2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656453
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 讓 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80108464)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 溶融塩電解 / ニオブ基合金 / 耐酸化性皮被膜 / 珪化ニオブ / 耐熱材料 |
Research Abstract |
熱効率の向上やCO2の排出量削減を目指し、ガスタービン用のニッケル(Ni)基超合金の耐用温度は1100℃まで向上した。しかし、Ni基超合金は、融点が高々1350℃であるため、今後、耐用温度の飛躍的な向上は期待できない。本研究では、これまで耐酸化性に劣るため実用化されなかったニオブ(Nb)基合金に機械的・化学的に安定な耐酸化性被膜を形成することで、耐酸化性を高めて超耐熱合金として実用化することを目標とした。具体的には、溶融塩中で電気化学的にNb基合金表面を珪化および硼化することでNb-Si-B系の合金被膜を形成することを試みた。特に、溶融塩中でのイオンの電気化学的挙動の検討により、緻密で機械的・化学的に安定な被膜の形成に最適な条件を探った。 平成24年度は、溶融塩中でのイオンの電気化学的挙動の検討から開始した。具体的には、弗化物溶融塩(LiF-KF共晶塩)中に珪素源(K2SiF6)を添加・溶解させ、Nb電極を用いて、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリ法=CV法)によって、弗化珪酸イオン([SiF6]2-)の還元過程を観測した。その結果、純シリコンの析出と、Nb-Si合金の形成の両方が起こることが分かった。Nb-Si合金の形成は、温度が上昇するにつれ顕著になった。 さらに、定電流電解によるNb表面の珪化を試みた。その結果、Nb上にNbSi2の被膜が形成され、さらに被膜上には粉末状のシリコンが析出した。与えた電気量が同じでも、電流密度を低下させるとNbSi2の被膜厚さが増加した。また、電解浴中の珪素源(K2SiF6)濃度は被膜厚さにほとんど影響しなかった。このことから、被膜の成長はNbSi2中のシリコンの拡散速度に支配されていると考えた。最終的に、1173K、30mA・cm-2、9hの電解で、約40μmのNbSi2を形成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、①溶融塩中でのNb電極上でのイオンの電気化学的挙動の検討、から研究を開始し、②溶融塩電解によるNbへの耐酸化性被膜形成の検討、に展開する計画を立案した。結果として、ほぼ予定通り、研究を進めることができた。具体的成果としては、弗化珪酸イオン([SiF6]2-)のサイクリックボルタンメトリ法=CV法による電気化学的挙動を検討し、純シリコンの析出と、Nb-Si合金の形成の両方が起こることが分かった。さらに、Nb-Si合金の形成は、温度が上昇するにつれ顕著になった。また、定電流電解によるNb表面の珪化を試み、Nb上にNbSi2の被膜を形成することに成功した。与えた電気量が同じでも、電流密度を低下させ、長時間電解するとNbSi2の被膜厚さが増加すること、電解浴中の珪素源(K2SiF6)濃度は被膜厚さにほとんど影響しないことから、被膜の成長はNbSi2中のシリコンの拡散速度に支配されていることも分った。最終的に、1173K、30mA・cm-2、9hの電解で、約40 μmのNbSi2を形成することができた。以上、要するに、当初の計画に対しておおむね順調に研究を進展させることができた。達成度としては80%程度と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、溶融塩電解によるNbへの耐酸化性被膜の形成を継続し、基材と密着性が高く、厚い被膜が形成できる条件を確立する。これによって、数水準の膜厚(50~200μm)の被膜を形成することを試みる。ただし、24年度の研究によって、被膜の成長が被膜(NbSi2)中のシリコンの拡散に支配されていることが分かったため、被膜の成長に限界がある可能性がある。よって、電解時間を長くするだけで厚い被膜が形成されるかどうかは不明である。そこで、珪素源だけでなくニオブ源(K2NbF7等)も電解浴に投入し、シリコンとニオブの共析が可能かも検討する。 上述の検討によって、被膜を形成した後、被覆合金の高温酸化挙動の検討に入る。これは、被覆された合金を大気下で高温(~1400℃)にさらし、質量変化を測定する。特に、加熱、冷却を繰り返すサイクル試験(100回を目標とする)を行い、温度履歴による被膜の質量変化、表面形態の変化を検討する。さらに、試験後の合金のミクロ組織を観察し、被膜と基材の密着性や空孔の有無について確認する。また元素分布を測定し、高温での構成元素の拡散挙動を解析する。この耐酸化試験の結果から総合的に安定な被膜の形成法を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、溶融弗化物を扱う高温の化学実験を伴うため、特殊な設備が必要である。申請者の場合、これまで基本的な装置・研究環境は整っていたが、東日本大震災によって研究環境が大きく毀損されたため、研究に当然必要な電気炉(発熱体)から調達が必要であった。さらに、雰囲気を制御するガス流量制御器は必須である。高温かつ腐食性の高い溶融塩を使う研究においては、装置は自作のものが中心になる。これらのために、石英管や耐火物等が必要であり、高温であるために消耗が激しく、経費の中心は消耗品にならざるを得ない。このため、消耗品を多く購入した。 平成24年度で、電気炉等の基盤的な装置や反応容器等、多くの装置を設計・製作し、かなりの部分が揃った。しかし、反応容器は実験によって消耗するため、新たに装置の製作を行う。装置の設計は申請者が行い、資材を購入して学内の技術部(制作室)で製作する。そのため、来年度も消耗品を多く購入する予定である。さらに、本研究で検討する温度域(600~1000℃)に適する特殊な耐熱ステンレス鋼(SUS 310S)製容器と高純度アルミナ製容器、石英硝子セルを設計・自作する予定であり、その素材も購入する。
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