発生し、これらがMgと反応して試料表面にて緻密なアモルファスMgO皮膜(厚み~100nm)の形成に至ったことをXPS解析およびTEM観察により明らかにした。自然酸化によるMgO膜は、多孔質で結晶構造を有しており、連結空孔からの水分等の侵入によりMg表面での腐食現象を誘発している。ゆえに、X線照射により形成された緻密なMgO膜は、水分の侵入を阻止できる保護膜として作用すると考えられる。また、得られた試料表面を対象に、Scanning Kelvin Probe Force Microscopy(SKPFM)を用いて電気化学的な活性度を調査した結果、X線照射時間の増大に伴い試料の表面電位は低下した。この結果は、X線照射により形成したMgO皮膜の成長によって試料の電気化学的な活性度の低下したことを示唆している。さらに、塩水浸漬試験により腐食速度を計測した結果、X線を照射した試料では、表面に形成した緻密なMgO皮膜が保護膜として機能することで腐食速度が約87 %低減し、Mgにおいて著しい耐腐食性の向上を実証した。本プロセスは、従来の表面改質技術やコーティング皮膜のように第3元素を含まないため、リサイクル性にも優れた革新的な防食方法といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
X線照射時において、大気中の水分由来のラジカル種(ヒドロキシルラジカルOH・や水素ラジカルH・)が発生することを反射型回折格子分光器によるスペクトル解析によりその場計測することに成功した。既往研究では、大気中で電離・発生するこれらのラジカル種の直接観察は困難とされていたが、本研究では、X線発生装置内で試料周辺に水槽を配置して湿度管理した状態で、試料表面における発光が集光できる位置に紫外透過型光ファイバーケーブルを設置し,X線照射下でのスペクトル分光をその場計測できるシステムを構築した。これにより当初計画を大きく上回る内容での実験を遂行でき、Mg試料表面でのラジカル種との反応解析に有効なデータを採取することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、平板(2次元)を対象にX線照射実験を行ったが、X線は3次元での照射が可能であることから、実構造物を想定した複雑形状試料を対象とした実験を行い、特異構造MgO皮膜の形成と、その構造・膜厚安定性を調査・解析し、X線照射条件と照射環境(特に湿度)の適正化を試みる。また、XPSによるMgO皮膜の構造解析をより詳細に行うことで酸化反応に寄与するラジカル種の特定と、その優先発生に要するX線照射条件の選定を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)