2012 Fiscal Year Research-status Report
希土類磁石中のNd,Dyの溶融塩中直接浸出・回収プロセスの開発
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24656457
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
市野 良一 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (70223104)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 希土類金属 / 溶融塩電解 / 廃磁石 |
Research Abstract |
材料中へ少量添加するのみで材料の機能が向上する希土類元素は原産国の戦略物資であるため確保が難しい.本研究は廃希土類磁石から希土類を1プロセスで回収するプロセスを開発する研究である.Fe-Nd(-Dy)-B磁石は主成分が安価なFeであるため,酸に溶解後に分離することは酸を多量に用いることやFeがスラッジとして大量に排出されるなどの問題がある.本研究は,廃磁石から溶融塩中にNd,Dy元素のみを浸出することにより,Fe-Bは固体として回収する.一方,浸出したNd,Dyは溶融塩電解により回収するものである. 今年度は,溶融塩の選定と希土類磁石からの希土類の浸出分離について検討した.最初に,選定した溶融塩中に純粋な希土類金属を浸漬し,アノード分極曲線により,酸化電位を測定した.同様に希土類磁石についても分極曲線を測定し酸化電位を測定した.このとき,磁石の成分の違い(メーカ,製造年等により希土類成分,ネオジム,ジスプロシウム,プラセオシウム量が異なった)により,酸化電位,分極曲線は異なっていた.これらをもとに分離浸出電位を判定し,電解により溶融塩中に希土類のみを浸出させた.浸出された磁石成分について,ICP発光分析,イオンクロマトグラフ,SEM-EDX等を用いて,浸出状態を評価した.電解浴である主要溶融塩成分を除外して考えると,その他の溶融塩中の元素は,希土類を多く含む磁石では98%以上,希土類の少ない磁石では97%以上の希土類が存在し,鉄は2%以下であった.希土類磁石からの希土類の選択的進出が可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類磁石から希土類のみが浸出でき,溶融塩性分のLiとKを除外して考えると,溶融塩中に97%以上の純度を有する希土類塩となること,不純物としてのFeの量が2%以下であることが明らかとなった点で今年度の目的は達成したと判断できる.また,カソード電極上に水洗により消滅する金属の付着が確認できた場合もあり,このような活性な金属は希土類である可能性が高い.磁石,溶融塩,カソード電極上の3か所における希土類のマスバランス(存在量の収支)が取れていないため,次年度に集中的に評価し,析出効率や析出金属の純度などについても検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に,希土類磁石から希土類元素のみを浸出できることが分かり,さらに,溶融塩中の鉄成分は2%以下であることが分かった.磁石中の希土類元素が少ない場合,磁石の酸化電位が貴に移行し,鉄が進出しやすい電位に近づくことに起因するものと考えられる.また,希土類の浸出とともに磁石が剥離・脱落する場合もあった.これは,表層に存在する希土類から浸出し,磁石内部の希土類は固体内拡散により表層に移動することに起因するものと考えられる.これらのことから,浸出速度を速くするには磁石を細かくし表面積を大きくすることが有効と考えられるが,磁石の保持という点では操作性が悪くなる.そこで,バケツのような箱型電極をタンタル金属で作製し,その中に磁石を入れて電解したところ,タンタル金属が磁石の浸出に影響を及ぼさないことが分かったので,この箱型電極を用いて,浸出を進める.一方,希土類金属のカソード析出については,予め溶融塩中にネオジム,ジスプロシウム,プラセオシウムを溶解しておき,それを模擬浸出後溶融塩として電解を行うことにより,カソード上への希土類の析出挙動について評価する.最終的に,模擬浸出溶融塩中での希土類の選択的浸出とカソード析出を行い,純度,効率等について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ネオジム磁石をアノード電極として希土類の溶出実験によりを行い,前年度に確認されたカソード上の析出金属の組成,量や,溶融塩中の希土類の量などの物質収支をとることから始める.また,希土類磁石の組成の違いによる溶出挙動についても検討し,最終的に磁石の組成に依存しない最適な浸出条件を探索する. 一方で,今年度の予定であるカソード電極上への希土類金属の析出挙動について調査する.予め溶融塩中に希土類金属塩を用いて,ネオジム,ジスプロシウム,プラセオシウムを含む模擬浸出液を作製し,電解実験により,カソード電極上への希土類の析出状態を把握する.とくに,浸出実験では溶融塩中に高濃度のDyやNdは存在しないため,析出挙動の正確な把握が難しい.そのため,予め希土類元素を溶融塩中に溶かし,希土類元素濃度の既知である溶融塩を作製することにより,カソード析出に関する効率や純度を正確に判断でき,選択的浸出-析出の1プロセス回収への足がかりとなる.このとき,模擬浸出液の作製に使用する希土類金属塩が高価であるため,消耗品費のうち試薬費に多くあてる.さらに,重希土類のDyと軽希土類のNdを分離析出を見越し液体金属によるカソード電極を取り上げ,DyとNdの分離回収についても検討する.
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Research Products
(2 results)