2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656463
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 泰文 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10125510)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 裕二 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60400991)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 粘度異方性 / エレクトロレオロジー / 電気流体力学効果 |
Research Abstract |
電場印加により通常の液体や分散系に粘度異方性を発現させることを目的とするものであり、①電場下における粒子の集積構造の解析と粘度異方性の発現に関する研究と②電気流体力学効果に起因するジェット流の流動解析と粘度異方性の発現に関する研究の二つの要素研究から構成されている。それぞれについて得られた成果は以下の通りである。 ①電場中におかれた粒子は誘電分極により、電極間に鎖状構造を形成することが知られており、パターン電極によるこの構造の制御が本研究の主題となる。電場印加による鎖状構造の形成で分散系の粘度が増大し、これをエレクトロレオロジー(ER)効果と呼んでいる。通常、ER 実験においては2枚の電極板間で鎖状構造を形成させるが、1枚の板上にパターン電極を作成し、電場を印加したところ、これまでとは異なった粒子集積構造となり、1枚の電極でもER効果が発現することを明らかにした。これに基づいて、2枚のパターン電極により分散系を挟んで、粘度挙動を測定したところ、電極板の移動方向により粘度が異なることを見出した。一般に、粘度異方性は、流動の方向が直角の場合、その粘度が異なることを意味するが、本研究では回転方向により粘度が異なるという新しい挙動を発現することができた。 ②絶縁性液体に高電圧を印加するとジェット流が発生することが知られており、これを電気流体力学(EHD)効果と呼んでいる。電極から発生するジェット流を解析して、粘度異方性に発展させようとするのが2番目の要素研究である。電場の不均一性がこの機能の鍵となると考えられるが、予想外のこととして電極に用いる金属によりジェット流の速度が大きく異なることがわかった。EHD挙動を支配するのは電場強度とされ、金属材質が影響を及ぼすということについては報告例がない。電極の界面性状とEHDジェットとの関係について検討し、表面粗さの重要性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの要素研究、すなわち①電場下における粒子の集積構造の解析と粘度異方性の発現に関する研究と②電気流体力学効果に起因するジェット流の流動解析と粘度異方性の発現に関する研究の内、①については当初の計画以上に進展しており、②については当初予想しなかった新しい事実が見つかり、その詳細について検討したためやや遅れている状況ではあるが、総合的におおむね順調に進展していると評価している。 ①については、電場下における粒子の集積構造の解析と粘度異方性測定のためのレオメータセンサーの改造が今年度の予定であったが、大がかりなレオメータの改造をしないで、いくつかの簡便なジグを用いることで対応できる方法が見出せたので、来年度の予定であった粘度異方性の直接測定に取りかかることができた。まだ、充分とは言えないが数倍程度の粘度異方性を確認することができたので、現段階で、本研究全体を通しての最低限の目標は達成したと考えている。また、新規ER用粒子の開発に関しても成果があがっていると考えている。 ②については、電極材料によりEHD効果が異なるという現象を見つけたため、材料設計という立場に立ち、金属の種類とEHD との関係についてデータ収集を行った。このため、粘度異方性に結びつく流動場解析にまでは至らなかった。しかし、電場印加により電極材料の表面粗さが変化し、これがEHD挙動に深く関係していることを明らかにした。本研究の目的からすると、少し横道に逸れた感はあるが、論文として公表できたことは学術的に成果があったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)電場下における粒子の集積構造の形成を支配する要因は誘電泳動力と電気泳動力であり、これらは粒子の性状に強く依存する。パターン電極の幾何学的因子、特にくさび型に配置したときの形状と集積構造との関係を粒子物性と関連づけて明らかにする。ここまでのデータを基に、粒子の集積構造が流動挙動にどのように反映するかについて粘度測定を行い、その異方性を定量的に評価する。パターンとしては、くさび形あるいは円弧形の線状電極を用いるが、その形状因子と粘度異方性との関係を明らかにし、10倍以上の粘度異方性を達成することを目指す。 2)パターン電極上におけるEHDジェット流の解析を行う。粘度異方性を発現するためには流路中において制御された流れを作ることにある。基本的には、1対の電極でジェットを発生させることができることであるが、実際には広い領域で流動を発生させなければならない。つまり、何段もの電極をつなげることにより長距離にわたる流路が構成でき、粘度異方性が達成できるものと考えられる。複数の電極が存在するときの流動挙動について解析し、電極配置について検討を加える。さらに、電場のオンオフにより流体を任意の方向に流動させるためのスイッチング機能をもったデバイスを試作し、その性能についても検討する。 3)EHDジェット流を利用して粘度異方性を発現させることを目指しているが、ジェット流の発現機構については解明されているとは言いがたい状況である。デバイスや材料設計のためにはこのメカニズムを解明することが不可欠である。そこで計算機シミュレーションによりEHDの流動解析を行う。これまでの研究によると秒速数cm程度のEHD流動は再現されているが、本研究で利用しようとしているのは秒速1mのジェット流である。シミュレーションでこれを再現するとともに、それを支配する因子を明らかにし、異方性の制御法についての基盤を確立する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の中心となるのは粘度異方性の測定であり、パターンによりどの程度の粘度異方性が発現するかを明らかにすることが課題であるので、それら電極の装脱着が容易にできるような平行平板センサーを試作することになる。また、多種類のパターン電極を作成する必要があるが、1パターン当りの制作費が約8万円であるため、この比率が約50%と高くなっている。この研究はシリカなどその性状が制御されたものを用いているが、この目的のためには柔らかい粒子が望ましい。そこで、新規ER粒子として高分子粒子の開発を目指している。さらに、EHD用作動液体も、まだ汎用に用いられていない研究用試薬の購入を考えている。そのため、いずれも通常の試料より多くの経費を見積もる必要がある。
|
Research Products
(6 results)