2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656454
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 秀顕 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (10581746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 正史 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70143386)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 過酸化物 |
Research Abstract |
本研究では過酸化物を含む新規化合物の合成およびその物性調査を目的としている.アルカリ土類金属等の過酸化物については化学的安定性について過去に調査がなされているが,いまだ詳細が明らかにされていない部分がある.これは,過酸化物および酸化物が水分や二酸化炭素と反応しやすく,実験試料の組成等で再現性を得にくいことが原因と考えられる.このため,本年度は過酸化物の基礎的な物性を確認するための調査を行った. アルカリ土類金属の中でも過酸化物が得やすいバリウムを選択し,高温・酸素共存下における BaO から BaO2 への変化を熱重量・示差熱分析によって観察した.測定はアルゴンおよび空気中で行い,出発原料として炭酸バリウム(BaCO3)を用いた.BaCO3 を昇温する過程で炭酸ガスが放出され BaO が生成するが,雰囲気の酸素分圧によっては BaO2 となる.さらに温度を上げると,BaO2 は O2を放出して BaOとなる.昇温時および冷却時の BaO から BaO2 への変化を重量変化および発熱から観察するとともに,雰囲気の影響を確認した. また,次年度以降で熱力学測定に使用予定の質量分析装置の調整を行った.本装置は,試料からの蒸気種を分子量ごとに検出・定量するものである.これにより,過酸化物や酸化物から蒸発する酸素の圧力や,化合物の状態で揮発する金属を調査することが可能となる.本年度は,測定手法の確立および測定精度の確認を目的とし,熱力学データが既知の二元系合金(Cu-Ni)を試料として用い,蒸発する Cu を検出して試料中 Cu の活量を得た.結果を過去の報告と比較し,本手法により信頼性の高い測定が可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過酸化物の基礎調査および熱力学測定装置の調整に時間を要し,当初の目標である新規化合物の探索には至っていない.過酸化物の化学的安定性および反応については,過去の報告を参照しても不明な点が多く,本研究において基礎的な反応から再検討する必要があったためである.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き,雰囲気を制御しての熱重量・示差熱分析を行うとともに,結晶構造解析や熱力学測定によって過酸化物の生成・分解についての知見を集める.その後,測定対象をより複雑な二元系以上の化合物や混合物へと発展させ,過酸化物の複合化について可能性を探査する.おもにアルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物を対象とすることを考えているが,これらは高融点のものが多いため,複数の酸化物を化合させる際には,条件に応じて生成する過酸化物の液相を利用するなどし,新規物質の合成に挑戦する. 得られた化合物について,熱力学的測定を行うとともに電気化学的な挙動を観察し,その安定性や応用の可能性について調査を行う予定である.熱力学測定においては,上述の質量分析装置により蒸気種の圧力や成分の活量を測定するほかに,過酸化物の平衡酸素分圧を起電力法により評価することを予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
雰囲気を制御した状態で高温での試料作製や物性調査を行うため,加熱装置や分析装置部品,反応容器を購入する.とくに水分や二酸化炭素と反応しやすい試料を取り扱うため,作業用の専用容器が必要となる.また,雰囲気制御下での試料合成においては,ガス導入装置等を購入する. 物性調査においては,質量分析装置を用いた蒸発物質の定量や,起電力測定等を予定している.これらは,真空排気系や特注のセルを要し,必要に応じて新たな装置部品を追加する予定である.
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